最近、電話番号に関わるちょっとした不具合とトラブルに遭遇しました。
03番号からiPhoneに着信すると、一律で「東京都新宿区」と表示される問題
どうやらiOS 12.3.1から仕様が変わって、従来は都道県名の表示だったものが市区町村まで表示されるようになったようです。このご時世、未知の固定電話からの着信なんて少ないですし、iOSのChangelogから該当するようなものを発見できていないので、正確な時期やどう変わったのか、あるいは東京以外だとどうなのかは不明ですが、ここ数ヶ月で気づいたような気がします。
手元で確認した範囲では、少なくとも港区・足立区・北区からの着信でも「新宿区」と表示されます。新宿からかかってくる用事なんてないのにと思っているとつい身構えてしまう、いい迷惑な不具合(と言っていいのか)です。
世論調査で自分と無関係な選挙区の投票意向を聞かれる
自宅の電話に世論調査の電話がかかってきて「今衆院選が行われたら誰に投票しますか」という設問があり、列挙された候補者が自分の住む選挙区とは全く無関係の方でした。調査会社側がターゲッティングの方法を間違えているんだと思いますが、回答のしようがないし、そもそも調査としての有効性を疑いたくなってしまいます。
詳しくは後述する話に関連しますが、我が家の電話番号はKDDI発番の電話番号だったりします。
なぜこのようなことが起こるのか
ひとえに電話番号割り当ての仕組みに対する理解不足から発生していると思われます。
そもそも電話番号は「市外局番」「市内局番」「加入者番号」の3要素で構成されます。
この内、地理的な特定が可能なのは市外局番と大半の市内局番ですが、それぞれに例外が多くあります。
市外局番の法則
現在、日本の電話番号計画は電気通信事業法に基づき総務省が管理しています。そして市外局番の一覧は一次情報としては総務省から公開されていますがWordやPDFで分かりづらいので、Wikipediaの方が見やすいかもしれません。
見るとわかりますが、同一の市町村であっても市外局番が異なる地域はザラにあります。一般に「03」は東京23区だと思われていますが、狛江市・調布市・三鷹市の一部が含まれていたり、逆に練馬区西大泉町は「048」だったりもします1。あるいは町田市は川崎に含まれるエリアと相模原に含まれるエリアがあったり(東京都ですらない)、同一の市外局番でも複数の市町村にまたがることもあります。
iPhoneの発信地域表示はおそらく市外局番のみを見て該当のMA名を表示しているものと思われます。一度、長野県軽井沢町から着信したことがありますが、その際は「長野県小諸市」と表示されていました。そういう意味では03からの着信は市外局番のみで判別すると「東京(都)」としか表示のしようがないはずですが、何故か都庁の所在地だからなのか一律で「新宿区」まで表示されてしまいます。不便ですね。
市内局番の法則
では市内局番を使えばより細かいエリアを判別できるのではないかと思いがちですが、なかなかそうも行きません。ここの部分の管理も総務省が行っていて、その一覧は公開されていますが、どの番号をどの事業者に割り当てているかまでしか総務省としては管理していないことがわかります。
例えば「03」で見ると、大量にNTT東日本に割り当てられていますが、他にもNTTコミュニケーションズ・KDDI・ソフトバンクを始め数多くの事業者が割り当てを受けています。この番号をどのように自社サービスの中で使うかはそれぞれの事業者に任されています。
この内、NTT東西はそれぞれの収容局ごとに番号を割り振っていることが知られています。引っ越しの際も収容局が同じであれば、同じ電話番号を引き継ぐことができますが、同一市区町村内でも収容局が別になると電話番号変更を余儀なくされます。
ちょっと実例を挙げます。
タカラトミーが提供している「リカちゃんでんわ」2というサービスがあり、電話番号は「03-3604-2000」となっています。タカラトミーの本社は東京都葛飾区立石にありますが、サービスの源流を考えると青戸4丁目にある旧タカラ本社の青戸オフィスの方で受けているような気もします。
NTT東日本では収容局ごとのカバーエリアを公開していて、それによると青戸4丁目は亀有局であることがわかります。市内局番までで検索してみると、だいたい葛飾区の中部辺りの電話番号がヒットしてきます。
つまり「03-3604」という電話番号は葛飾区亀有周辺エリアであると言えそうです。
なお、NTT東日本では市内局番の一覧を開示していないそうです。面倒くせぇよ。
また収容局のエリアは必ずしも行政区画とは一致しません。先程のカバーエリアを見てみると、例えば前述の亀有局のエリアには足立区の一部が含まれていたり、他にも丸の内局は千代田区大手町や丸の内の一部の他に中央区日本橋辺りも含まれています。一方で、丸の内や大手町エリアの大半は大手町FS局だったり、同じビルの中でもフロアによって別の局舎という事例もあるようです。
NTT東日本発番の電話番号ですらこの状態です。他の事業者の場合はまたそれぞれですが、少なくともKDDIは収容局によって市内局番を分けるという割り当てをしていません。「03-6310」という番号を検索してみると、品川区・江東区・世田谷区など23区内の各所にこの市内局番が存在していることがわかります。つまりKDDI発番の番号の場合、市内局番から細かい地域を判別することは不可能です。
というわけで、市内局番による発信元地域判別は、ある程度できることもあるが必ずしも正確とは限らないし、発番する事業者によってはそもそも不可能と言えます。せめてNTT東西が一次情報として市内局番とエリアの割り当てを開示していれば、NTT発番の番号に関してはワンチャンあるかもしれません。
じゃあどうすりゃいいのさ
Apple様におかれましては、iPhoneでの着信時のエリア表示について
- 市外局番を元にMAをベースとした広域の表示に留める(以前の仕様)
- がんばって市内局番データベースのメンテナンスして、それを参照する
- KDDIの番号など例外は広域の表示のみにする
というどちらかにしていただきたいところ。市外局番のみでやっても地方の広域MAは必ずしも一致しないという例は今も昔もあるはずなので難しいとは思いますが、せめて利用者の多い「03を一律新宿区で表示」はどうにかしていただきたいと思います。あ、「大人の力でNTTから市内局番の一覧を提供してもらう」というのもいいかもしれません。
それから世論調査などで地域性が重要な電話を無差別にかける方は、せめてその番号リストが本当に対象地域とある程度でもマッチしているかはご確認いただきたいものですし、それでも例外や漏れは発生しうるということをご理解いただきたいものです。