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いのちの輝きくん eyes の作り方

Last updated at Posted at 2020-09-06

#いのちの輝き君 eyes
xeyes のパクリオマージュとして「いのちの輝きくん」がマウスを見つめる物を作ろうと思い立った。
できあがったのは↓

■Windows
InochiShine2.gif

■macOS
ino.gif

形や目はランダム生成。

Delphi なので、この手のデスクトップマスコットを作るのは本当に簡単。
具体的には下記の記事を参照。

■FireMonkey で Window Drag
https://qiita.com/pik/items/907641319e4de4d74805

■Delphi + FireMonkey で TaskTray / StatusBar にアイコンとメニューを実装する
https://qiita.com/pik/items/bd3448e2cf0c4c528027

なので、それだけだったら新たに記事を書く必要は無かった!
つまり問題はそこじゃなく、楕円の内部に収まるように目玉を動かす部分!

幾何学をもう一度

やりたいことは、マウスカーソルの位置と楕円の接点を求め(図の赤丸部分)、そこに接するように目玉を配置する事

eye1.png

ここで、図中の要素に名前を付ける

eye5.png

図中の名前 意味 変数名
c (cx, cy) 中心点 FCenterX, FCenterY
m (mx, my) マウスの座標 AMouseX, AMouseY
ra 長軸の半分 FRA
rb 短軸の半分 FRB
θ 線分 c-m の角度 Theta
er 目玉の半径 FEyeR
x, y 線分 c-m と楕円の接点 X, Y

θを求める

接点 X, Y を求めるのは線分 m の傾きが解ればいいので、まずθを求める。
θは ArcTan を使って dy/dx から求められる

\theta = tan^{-1}(\frac{dy}{dx})

dx, dy は

dx = mx - cx\\
dy = my - cy\\

なので

\theta = tan^{-1}(\frac{my - cy}{mx - cx})

となる。
これをコードに落とすとこう
(ArcTan2 は分子と分母を別々に渡せる ArcTan のバリエーション)

var Theta := ArcTan2(AMouseY - FCenter.Y, AMouseX - FCenter.X);

X, Y を求める

θが求まったので、x, y を求める。

X を求める

この時、中心点 c で半径 ra の真円(下図の赤い線)を考える。

image.png

図中の点 Q は、真円の円周上にある物とすると、線分 OQ の長さは ra となる(真円なので)

次に三角形 OQx の底辺 Ox の長さを求める。
ここでは、三角関数の cos を使う。

cos は三角関数の定義で

image.png

上図の三角形の

\frac{b}{a} = cos(\theta)

と決められている。

ここでは、上図の三角形の底辺 b (=Ox) の長さを求めたい訳だから、両辺に a を掛けてやればよい。

\begin{align}
\frac{b}{a} &= cos(\theta)\\
\\
\frac{b}{a} * a &= cos(\theta) * a\\
\\
b &= a * cos(\theta)
\end{align}

これを使って図の三角形 OQx の底辺 Ox の長さ(x座標)を表すと

  x = ra * cos(\theta)

となる。

Y を求める

y を求める方法は2つ。
x と同じように rb を半径とした真円を考える方法と、楕円の公式を解く方法がある。
せっかくなので、ここでは楕円の公式を使う方法を紹介する。

楕円の公式は

\frac{x^2}{a^2} + \frac{y^2}{b^2} = 1

なので、これを y について解くと

y = \frac{b}{a}\sqrt{a^2 - x^2}

となるので a に ra, b に rb, x に ra * cosθ を代入すると

\begin{align}
y &= \frac{rb}{ra}\sqrt{ra^2 - (ra * cos(θ))^2}\\
\\
& = \frac{rb}{ra}\sqrt{ra^2 - ra^2 * cos(θ)^2}\\
\\
& = \frac{rb}{ra}ra\sqrt{1 - cos(θ)^2}\\
\\
& = rb\sqrt{1 - cos(θ)^2}\\
\end{align}

こうなる。
ここで三角関数の定義1↓より

\sqrt{1 - cos(θ)^2} = sin(θ)

なので、

y = rb * sin(θ)

となる。

総合すると

x = ra * cos(\theta)
y = rb * sin(\theta)

となり、これをコードに落とすと

var X := FRA * Cos(Theta);
var Y := FRB * Sin(Theta);

こうなる。

ただ、このままだと目玉の半径が考慮されておらず、目玉がはみ出てしまうので、楕円のサイズを目玉の半径分だけ小さくして考える。

eye3.png

上記を考慮すると

x = (ra - er) * cos(θ)
y = (rb - er) * sin(θ)
var X := (FRA - FEyeR) * Cos(Theta);
var Y := (FRB - FEyeR) * Sin(Theta);

となる。

座標系に合せる

ここまでで数学上は X, Y が求まっているが、目玉の座標系は Delphi FireMonkey の座標系(左上原点)に合せなければならない。
座標系に合せた座標を (x', y') とすると

eye4.png

図のようになり、x は c 点からの座標であったので座表原点 o に合せるため ra 分を加算し、図形は左上が原点になるので er 分を引く。
つまり、

x' = x + ra - er
y' = y + rb - er

となる。

目玉の座標計算コード

ここまでをコードで書くと

procedure TExpoCell.SetEyePos(const AMouseX, AMouseY: Single);
begin
  var Theta := ArcTan2(AMouseY - FCenter.Y, AMouseX - FCenter.X);

  var X := (FRA - FEyeR) * Cos(Theta);
  var Y := (FRB - FEyeR) * Sin(Theta);

  X := X + FRA - FEyeR;
  Y := Y + FRB - FEyeR;

  FEye.SetBounds(X, Y, FEyeD, FEyeD); // FEyeD は目玉の直径
end;

となり、更に式変形して

procedure TExpoCell.SetEyePos(const AMouseX, AMouseY: Single);
begin
  var Theta := ArcTan2(AMouseY - FCenter.Y, AMouseX - FCenter.X);
  var X := (FRA - FEyeR) * (Cos(Theta) + 1);
  var Y := (FRB - FEyeR) * (Sin(Theta) + 1);

  FEye.SetBounds(X, Y, FEyeD, FEyeD);
end;

となる。
できあがったコードはスゴくシンプル!
こんなに短いのに目玉がちゃんとマウスを追いかける!

ソースコード一式

Delphi 10.4 Sydney Release 1 (Delphi 10.4.1) で制作。

まとめ

最近ゲームを作っていなかったので幾何学計算に手間取った!
これで、xeyes もどきが量産されれば幸い。

  1. sin(θ)^2 + cos(θ)^2 = 1

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