はじめに
今年の4月からエンジニア業務の傍ら、北海道情報大学通信教育部に入学し、2度目の大学生活を始めました。
(と言っても通信課程なので全て自宅で完結しますが…)
目的は「高等学校教諭一種免許状(情報)」の取得。
本記事では取得に至った経緯や学習内容などを紹介するので、
①情報教育に興味がある人
②ありきたりな情報系資格に飽きた人
③情報技術に少しでも関わっている人
に読んでいただければ幸いです。
※念の為言っておきますが、前期が終了しただけなのでまだ教員免許を取得したわけではありません。予めご了承ください。
情報科教員免許取得を目指した経緯
1. 元々「教育」「教職」に興味があった
大学時代に中学社会科と高校公民科の教員免許を取得していたり、学部も心理学部で教育心理学を専攻していたりなど、元々「教育」という分野に興味がありました。
新卒でインフラエンジニアとして働き始めたのも
「いつか教育現場に携わる際、この経験が必ず活きるだろう」
という想いがベースにありました。
(今の会社の面接時もこの想いは伝えていて、それでも採ってくれました。感謝)
なので、インフラエンジニアとして働き始めて4年目に突入した今も、「これは先生になった時に活きる経験だな」と思うことが度々あります。
2. インフラエンジニア × 情報科教員ってなんか面白そう
元々は、「何年か働いた後に社会科の教員になる」という心構えでしたが、インフラエンジニアとして働いているうちに
「この経験は情報の先生の方がもっと活きるのではないか?」
と思うようになりました。
スクリプトのコーディングをする際、厳しいセキュリティと出会った際、"情報"の扱いに慎重になる際など、エンジニアならではの景色と出会う度に強く思います。
あらゆる情報技術によって成立する現代社会において、エンジニアにとって当たり前の知識や感覚は、そうでない人にとっても非常に重要な考え方になるのではないか。
そして、それを実務経験者が高校の授業で伝えることで、情報技術をより効果的に使える人間を増やせるのではないか。
このように思う機会が次第に増えたことで、「高校情報科の教員免許を取ろう」という想いが徐々に強くなっていき、本格的に取得に向けて動き出しました。
いつかは「エンジニアとして働きながら、教育現場に携わる・教鞭を執る」という働き方ができたら良いなと考えています。
学習内容
ここからは現在履修している教職課程について紹介します。
科目内容
↑の画像に示した10科目の単位を取得することで免許状の申請が可能になります。
(※上述したように私は既に高校教諭一種免許状を持っているので、この10科目の単位取得で免許状の申請が可能になります。教員免許状の取得状況に応じて履修科目や実習の有無などが異なります。)
赤字になっている科目が前期(4月~7月)のうちに履修した科目です。
とりあえず半分の5科目を履修しましたが、通信授業なのでいつどの科目を履修するかは自由となります。なので頑張れば半年で10科目の単位を取得することも可能です。
授業内容について
基本的には指定された教科書やプリントを読み進める形式です。本来の大学の授業のように「〇時からはこの授業」というように決められていないので、自分のペースで進めることができます。その反面、自分でスケジュールを立てられないと全く勉強が進まなくなりますが。。。
以下に既に履修した科目の概要について紹介します。
情報科教育法Ⅰ
2018年に改定・公示された学習指導要領について理解を深めた上で、現在の必修科目である「情報Ⅰ」と選択科目である「情報Ⅱ」の授業方針や内容を学ぶ。
情報教育の変遷を理解した上で、「何故“情報教育”は必要なのか?」を考えるきっかけになる授業でした。もし興味のある方は下記リンク先で学習指導要領が読めるので、是非眺めてみてください。
▼教科書
https://www.mext.go.jp/content/1407073_11_1_2.pdf
システム開発基礎Ⅰ
データベースの操作言語であるSQLについて、基本情報技術者試験に合格できるレベルの知識を身に付ける。用意された実習環境を用いて実際にSQLでデータベースを操作することで、データベースの構造や仕組みを理解する。
この授業で初めて「データベース」を触りました。
インフラエンジニアとしてデータベース用のサーバの構築やMWのインストールを行うことはありましたが、実際にSQLで操作することはなかったので非常に面白かったです。
実習環境も教科書に付随した環境が用意されており、環境の下準備等が不要だったので気軽に取り組むことができました。
また、実際のエンジニア業務の中でタイミングよくデータベースを扱う機会があったので、より一層理解が深まりました。業務と並行して勉強することのメリットを感じられた瞬間でしたね
「データベースに興味があるよ」という方は是非下記リンクの教科書をチェックしてみてください。
▼教科書
https://book.impress.co.jp/books/1123101107
コンピュータネットワーク
通信の基本知識やOSI基本参照モデル、TCP/IPモデル、プロトコル、ネットワークセキュリティなどを学ぶ。
2年前にネットワークのベンダー資格であるCCNAを取得していたこともあり、比較的すんなりと理解できた科目でした。難易度としてはCCNAの方が幅広い且つ難しいかと思います。
ただ、「変調技術」についてはCCNAでも取り扱われていない内容だと思うので(たぶん)、理解するのに若干苦労しました。。
ネットワークの内容を高校生相手にどこまで深く教えるべきかの判断が難しいですが、「自分たちが送受信したデータがどんな流れで送られているのか」を体系的に理解することは、情報社会を生きる上で重要な知識になるのかなと思います。
▼教科書
https://www.coronasha.co.jp/np/isbn/9784339029369/
情報倫理
あらゆる場面で情報技術が使われる現代社会において、それらを効果的に活用するために我々に求められる情報倫理を考える。法律やモラルを知識として取り入れるだけでなく、「活用するためにどんな行動をするべきか」を考えさせる。
個人的にはこの授業が一番苦労しました。久しぶりに“大学のレポート”を作成しましたが、自慢だったレポート作成スキルがいつの間にか消滅していて、レポート作成にかなりの時間が掛かりました。。
ただ、内容としては前期に履修した5科目のうち最も重要な科目だと思いました。
「情報教育」と言うと真っ先に「プログラミングをやるんでしょ?」と思われがちですが、もっと重要なのが情報倫理だと思います。
あくまでプログラミングやネットワークなどの知識は応用的なものであり、最悪全く理解できなくても問題ないのではないかと思います。全員が情報技術を扱う職業に就くわけではないので。
しかし、我々の生活にスマートフォンやSNS等の情報技術が必需品となった現在、情報技術を扱う上での基本的な振る舞い方については、どんな立場の人であれ身に付けるべきものだと思います。
インターネット上で相次ぐ“トラブル”を防ぐために、現代において何よりも大事な科目だなと感じました。
▼教科書
https://gihyo.jp/book/2023/978-4-297-13415-0
プログラミング基礎
C言語を用いてプログラミングの基礎を学習する。変数・式・演算子・条件・繰り返し・配列などを学習し、プログラミングの基礎知識および能力を身に付ける。
この科目は他の科目と異なり「映像授業」の授業形式でした。また、その映像と併せて北海道情報大学が開発した実行環境を用いて実習を行うという内容でした。
約90分の映像が15回分あり、ポイントごとに練習問題を解き、講義の最後に提出必須の演習問題を解くという流れでした。
コーディング後にコンパイルを開始
というボタンを押下すると、実行までを自動で行い、もしコーディング内容に間違いがあればその間違いが指摘されるので、何度も試行錯誤しながらC言語に向き合うことができました。
入学前から「プログラミングをやっていけるか。。」という不安があったので、懇切丁寧な学習環境が用意されていたことで非常に助かりました。おかげで苦手意識を抱くことなく、楽しくプログラミングの学習を進めることができたと思います。
▼教科書
https://www.sbcr.jp/product/4797392586/
テストについて
テスト期間
テストは1年のうち4回のテスト期間が設けられています。
前期:①5月下旬
②7月下旬
後期:③11月下旬
④1月中旬
テスト受験の条件
テストを受けるためには各科目で指定された課題を提出することが最低条件となります。
課題内容は基本的に15回分の振り返りがメインとなるので、しっかりと教科書やプリントなどに目を通しておけば問題なかったです。
テスト内容
テスト内容についても課題と同様、授業内容の振り返りがメインでした。
説明文を読んで正誤判定、適切な語句の選択・穴埋めなどがほとんどを占めていたので、難易度はそれほど高くありませんでした。
また、教科書やプリントなどの持ち込みがOKだったので、そこまで気負うことなく取り組めました。この辺りはベンダー資格などに比べて易しいですね。
前期を終えてみて
「情報教育」についての勉強を始めて4ヶ月が経ちましたが、この4ヶ月で情報教育に対する考え方が徐々に変わっていきました。
元々は、
「プログラミングやコンピュータなどの専門的な知識や技術を教えることが情報教育なんだろう。」
と思っていましたが、次第に
「情報技術を扱うことが得意な人であれ苦手な人であれ、主体的に情報社会に参加するために必要な考え方や振る舞い方を身に付けてもらうことが情報教育なんだろう。」
と考えるようになりました。
あくまで個人的な考えですが、「情報教育」においてプログラミングやコンピュータなどの専門的な知識や技術は最悪身に付かなくても良いものなのかなと思います。全員がこれらを活用する職業に就くわけではないので。
むしろ最も必要なのは、「各種情報技術のメリットやデメリット、危険性を理解させた上で、効果的な活用方法を考えさせること」だと思います。
プログラミングやコンピュータを扱うことが苦手な人でも、日常生活で何かしらの情報技術を活用するような時代です。
デジタルなものを扱うことが得意な人でも苦手な人でも、情報技術を効果的に活用し、より大きな利益を得られるようになれることが「情報教育」の一つの使命なのかなと思いました。
雑感
エンジニア業務と並行して大学の勉強をするのはなかなか大変でした。私が今従事しているプロジェクトはデータセンターでの作業がメインで、時々在宅ワークがあるという形式なので、データセンターへ出社する日に勉強時間を確保するのは至難の業でした。約2時間弱かかるので。。
それでも移動時間や休日に勉強したり、内容を分割して少しずつ進めたりなど、自分に合った工夫をして学習を進めていきました。社会人になって資格を取得したことがある人ならわかると思いますが、意識的に勉強時間を確保することは非常に大事ですね。
後期もこの調子で頑張りたいと思います!
ここまで読んだいただきありがとうございました!