LoginSignup
4
4

More than 1 year has passed since last update.

個人的なLinuxプロセス間通信の比較

Last updated at Posted at 2021-05-15

プロセスとスレッドの比較からの続き。
Linuxにはプロセス間通信の手段がいくつかある。
それぞれに特徴があり、それによって用途もある程度決まってくる。
そういうプロセス間の通信について個人的なまとめ。
ちなみにIPCの手段によってパフォーマンスや特性が異なる。
参考:プロセス間通信の比較 - ka2yanの日記

ファイル

えっ!?
はいファイルです。
ファイル、それはグローバルなリソース。
2つのプロセスがO_RDWRでファイルを奪いあえば排他制御もできる。
ファイルを2つ用意すれば双方向通信もできる。
フォーマットも自由に決められる。ストリームもパケットもOK。
欠点はストレージ経由のため遅く、IPCの取り決めが面倒なこと。
だが簡易的なIPCで良ければ十分実用になる。

パイプ

親子関係のプロセス間限定でメッセージを交換する手段。
ファイルディスクリプタ(fd)にバッファを関連付けて通信を行う。
通信はストリームデータでありデータ区切りはない。
単方向通信である。

名前つきパイプ

依存関係のない同一ホスト内のプロセス間で通信する手段。
パイプの場合はバッファをfdに結び付けて通信を行うが、
名前つきパイプはopen()したfdの先にバッファが作られる。
バッファはカーネルが用意する。単方向通信である。

fdは権限のあるディレクトリなら作成できるが、ホスト内限定。
通信はストリームデータでありデータ区切りはない。
性能は多分パイプと同じはずである(同じ仕組みのため)。
readerプロセスはCPUの浪費防止でブロッキングwaitしたいが
若干問題がある。

open()でブロッキングする場合

open()/close()のコンテキストスイッチングが遅い。
通信頻度が少なくオーバーヘッドが無視できるなら問題はない。

read()でブロッキングする場合

使ったことはないが、open()ブロッキングより高速なはずである。
ただしO_RDWRでopen()する必要があり、その場合の動作は未定義。
参考:FIFOについてもう少し

ネットワークソケット

TCP/UDPのソケットをopen()してネットワーク通信を行う。
ネットワーク越しになるためパフォーマンスはよくない。
その代わり同一ホストに限定されないプロセス間通信が可能。
ローカルネットワークでもインターネット越しでも使える。
双方向通信である。

Unixドメインソケット

依存関係のない同一ホスト内のプロセス間で通信する手段。
ネットワークソケットのIPアドレスをfdに置き換えたイメージ。
名前付きパイプより若干低速らしい。双方向通信である。

メッセージキュー(MQ)

Linux限定で説明するが、SystemVとPOSIXがある。
しかしPOSIX MQ推奨のため、SystemVは無視していいだろう。
メッセージは区切りがあり、固定サイズのデータ配列になる。
read()でブロッキングでき、パイプより高速である。
mq_timedreceive()を使えばタイムアウト監視も可能。
欠点はキューのパラメータがシステムファイルであること。
管理者権限で編集しないと要素数と要素サイズは変更不可。
ただしキューのブロッキング属性だけは動的に変更できる。
単方向通信である。

共有メモリ

プロセス間でページ単位のメモリを共有する。
仮想アドレスはプロセス別だが物理アドレスは同一である。
ただのメモリなので単方向でも双方向でも思うがままだ。
メモリのread/writeと同じなので高速でもある。
ただし本気で実装すると排他制御が結構面倒である。

セマフォ

プロセス間で整数値を共有し、排他するための機構。
情報交換するIPCとしての機構には向かない。

シグナル

ソフトウェア割り込み、という理解でいいと思う。
寝ているプロセスをシグナルで起こせるかは調べていない。
ソフトウェア割り込みなので通知そのものは高速である。
シグナルハンドラを実装しないとデフォルトハンドラが呼ばれる。
シグナルハンドラは非同期シグナル安全なAPIしか使えない。
シグナルを受信したら通知のみ行い、メイン側で対応すべきだ。
共有メモリと組み合わせたIPCが実現できそうである。

4
4
0

Register as a new user and use Qiita more conveniently

  1. You get articles that match your needs
  2. You can efficiently read back useful information
  3. You can use dark theme
What you can do with signing up
4
4