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お疲れ様です!
家でぬくぬく本を読みたい陽気ですが、休みの日は一日中寝てしまってます、、
今までにない高稼働で現場の方がハイになってます。なんでも仕事を振られてパンクしてますが、毎日新鮮な経験で楽しいので良いです。
突然ですが、学生時代に読んだ風姿花伝の理論がエンジニアにも適用できるなと思ったので共有します。

なぜ風姿花伝なのか?私の身の上〜

私は20年以上音楽を続けていまして、音楽大学では哲学、美学、芸術学を中心に学んでいました。
大学のキャリアカウンセラーの方から「貴方IT向いてる思う、技術思考だし、音大からIT行く人多いぞ」という勧めから、今年4月にインフラエンジニアに転職しました。
驚きと困惑の連続で、参画して半年が経ち、徐々に慣れてきましたが、最近ハードな仕事を始めて頭が湧いております。
時間制限付き&絶対にミスできない状況で焦りや混乱でパンクしている中、「今は真似するだけで良いよ!乗り越えたら理解しよう!」という言葉に救われました。
そこで真似というワードはめちゃくちゃ大事だった気がするぞ🤔となり、芸術学の講義で取り上げられた『風姿花伝』を思い出したのです。
当時はなぜ洋楽器をやる人に対して能楽書を勧めるんだ?と困惑しましたが、能に限らず、全ての技術を学ぶ者、教える者には参考になるものの考え方が纏められています。
私自身楽器を習得する時に真似して覚える事はよくやっていたので、何かを習得するプロセスとは似たりよったりなのだろうと思います。
本記事では、風姿花伝の教えを通して、エンジニアの技術習得の道のりを探ります。

風姿花伝とは

世阿弥が37歳のときに書き始めた芸術論。父・観阿弥の教えを世阿弥なりにアレンジした内容で、芸術論、演劇論、教育論を軸として、人生観にまで展開している名著です。
構成は七段。
「第一年来稽古(ねんらいけいこ)条々」では、7歳から稽古を始め、17、8歳のスランプの時期の建て直し方と、順調な時期に奢らないで過ごす方法、デビュー後の取り組み方、全盛期から40歳以降の身の置き方など能楽師の成長から引退を解説してます。
「第二物学(ものまね)条々」は、演技論で、女、老人、修羅、神、鬼、など能の演目に出てくる役の演じ方、如何に真似るかについて論じてます。
「第三問答(もんとう)条々」は、世阿弥の根幹である「花」と言う役者としての本質について、世阿弥の質問に観阿弥が答えているよな対話形式で展開されています。
「第四神儀云(しんぎにいわく)」は、能の起源、歴史など、いかに素晴らしい芸能かを語っています。
「第五奥儀(おうぎいわく)云」は、 世阿弥が属していた申楽(能の原型)と田楽(田植えの時の舞踊)の違いと観客へのアピールについて。
「第六花修(かしゅう)云」は、能作論、演技論、観客論であり、演技者の比較論。
「第七別紙口伝(くでん)」は、「第三問答条々」で取り上げた魅力の本質「花」を深掘りしています。
なぜ花に例えたのか、花は面白さであり、それは珍しさだと、展開されるます。「秘すれば花」の格言はこの段で登場します。観客との相対関係、舞台芸術の本質が語られています。


「学ぶ」ことは「真似ぶ」こと。

「第一年来稽古」と「第二物学条々」の成長プロセスをエンジニアに当てはめて考えてみます。
風姿花伝には技術を見につけ、大成するまでには3つのフェーズがあると紹介されてます。その中でも初歩的な「まねぶ」という行為は、単に他者の技術をコピーすることに留まりません。むしろ、それは観察、理解、そして内面的な消化を伴うプロセスです。
世阿弥は、優れた芸術家になるためには、他者の真似を通じてその技術を習得し、自らのスタイルに昇華させることが必要だと考えました。まずは他の優れた者を模倣し、その中から自分に合った哲学や技術を見出し、それを基に自己表現を確立していくのです。

:bulb:学ぶ」の語源は古語の「まねぶ」で、「まねる」という意味。名詞の「まね」に動詞をつくる接尾語「ぶ」がついた言葉です。
他の説だと「真(まこと)に習う」から「まなぶ」ができたという説 もあります。
どちらにしろ学ぶ事は真似する事。


ステップ1 模倣

技術の習得は模倣から始まります。
大きな達成感を得るためには、まずその技術の基本をしっかりと身につけることが必要です。この模倣の段階では、失敗を恐れず徹底的に「見よう見まね」で挑戦します。
このプロセスを経て、自分自身の経験値、成功体験が少しずつ蓄積され、自信へとつながります。
エンジニアの世界でも、先輩たちが築き上げた知識や技術を真似ることから始まります。
サーバーやネットワークの構築、クラウドの利用方法など、具体的な作業を見て、実際に手を動かして学ぶことで基礎を固めます。
私は今この段階で、成功体験や失敗を繰り返してメンタルも強くなりました。

ステップ2 理解

模倣を通して基本的な技術が身についたら、次のステップはその背後にある原理や理論を理解することです。
ただ単に手順を追うだけではなく、なぜその手順が必要なのか、どのように機能するのか、背景を考えることが肝心です。問題にぶち当たった時の解決能力を鍛えることもこの段階で身につくと思います。
インフラの設計にはなぜその設計が有効であるのか、どのように安全性は確保されているのかを理解することです。
理解が深まると、あの作業や機能はこんなところで繋がっているんだと納得することができ、作業の全体像や関係性が見えてきます。
このような成熟に向けた理解は、次の段階である創造の土壌が育まれると思います。

ステップ3 創造

模倣と理解を経て、最終的には自身の「創造力」を発揮する段階に進みます。
自らの経験や知識を元に独自のアイデアを生み出す時期です。
技術の応用や新たな解決策を提示する能力が求められ、単に技術を使うだけでなく、その技術をどのように応用し、進化させていくかを考えられます。
独自のアイデアや視点を持ち始め、今までの経験を基に、自分自身のスタイルを確立しつつ、新たな挑戦を楽しむ姿勢が出来るとも思います。
模倣、理解、創造は行ったり来たりしながら成長していきますが、どんな問題にぶち当たってもなんとなるだろ!と言う余裕も生まれますし、このフェーズの方は教わってると心の底から楽しそうです。創造の段階は最早オタクなのです。

まとめ

この記事で伝えたい事は、今理解できなくても、自身がどの成長フェーズにいるのかを自覚できれば、現状を受け入れて精進できます。
私の場合、今は模倣の段階で、ここで吸収して業務やqiitaでアウトプットを重ねて理解を深めれば創造の段階に行ける、という暗中模索から脱した感覚がありました。
私自身哲学が好きで読んでますが、中々日常で使う事がなく、ただ知ってるものの考え方でしたが、今回の経験が理論を活かす機会になり、色んな意味で学びになりました。
哲学や思想の本は読んでも使いどころが、、となる時がありますが、生きてるとあの本で言ってた事はこれだったのかな?となります。
何かの解決になるかもしれないので、なんか有名だし読んでみようかな?というノリで哲学書、理論書は読むのはオススメです。
全て世阿弥の受け売りですが600年前に書かれたのに今日まで読まれているのは、確固たる理論だからです。
最近ハイになってますが、現場の方も模倣から始まり、理解を深め、最終的には自らの創造力を駆使して成長するこのプロセスを経てるからこそ、大規模なプロジェクトを回せるのだと思います。

余談ですが、この業界を志した時、なんでデバイスとデバイスは通信できているの?アプリの下では何が起こっているの?という疑問がありました。
この疑問からインフラエンジニアを選択したのですが、物事の本質的な事に興味があるので、インフラエンジニアを選択して良かったと思います。
大学でも本質的なことをしていて、なんでそんな地味で頭が痛くなる分野をやるんだよ、、と言われがちでした。
今鳴り響いてるものは本当に音楽なの?聴いているものは物理的に聴き取れているだけで、聴こえないけど理解できている土台は何?と言う疑問からのめり込んで行きました。
私が興味のある思想や美学は芸術におけるインフラのような基盤で、その理論の上で奏でるのが演奏家でアプリケーションだと思っています。
芸術における思考パターンとITにおける思考パターンが一致しているのでこの仕事は向いてる!と信じて精進していきます。
ここまで読んでくださりありがとうございました!

参考文献
・株式会社PHPエディターズ・グループ
 『現代語訳 風姿花伝』
・岩波書店
 『古典を読む 17風姿花伝』

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