この記事は、Elixir Advent Calendar 2023 シリーズ14 の25日目です
昨日は、 私で 「2023年末のElixirが出来ること⑩データ操作ライブラリ編」 でした
piacere です、ご覧いただいてありがとございます
今回は、前回 の続編として、ElixirChipの一大領域である「宇宙開発」に対するモチベーションと、ElixirChipが宇宙開発とリンクするに至ったストーリーをまとめてみます
なお、私はコンピューティングとデータ処理、並行分散ソフトウェア/OS開発、SaaS事業経営の専門家ではありますが、CPU開発および宇宙開発に特化した専門家ではありません
また、科学コミュニティを主催してはいますが、アカデミックな面で上記を専攻していない「野良科学者」のため、各分野にご興味高い方や造形深い方、現業で有識な方とディスカッションしたり、ご教授いただけたら嬉しいです
あと、このコラムが、面白かったり、役に立ったら、 をお願いします
ElixirChip研究の将来構想
まず宇宙以前に、ElixirChip研究の将来構想を整理すると、以下3つのフェーズとなります
- ①短期的構想:【地上】ハードウェア制約でエンジニアが苦しむ状況の打破
- ②中期的構想:【バーチャルと現実】ハードリアルタイムとデジタルツインの実現
- ③長期的構想:【宇宙】人類が重力制御するための探査衛星開発
本コラムでは、タイトル通り、宇宙、つまり「③長期的構想」に特化して述べたいと思います
なお「①短期的構想」については、下記動画/スライドで状況説明やソリューションを解説しています
「②中期的構想」については、ElixirChipという用語は出していませんが、下記2つのコラムでその片鱗を述べています
人類が重力制御するための探査衛星開発の構想
最初の動機は、ElixirChip発では無く、ブラックホールに対する知的好奇心と、それで技術課題と捉えたところからでした
「重力理論と量子力学の融合の成功」を映画から
6~7年前、映画「インターステラー」を見たときで、物語中で出てくる「重力理論(理論物理学、相対論)と量子力学の融合の成功」と、その成果としての「人類がスペースコロニーに移住する」という展開に感じたインスピレーションからでした
その衝撃は、物理学出身では無い私に理論物理学と量子力学を学ばせる動機となりました
ブラックホール研究してる凄い高校生から紹介してもらった「シミュレーション天文学」が到着😊 #QuaUnivFukuoka
— piacere @ Elixir/D2C/xR+メイドコスプレでデジタルから現実改変する49歳 (@piacere_ex) January 4, 2018
中身は、数式のオンパレードなんだけど、偏微分、流体力学、フーリエ変換、座標返還、相対論、重力多体シミュレーション、と馴染みのある面々で、ヤバい楽しい😆https://t.co/zJ1FKQISmT pic.twitter.com/cp9L2BuIz4
自宅の本棚は、ITにデータサイエンス、経営学、マーケティングに「ブラックホール」と「理論物理学」、「量子力学」がグチャグチャに混ざるカヲスな様相を呈しました
ウチに置いてる、重力と相対論、量子力学、宇宙の本を御開帳(Haskellや分散系、トレーディングも混ざってるけど)😝
— piacere @ Elixir/D2C/xR+メイドコスプレでデジタルから現実改変する49歳 (@piacere_ex) May 22, 2019
写真、写ってないとこの本はこんな感じ😙
Elixir/XP/ゲーム開発/IoT
データサイエンス/AI・ML/数学
哲学/経営/地政学/心理学
マーケティング/地方創生/未来予測 pic.twitter.com/UJ40V4Upbe
「重力プログラマ」として活動開始
その情熱が溢れ過ぎて、遂にはLIGOという重力波観測施設が公開した重力波データの解析をコラム化(下記)させるほどのインパクトで、終盤の記載がその衝撃の一端をまとめたものですが、当時はまだポエムに過ぎませんでした
その翌月には、「福岡 理学部」という科学/数学コミュニティを興し、様々な宇宙関連イベントを開催していきました
私は、「重力プログラミング」というコンセプトの元、下記のような重力および量子力学、惑星力学のプログラミングとそのデモを行い、スペースコロニー建造に関する調査結果などと共にLTとして多数発表しました
- 人工衛星軌道の数式解析、軌道シミュレータ
- 惑星の公転と人工衛星のスイングバイ軌道の数式解析、軌道シミュレータ
- 重力波の数式解析、データ解析
- GPS衛星に発生する相対論と時刻合わせの数式解析
- 太陽フレアのの数式解析、データ解析
- ラグランジュ点の数式解析、スペースコロニー設置シミュレータ
- ブラックホールの流体力学の数式解析、降着シミュレータ
- 太陽系惑星の軌道解析(ケプラー → VSOP)、軌道シミュレータ
- ブラックホールの「事象の地平線」の数式解析、重力シミュレータ
「ザクすら燃え尽きるのに」 #FukuokaScience
— piacere @ Elixir/D2C/xR+メイドコスプレでデジタルから現実改変する49歳 (@piacere_ex) February 11, 2021
はやぶさ2耐火検証を聴いてるときに出たパワーワード😜https://t.co/DA7B5o1xtA
んで、いま、質問タイムだけど、ここでもパワーワード出現😗
「私も衛星を開発してるものですが、~」
なんだか凄い会になってるなぁ…主催者は野良科学者なんだがw😅
人工衛星100万機をブラックホールに順々に落とす
その活動中に、様々な科学者と接する中で下記コンセプトが生まれました
下記ツイート自体は2021年発信ですが、コンセプトそのものは、2018年頃に掲げています
これが現在、長期的構想としてElixirChipを開発する動機となっています(当時はElixirをハードウェア化するという飛躍した思考は持っていませんでしたが)
昨日出した「人工衛星100万機にElixir積んで、ブラックホールに順々に落として…」のネタお好きな方は、「星の舞台から見てる」オススメ😌https://t.co/pLHSYUCmZs
— piacere @ Elixir/D2C/xR+メイドコスプレでデジタルから現実改変する49歳 (@piacere_ex) January 26, 2021
地上に残ったAIと、月に昇ったAIが通信して、地上にいる主人公達を宇宙から助けたり、亡くなった持ち主を引き継ぐAIは腕だけとか…😜 https://t.co/LjoshaGpi9
それをElixirと、ElixirChip構想の前身的存在であるZEAMと、現在のNxに繋がるHastega(現在のPelemay)で叶える妄想も下記の通り、掲げています
オフィスの七夕短冊に書いたこと😙
— piacere @ Elixir/D2C/xR+メイドコスプレでデジタルから現実改変する49歳 (@piacere_ex) July 6, 2018
2030年までに、Elixir(ZEAM)搭載IoTドローンにカプセルネットワーク+転移学習をベースとした自律AIを載せて、地球上における人類居住可能地域の自動探索を行う実証実験に成功し、あわよくば人工衛星で宇宙に飛ばして、ハビタブルゾーンも自動探索できますように😆 pic.twitter.com/6bszHHx1W5
その後、オフライン開催中心だった福岡 理学部は、2020年始めに到来したコロナ渦により活動休止したものの、その舞台をVR上に移し、同時に宇宙開発案件の発掘にも向かっていきました
また、物理学だけに限らず、「惑星文明タイプ1への到達」や、その前提として必要な「無限エネルギーを手に入れても奪い合わないレベルの平和思想への目覚め」 … これはガンダムで登場する「ニュータイプ」という概念に近いかも知れない … といった、「2100年の科学ライフ」で述べられるような概念と結び付きました
もはや「ライフワーク」を超えるスケールへと昇華された訳です
人工衛星100万機を飛ばすために解決すべき課題
一方で、知れば知るほど、人工衛星100万機をブラックホール(や大質量惑星)に落とすためには、下記の問題解決が必要なことも分かっていきました
- ① エネルギー問題/消費電力問題
- 充分な宇宙進出(下記)は地球資源だけでは根本的に賄い切れない
- 人工衛星射出(その前段としてのロケット射出)
- ロケット射出の代替になり得る月面建造(マスドライバーでの衛星射出)
- 宇宙エレベータに期待
- スペースコロニー建造
- Amazonに期待
- 充分な宇宙進出(下記)は地球資源だけでは根本的に賄い切れない
- ② 計算量不足問題
- 上記①の解決および宇宙解析の前提となる下記解決は現代コンピュータ性能で困難
- 核融合成立のための粒子運動/衝突シミュレータ
- ミレニアム問題(ナビエ・ストークス方程式、NP問題など)
- 多体問題
- 上記①の解決および宇宙解析の前提となる下記解決は現代コンピュータ性能で困難
- ③ ブラックホール/大質量惑星が遠過ぎる問題
- 上記①を解決しても、最も近いブラックホールまでは150光年先(ヒアデス星団)
- 大質量惑星の代表である木星でも7.8億km(15,725時間 ≒ 約1.8年)
- 何万機も飛ばして、ピボットしたり、計画修正するには遠過ぎる
- ④ 資金量の問題
- 人工衛星を飛ばすためには、1機あたり4億円もの資金が必要
- 上記②を解決する量子コンピュータ研究やチップ開発にも、莫大な研究費が必要
上記①~③については、ハードウェア屋では無い私には縁遠い課題領域のため、そこは他プレイヤーに任せつつ、上記④を攻略するスタンスに入りました … しかし …
あらゆる問題解決に難航 …
実は、密かに下記のような現実課題に頭を悩ませていました
特に①は、自分たちが現行事業で推進するサイドでもあるため、ジレンマの構造を抱えることとなりました
突破口を見出す
およそ2年前、上記①~③の解決がElixirChipと結び付いた流れは、以下の通りです
2022年2月:関数型の本領はハードウェア化だと開眼
Elixir界隈にHaskellの考えを持ち込み、OSS提供もしている Blooklyn ZelenkaさんのPodcast を翻訳したことがきっかけで、Elixir含む関数型言語の本領は、ハードウェア結線された高速ロジックと、イミュータブルなデータによる非データ処理(≒ 必要なデータはメモリ保持せずロジックで計算し求めること)にあることに開眼しました
ここから掘り下げていくと、現代コンピューティングの問題(代表例はフォン・ノイマン・ボトルネック、つまりメモリ主体のアーキテクチャと暫定解としてのCPU内部キャッシュと、CPU-GPU間データ転送のオーバーヘッド)へと行き着きました
なお私は、上記でこの件を「問題」と書きましたが、むしろ逆で、70年も前に構想されたアーキテクチャであるノイマン型アーキテクチャが現代でも通用することの方が、稀有な先見性だと思っています
単にその限界が、現代までのコンピュータ利用増加に追いつけなくなっただけだと認識しています
つまり、新たなコンピュータ・アーキテクチャを生み出さなければならない時期に入ったということです
2022年6月:IT業界とシステム開発の根本課題発見
@zacky1972 さんと下記ホワイドボードのようなディスカッションをすることで、現代コンピューティングの課題こそが、エンジニア自身の働き方や組織形態の非効率さにも繋がっている … いわゆる「コンウェイの法則」の元凶であるということを突き止めました
また、2019年頃から @zacky1972 さんと議論し続けてきた、世界中のPCやクラウドがマルチコアマシンパワーを使いこなしていない課題にもリンクしました
こうした課題群の解消に、Elixir … それもハードウェア化されたElixirが役に立つという構想が生まれました
2022年7月:「ElixirChip」の着想を形にする
これらを踏まえ、ElixirChipの着想を形にして、下記にコラム化しました
高速CPUのみならず、GPUファームや世界中のスマホを接続する際のネットワークコントローラとしてElixirChipが役立つ点や、GPU非搭載マシンにGPUパワーを配分すること、また、近接コンピュータで高速化を実現する「ネイバーフッドコンピューティング」のコンセプトについても上記コラムでまとめました
2022年12月:お喋り座談会を開いていただく
@zacky1972 さんの主催イベントにて、ElixirChipについて語り合う座談会をセッティングしてもらいました
ちょうどその頃、 @nako_sleep_9h さんが @zacky1972 さんの研究領域にアレコレ興味を持ち始めた頃だったので、@nako_sleep_9h さんのおかげで楽しげなイベントとして構成できたことに感謝です
来月Nxバックエンド勉強会は、
— piacere @ Elixir/D2C/xR+メイドコスプレでデジタルから現実改変する49歳 (@piacere_ex) November 10, 2022
①ElixirChip:FPGA or HW化されたElixir
②全世界のスマホGPUをクラスタリング
③その社会実装
を @zacky1972 さんとお喋り会😝https://t.co/bfNtSt0WYW
年末はAdvent Calendarの影響か、こういうポエムモードになりがちだが、1~2年後に実現してるから恐ろしい😜
2023年3月~:共同研究の機運を作っていただく
上記で公開したElixirChipの構想(妄想?)から、@zacky1972 さんがFPGAによるプロトタイピングや、高性能だけで無く省電力需要を叶えること、またそれが宇宙開発に転用できるという素晴らしい構想を共有してくれました
ここから、長期的構想だけで無く、地上で今すぐ叶えられる需要への可能性を考え始め、これが短期的構想や中期的構想を生み出し、
「重力解明のための問題解決が出来るかは分からないけど、まずは作ってみよう」
という機運を授けてくれました
そして、その3ヶ月後である6月のマネーフォワード様とのコラボイベントにおける発表へと繋がっていきます
終わりに
「ElixirChip」が宇宙と結び付いた流れをお届けしました
私達は今、人類とコンピューティングの歴史においてエキサイティングな時代に生きていて、70年間も続いたノイマン型コンピュータの時代から非ノイマン型コンピュータが台頭する時代を目の当たりにし、それにより人類や人類が保有する技術の在り方が根本から変わるレベルの変革を迎えようとしています
さらに、SpaceXを初めとする「ニュースペース」と呼ばれる民間企業群が、宇宙開発や宇宙進出に手を伸ばしている、かつてない大変革の時代でもあります
そうしたタイミングに出会うこと自体が幸運なのですが、この私のコラムをご覧いただき、新たな領域を共有できる出会いも奇跡そのものですので、もし今回のアイデアが気に入ったら、Twitter DMにご連絡ください … 何か一緒にやっていきましょう
次回は、マネーフォワードイベントやその後の座談会で語り合ったElixirChipを始めたきっかけ についてお話しようと思います