読むきっかけ
去年から「マネジメント」や「アジャイル」について興味を持ち始め。本を数冊読みました。
そんな中、Twitterを眺めているとITmedia NEWSにて2022年のITエンジニア本大賞についての記事が上がっており、「ビジネス書部門大賞」を獲得した本書に興味を持ち読むきっかけとなりました。
おすすめできるのか
結論:おすすめできます
帯にある売り文句にあるように、プロダクトを作るにおいて必要な知識が幅広く書かれていました。
特にプロダクトの0→1フェーズについては応用情報技術者試験レベルよりもかなり深く掘り下げて解説されていました。
また、各ステップにおけるマネジメント手法やおすすめのツールについても書かれているため、すぐに学んだことを実践できる点も優れていると思います。
マネジメントされている方はもちろんですが、エンジニアリングやデザイン思考の教養としても新入社員にもおすすめです。
↓本の概要紹介↓
全6パートから構成されています。
Part 1. プロダクトの成功
30p以下の短いパートです。
何を持ってプロダクトの成功とするべきか(プロジェクトではない)や、プロダクトマネージャに必要な知識範囲、仕事、スキルなどをさらっと説明しています。
本の導入にあたる部分です。
Part 2. プロダクトの4階層
個人的にこの本で最も有意義なPartで最もページ数が多いパートです。
プロダクトがリリースされるまでのプロセスを Core, Why, What, How の4階層に分けて説明しています。
最終的にはプロダクトのリーンキャンバスをすべて埋めます。
画像引用元:ferret
Core
プロダクトの世界観として 「ミッション」 と 「ビジョン」 、企業への貢献として 「事業戦略」 を設定します。
例えばLinkedInではビジョンとミッションを以下のように定めています。
ビジョン
世界で働くすべての人のために、経済的なチャンスを作り出す。
ミッション
世界の人々をつなげることで個人と組織の生産性を高め、さらなる成功に結びつける。
これらを策定するコツとしては、独自性を持たせるために抽象度を下げて具体的な要素を含める必要があるが、具体的すぎると世界観が小さくなることです。
このミッションやビジョンの作り方のプラクティスをこのCoreチャプターで説明しています。
Why
ここでは 「誰をどんな状態にしたいか」 と 「なぜ自社がするのか」 について考えます。
「誰をどんな状態にしたいか」についてはターゲットユーザを思い浮かべ、
達成したい仕事→ 仕事
その仕事に関連して期待する結果や副次的に満足度を向上するもの→ ゲイン
仕事を達成するための障害→ ペイン
について考えます。
そしてそれをプロダクトに結びつけ、バリュー・プロポジションキャンバスを作成します。
画像引用元:markeTRUNK
「なぜ自社がするのか」については様々なプラクティスが本書で書かれていますので実際に読んでみてください。
最後にこのWhyチャプターではペインとゲインの仮説を検証をするためにユーザインタビューを実施し、出来上がったWhyの内容がCoreの内容とずれていないのか、Coreを修正する必要はあるのかといった Fit&Refine を行います。
What
ここでは何をつくり、どのような優先度で取り組むのかの検討をします。
具体的には 「ユーザ体験」 「ビジネスモデル」 「ロードマップ」 を策定します。
「ユーザ体験」ではユーザを理解するためにペルソナを作り、そのペルソナの メンタルモデルダイアグラム と カスタマージャーニーマップ を作ってプロダクトとを繋げます。
画像引用元:cotra
「ビジネスモデル」と「ロードマップ」ではどのような価値を創造し、ユーザに届けるかを論理的に説明できるようにします。ビジネスモデルキャンバスを作成したり、マイルストーン、評価指標としてKGIやKPI、NSM を策定します。
最後にこのチャプターでも前のWhyとFit&Refineをして終了です。
How
ついに 「どのように実現するか」 を考えるチャプターです。ここに来てプロダクトバックログを作ります。最初のリリースに含める必要最低限の機能(MVP)を考え、実装し、リリースします。
主な内容としては「バックログの見積り方」「リリース方法策定」「サポート体制」「利用規約など」です。
ここでも前のWhatとのFit&Refineをし課題解決のズレがないかを確認します。
そしてリリース後、KPIレポートなどのプロダクトマネージャとしての仕事が記載されてあります。
Part 3. ステークホルダをまとめ、プロダクトリームを率いる
part2ではプロダクトができるまでといった「プロダクト」に焦点を置いていましたが、このパートでは「チーム」に焦点が寄っています。
リーダシップとは何か、他者を率いる際に必要となる手段は何があるかについて説明し、マネージャとしての振る舞いについて教えてくれます。
また、チームを円滑にするために適切なチームビルディングは何か、心理的安全性をどう保障するかについて書かれています。
最後にチームでプロダクトを作るのに必要なドキュメンテーションやコーチング、ファシリテーションの仕方について解説しこのパートは終わります。
チームまたはマネージャの長所と短所や、そのチームに何が必要かを考えたり見出せる観点を養えるパートです。
しかし、チームマネジメントは学習分野として幅広く、本書以外にも多くの知識を吸収するようにする必要があります。
Part 4. プロダクトの置かれた状況を理解する
ここでは主に「プロダクトステージ」と「ビジネス形態」による振る舞い方の違いを解説しています。
「プロダクトステージ」はよく言われるのは0->1, 1->10, 10->100のプロセスです。
各ステージの中でプロダクトがどのような方向性で進んでいくべきか、どのような投資を行うべきかを解説しています。また、より広い視野で見たプロダクトライフサイクル単位でも解説してくれています。
「ビジネス形態による振る舞い方」ではBtoB, BtoCプロダクトごとの振る舞い方、プロダクトマネージャの仕事のしかたを解説しています。
Part 5. プロジェクトマネージャと組織の成長
プロダクトマネジメントにいてつらつら書いてますが、それの導入方法から人材スキルの伸ばし方、プロダクトマネージャ自身のスキルの育て方を解説しています。
本書ではW型モデルがプロダクトマネージャの人材モデルとしています。ぜひ自身のスキルをマッピングしてみてください。
画像引用元:DIAMONDonline
Part 6. プロジェクトマネージャに必要な基礎知識
ここでは知識の勉強です。内容は「ビジネス」「UX」「テクノロジー」です。
「ビジネス」ではコストの考え方、パートナーシップ構築の仕方、指標とデータの見方を解説しています。中でもデータの見方はサブスクリプションモデルでよく使われる指標などを解説してくれるので有意義でした。
「UX」ではデザインやビジュアル、マーケティングについて学べます。軽くしか書かれていないのでここでデザインの全てを学べるわけではないですが、基礎知識をえられます。
「テクノロジー」では皆さんに最も親近感のある開発手法やソフトウェアの中身の話について書かれています。
本書での解説は薄めなので、別途学習する機会を設けるか、熟知されている技術者ならさらっと読む程度で良いです。
最後に
これを読んで理解すれば、突如やって来たアイディアについて、それを具体化したりそのアイディアの本質を精査することができると思います。
紹介したプラクティスと中身はほんのごく一部です。少し分厚いですが、是非読んでみてください。