概要
近年、ビットコインをはじめとする暗号通貨と米国株式市場との関連性が注目されている。これら資産間の相関性を把握することは、ポートフォリオのリスク管理や市場の動向をより深く理解するうえで重要である。本記事では、TradingViewのPineScriptを用いて、米国株式(例:S&P500指数)とビットコインの相関性を計算する方法について解説する。また、実装例を示すとともに、使用時の注意点についても言及する。
対象読者
本記事は以下のような読者を想定している。
- TradingViewおよびPineScriptに関心がある方
- 暗号通貨と株式市場の関連性を分析したい方
- システムトレードやデータ分析を学びたい方
相関性の定義
相関性は、2つのデータセット間の関係を表す統計的指標である。PineScriptではta.correlation()
関数を用いることで、指定された期間における2つの資産の相関係数を計算することが可能である。相関係数は-1から1の値を取り、以下のように解釈される。
- +1: 完全な正の相関
- 0: 無相関
- -1: 完全な負の相関
実装手順
1. 必要なデータを準備
PineScriptでは、データソースとして別のシンボルを参照することが可能である。以下の例では、ビットコイン(BTCUSD)とS&P500指数(SPX)を使用する。
//@version=5
indicator("Correlation: BTCUSD vs SPX", shorttitle="BTC vs SPX", overlay=false)
// データ取得
btc = request.security("BTCUSD", "D", close)
spx = request.security("SPX", "D", close)
// 相関係数の計算(過去30日間)
correlation_period = 30
correlation = ta.correlation(btc, spx, correlation_period)
// 相関係数をプロット
hline(0, "Zero Line", color=color.gray, linestyle=hline.style_dotted)
plot(correlation, color=color.blue, linewidth=2, title="Correlation")
2. チャート上での表示
上記のスクリプトでは、相関係数が-1から1の範囲で変動する様子をチャート上にプロットしている。このグラフを用いることで、2つの資産間の連動性を視覚的に把握することが可能となる。
使用時の注意点
1. データ精度と更新頻度
TradingViewのrequest.security
関数で取得したデータは、選択した時間軸(タイムフレーム)に依存する。異なる時間軸を使用する場合、結果が異なる可能性がある点に留意すべきである。
2. 相関の一時的な変動
相関関係は時間とともに変動するものであり、必ずしも一定ではない。特に市場のボラティリティが高い状況下では、相関係数の値が急激に変動する場合がある。そのため、単一の期間における相関性のみを基にした意思決定はリスクを伴うであろう。
3. 過剰解釈のリスク
相関性が高い場合でも、必ずしも因果関係を意味するわけではない。たとえば、米国株式とビットコインが同じ方向に動くとしても、それが一方の動きによる影響であると断定することは慎重に行う必要がある。
応用例
異なる資産クラス間の分析
本手法は、ビットコインと米国株式に限らず、その他の資産クラス(例えば、金や原油)にも応用可能である。これにより、ポートフォリオ全体の相関性を把握し、リスク分散戦略を立案する助けとなるであろう。
トレード戦略への応用
相関性が高い場合、片方の資産の動きを先行指標として利用する戦略も考えられる。例えば、米国株式市場が急上昇した場合、その動きがビットコインに波及する可能性があると予測し、エントリーのタイミングを計るといった方法が挙げられる。
結論
PineScriptを用いて資産間の相関性を計算することで、マーケットデータをより深く理解し、分析力を向上させることが可能である。本記事の内容が、読者諸氏のトレードや投資判断の一助となれば幸いである。
TradingViewの可能性をさらに追求し、より洗練されたトレード戦略を構築されることを期待している。
APIドキュメント:
免責事項
本記事に記載されている内容は、筆者がTradingViewおよびPineScriptを用いて学び得た知識と経験を基に執筆したものである。内容の正確性および完全性については可能な限り配慮しているが、必ずしもその保証をするものではない。
自動売買Botの構築や運用、またそれに関連する投資活動は読者自身の判断と責任に基づいて行われるべきであり、筆者および本記事を掲載するプラットフォーム(Qiita)は、それによって生じたいかなる損失や損害に対しても一切の責任を負わないものとする。
特に、トレードに関する意思決定は市場リスクを伴うため、実運用前に十分な検証とリスク評価を行い、必要に応じて専門家への相談を推奨する。
読者各位の責任において本記事をご活用いただければ幸いである。