はじめに
リーマンサット・プロジェクトは「普通の人が集まって宇宙開発しよう」を合言葉に活動をしている民間団体です。他では経験できない「宇宙開発プロジェクト」に誰もが携わることができます。興味を持たれた方はこちら https://www.rymansat.com/join からお気軽にどうぞ。
リーマンサットではこれまで RSP-00、RSP-01 と2機の衛星を軌道に投入しました。今年 2023 年度の打ち上げをめざして RSP-02 衛星のプロジェクトを行っております。さらに新しい衛星 RSP-03 の開発・製作を進め、打ち上げ費用のクラウドファンディングを行っています。ミッション実現のため協力をいただけたらと思います。詳しくはこちら https://readyfor.jp/projects/rymansat5
追記
RSP-03 のクラウドファンディングは、目標の 300 万円を上回る 3,352,000 円の支援をいただき達成しました。ご支援ありがとうございます。
AMSAT Cube Sat Simulator
AMSAT https://www.amsat.org/ はアメリカの衛星愛好家団体であり、 Cube Sat Simulator はそこが手掛けている教育向けのプロジェクトです。コアになるのは rpitx https://github.com/F5OEO/rpitx というパッケージで RasPi の GPIO PORT に PWM で無線機を使わずに 435 MHz 帯のアマチュア無線バンドの信号を発生させるシステムです。これにより APRS、FSK、BPSK、SSTV、CW のモードで送信が可能で画像やテレメトリを送信することができます。
Cube Sat Simulator にはフルセット版と Lite 版があり、ブロックダイアグラムは以下のようになっています。
フルセット版は Raspberry Pi Zero と基板3枚からなり、太陽電池パネル、カメラなどを搭載、充放電コントローラー、温度計、ジャイロで衛星をシュミレートします。Pi Zero での C&DH の他に Arduino や STM32 ボードでのミッション系も用意されている。
Lite 版はブロックダイアグラムの左側 RasPi Zero の C&DH のところだけ、上記の電波形式で画像・テレメトリを送信する。
いずれも SDR などの受信機でテレメトリ・画像を復調する実験をすることができる。
どちらも AMSAT Store https://www.amsat.org/product/amsat-cubesatsim-pcb/ で販売しているが、アメリカ国内にしか出荷しないとの記述がある。現在は Lite 版の販売は終了しており、フル版のプリント基板だけとなっている。回路図、プリント基板発注のための Gerber File、BOM などの製作情報は公開されているので試作することにした。
Lite 版を作ってみる
まずは Lite 版、回路を見ると非常にシンプルなものである。Paspberry Pi Zero の GPIO にコマンド用のタクトSW、表示LED を取付ける。RF PWM に設定した GPIO4 PORT に LPF(ローパスフィルタ)を介してチップアンテナから 435 MHz 帯の RF信号を出力する構造になっている。図はオリジナルのアンテナ周りの回路を抜き出したもの。
LPF に使用するチップインダクタは少量では入手できないので、代替のコイルや基板のパターンでインダクタを形成して LPF を作ることにした。CHIPアンテナは回路図にあるものが Digikey などで入手できる。机上のみで使うことを想定すると特に必要だとは思われないので、基板にアンテナパターンを準備した。さらに、電波が飛びすぎないように出力回路(RF PWM PORT)に ATT(減衰器)を入れてパワーを下げて日本の実情に合わせるようにした。
製作したもの
中国の基板屋に発注して製作した基板の写真、左は基板にインダクタを生成して LPF を構成、右は Aitendo から購入した FM コイル https://www.aitendo.com/product/16198 を使用したものである。オリジナルは Pi Zero と同じ大きさであるが、今回は標準的な Ras Pi の拡張基板の大きさにしてある。
どちらも基板上にアンテナパターンを製作してあり、SMA コネクタからも出力できるようになっている。前述のように出力に 20dB ATTを入れて電力を 1/100 に下げ微弱電波で半径5m以内程度での運用を想定している。下の画像は Ras Pi Zero と連結した様子。
Raspberry Pi Zero のソフトは Rasbian と rpitx、CubeSatSim アプリがインストールされたディスクイメージをこちら
http://cubesatsim.org/download/
からダウンロードして microSDカードに書き込む。ファイルは一番新しい FIAB-V1.12z3.iso.gz を選択した。
SDR での受信
手持ちの RTL-SDR とモバイルバッテリで運用の様子。
SDR# での受信の画面
テレメトリの解読など
送信される信号のうち、FSK、BPSK のテレメトリは FoxTelem で解読することができる。Windows、Mac、Linux の各バージョンがあり、こちら https://www.amsat.org/foxtelem-software-for-windows-mac-linux/ からダウンロードできる。
送信モードを BPSK に設定して RTL-SDR で受信するとこのように復調される。
ダミーデータでのテレメトリの解読結果はこちらに表示。
おわりに
こんなシンプルな構成で実際の衛星の電波を受ける様子がシュミレートできるのは驚きである。カメラ、センサを追加したり、さらにはフルセット版の製作などを進めていきたい。
参考リンク
The CubeSat Simulator Project Page 論文などがダウンロードできる
https://cubesatsim.com/
CubeSatSim Project Wiki 製作の Wiki
https://github.com/alanbjohnston/CubeSatSim/wiki
rpitx
https://github.com/F5OEO/rpitx
Rasbian Disk イメージ( rpitx を含む )
http://cubesatsim.org/download/
FoxTelem
https://www.amsat.org/foxtelem-software-for-windows-mac-linux/