私は歴史の専門家ではなく、単に最近3Dプリンタを入手して遊んでるだけの素人なんですが、古代の出土品を3Dプリンタで出力してみると、学校で習わなかったこと、教科書の写真だけでは分からなかったことが発見できて面白かったので紹介します。発見といっても、ちゃんと本物を見てる専門家の人にとっては今更当たり前のことなんですが。
##火焔土器
弥生土器が簡素で精密な形なのに比べて、縄文土器って手作りでグニャグニャで、荒削りなものという印象を持ってました。これは3Dプリンタで出力した火焔型土器を横から撮った写真です。教科書とか図鑑とかはだいたいこの方向から撮ったものが多いと思います。躍動感みたいなのはありますが、精密という感じはしないでしょう。
ところが、これを真上から見るとこうなります。
全体は真円で、炎のグニャグニャも綺麗にシンメトリーになっていて、実は非常に精密に計算された形だということがわかります。私は3Dプリンタで出力するまではこの方向から見たことがなかったので驚きでした。立体物はやはり立体としてみないと、本やらWebやらで見たつもりになっててはいかんと思いました。
上の写真で使った火焔土器の3Dデータは以下のサイトからダウンロードできます。83万ポリゴンという非常に精密なものがオープンデータとして公開されています。素晴らしい。お手元に火焔土器ひとついかがですか。
https://jomon-supporters.jp/open-source/
##遮光器土偶
もうひとつ、亀ヶ岡遺跡から発掘された遮光器土偶を紹介します。遮光器土偶は全国いろいろなところから出土してますが、亀ヶ岡のやつがなかなかいい形をしています。東京国立博物館に収蔵されており、YouTubeで紹介動画を見ることができますが、なんと3D CGです。
ということはどこかに精密な3Dデータが存在するはずです。火焔土器みたいにオープンデータとしては公開しているものがないか、あちこち探しましたが見つかりませんでした。
NHK技研が2021年にARを使って目の前に亀ヶ岡の遮光器土偶が現れるという番組宣伝コンテンツを公開しました。ということは遮光器土偶の3Dデータがサイトに使われているわけです。NHK技研のページ によると「※ 8K文化財プロジェクトのデータを基に解像度を落とした3次元モデルを使用」ということで、残念ながら細かい模様までは再現できませんが、立体のプロポーションはそのままなので小さいマスコットを出力するには十分なデータでした。
このページはどうやらglTF形式の3Dデータをthree.jsで表示してるようなので、ページのソースから <model-viewer src="... という部分を見ると、srcアトリビュートにgltfファイルのフルパスurlが書いてありました。それをダウンロードします。
落としたファイルをBlenderにインポートすれば、3Dプリンタで出力できるSTL形式にエクスポートすることができます。
印刷したのがこれです。
印刷してみて分かったことは、実にくだらないことなんですが、亀ヶ岡の遮光器土偶は、肛門のところに穴が開いている、ということでした。土偶を下からみないと分からないし、こんなことわざわざ記述する図鑑もなかったので、はじめて知りました。どういう意味があるんでしょうね。穴はNHKのサイトを見て、土偶のモデルをひっくり返しても確認できます。
古代の出土品のレプリカを手元の3Dプリンタで出力してみて思ったのは、立体物は立体で体験するのが一番だということです。NHKの番組は博物館の収蔵品を3Dデータで取り込んでいろいろ見せようということらしいので、これからもデータを公開していってほしいものです。学校教材とかにも利用できそうですし。