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個人レベルの感染予防をポアソン過程で議論

Last updated at Posted at 2020-04-14

※私には医学的知識はありませんであくまで参考程度に捉えてください

要約

  • 感染者数ではなく、個人レベルの予防策として、人との接触時間をどれくらい減らしたらよいのか議論した
  • ミクロ(個人)なモデルとしてマルコフ過程で議論
  • 接触は5分程度にしよう

モチベーション

新型コロナウィルスの感染に関して、感染者数の増加予測が色々な方法で議論されています。よく目にするのはSIRモデルというもので、Qiitaでは例えばこちらが最初期の頃の記事の様です。

ただ、感染者数というと集団(マクロ)に対する議論なので、個人(ミクロ)での意識としてどれくらい何をすれば良いのか直接的に感じられないかもしれません。

そこで、個人個人としての努力目標を具体的に理解するため、ミクロな視点で議論してみたいと思います。ここでは、個人が感染するリスクを抑えるために、「連続した会話(接触時間)をどれくらい減らせばよいか」をマルコフ過程を使って議論したいと思います。

ミクロなモデル:マルコフ過程での感染

仮定1:ミクロな議論として、感染はマルコフ過程で起こると仮定する

次のように考えてみましょう。非感染者が、感染者と周囲2m以内などのある条件(三密状態)になってからの経過時間を$t$とします。このとき、感染の確率密度を$p$とすると、時刻$t$から$t+dt$の間に感染する確率は
$$
p_n dt+O(dt^2)
$$
で与えられます。このとき、$O(dt^2)$は$dt \rightarrow 0$において第1項よりも早く0に収束すると仮定する。すなわち、三密状態にある状態で時間$dt$を経過した時に感染する確率は、以後は$pdt$とすればよい。

三密状態になってからある時刻$t$経過した時に「感染していない」確率を$Q(t)$とすると、次の瞬間の時刻$t+dt$においても感染していない確率は
$$
Q(t+dt)=(1-p dt)Q(t)
$$
となります。これより、次の微分方程式が得られます。
$$
\frac{dQ(t)}{dt}=-p Q(t)
$$
この解は次のようになります。
$$
Q(t)= \exp (-p t)
$$
ただし、$Q(0)=1$としました。

ここで$Q(t)$は感染していない確率ですので、あらためて、時刻$t$までに感染してしまう確率$P(t)$は
$$
P(t) = 1-Q(t) = 1 - \exp(-p t)
$$
になります。

(知っている人には回りくどい書き方をしていますが。)

パラメータの決定

さて、$p$は確率密度といいましたが、アバウトに言えば「感染力」ともいうべき量でしょう。感染者がいない状態で三密状態になっても感染しないので$p=0$ですが、三密状態の中の感染者数が増加すれば$p$も増加すると思います。ただし、複雑さを避けるために、まずは感染者と接触状態においては$p$はある定数パラメータとして議論を続けます(ポアソン過程)。

日本でのクラスター感染をパラメータ決定に使うことにします。スポーツジムや夜の食事でクラスター感染していますが、だいたい1時間程度の接触としましょう。ここから、おおざっぱですが次の仮定をします。

仮定2:感染者と濃厚接触が1時間続いたとき、感染する確率を50%とする

つまり、$t=1$ (以後、時間$t$の単位はhourとしましょう)が経過した時点での、感染確率は
$$
P(t=1)=1/2
$$
を仮定したことになります。これを、先のモデルの解に代入すると、パラメータ$p$が求まり、
$$
p=\ln 2
$$
となります。

予測

上記の過程から得た$p=\ln 2$を代入して、あらためて、感染確率の式を書き直すと
$$
P(t) = 1 - \exp[ - (\ln 2 ) t] = 1 - (1/2)^t
$$
です。時間$t$の単位は[hour]です。

時間$t$に具体的な数値を代入してみましょう。

5分の接触なら、$t=1/12$を代入して、
$$
P(1/12) = 0.0561
$$
ということで、約5%。つまり、1時間の会議を5分で済ませれば、感染率は50%→5%と、10分の1まで減らせます。

20分$(t=1/3)$接触していた場合は、
$$
P(1/3)=0.206
$$
と約20%の感染率です。満員電車での通勤時間がこれくらいとすると、電車通勤を控えることは効果がありそうです。

興味のある人は適当な数字を入れてみたり、グラフで可視化してみてください。

議論

今回の個人の感染確率の予測では2つの仮定を用いました。

まず仮定1の感染がマルコフ過程に基づくという点については、医学的な知識がないので妥当性は分かりません。数理モデル系の人ならこう考えるかなと思って採用しました。コメント頂ければ幸いです。

仮定2も議論の余地があります。そもそも1時間一緒の店にいたら半分くらいの人が感染していそう、という完全に想像で決めています。これは具体的なデータからもっと最適なパラメータ$p$を決めれるでしょう。

また、$p$は定数としましたが、窓を開けているか、マスクをしているか、三密状態にある接触者の中の感染者の数などにも応じて変化すると思います。ですのであくまで参考までに。

こういうミクロなモデルを作ると、マクロなモデル(今回の場合は感染者数)との繋がりを問われますが、それは今回に限らず難しい話になります。ただ、今回はあくまで「感染者と接触している時間」についての議論です。つまり、接触相手が感染者である場合を仮定しています。ですので、実際には接触相手が感染者であるかどうかを、マクロモデルの感染者/非感染者の割合に応じて変えてやれば、ミクロとマクロの接続は出来そうですね。

まとめ

個人個人の感染防止のために、マルコフ過程(ポアソン過程)を用いて個人の感染率と接触時間の関係を議論してみました。

医学的知識が無い中で何かを発信して良いものか悩みましたが、個人個人の接触を減らそうという意識を促す意味はあるかなとポジティブに捉えて投稿しました。

用語の使い方等、間違いも多いと思いますので、ご指摘ありましたらよろしくお願いします。

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