概要
時代の波に生まれ、時代の波に消えた画像形式についてなど。
長い前置き(Skip推奨)
君は知っているか?
駅周辺に電話ボックスがあふれていたことを。
通信インフラの速度が300bps(bit/sec)の時代があったことを。
ポケベルというデバイスが女子高生に大流行したことを。
あまつさえドラマや歌謡曲までできてしまったことを。
そんな、平成生まれが知らないかもしれない画像形式のお話。
時は1980年代後半
国内に限ると、まだインターネットワークは存在せず、アーリーアダプターが
自ら立ち上げたBBSホスト(当時パソコン通信と呼ばれた)に、それを知った
アーリーアダプターが電話機に音響カプラーをつけて、ダイヤルアップ接続で
文字ベースのコミュニケーションを楽しんでいた。
1990年代に入るとPCの性能も向上し、通信デバイスもアナログモデムへ進歩
したことに伴い(2400bps~9600bps)画像を楽しむ文化が芽生え始める。
PCと通信環境と時代の波間に生まれては消えていった画像形式の一部を紹介。
NAPLPS
いやそれプロトコルだから!とセルフ突っ込み。
通信環境が極めて貧弱な時代、帯域を補って画像を表示させる苦肉の策。
サーバが描画コマンドを送り、クライアント側で描画を行う。少ない帯域で
簡単な画像が表示できた。初期のNIFTY-Serveで使われたらしい。
現物の画像は見たことがない。
gif
いやそれ有名だから!ってそれはもういい。
インターネット黎明期に絶大な人気を誇ったが、特許で脅したばっかりに
ネット上から締め出しを食らった悲しいフォーマット。すでに特許切れと
なっているが、失った信用は取り戻せていないようである。
maki/mag
PC-9801が絶大な人気を誇った時代、640x400pixel パレット16色の環境
に特化して生み出されたフォーマット。woody-rinn氏によって開発。
横4ピクセル(4bit x 4ピクセル)を1つのマクロピクセルとして、同じ
マクロピクセルが出てきたら相対座標で符号化する。面白いのは経験的に
同じマクロピクセルが出現しやすい相対座標を狙い撃ちにするところ。
makiは640x400/16色固定だったが、magは解像度制限なく256色に対応。
残念ながら表示ツールがMS-DOS用ばっかりで、Windows10で使える
ものはSusie 32bit版(WindowsXP用)しかない。しかもmakiプラグイン
で動くものが存在せず、magしか表示できない。
手持ちのmaki画像は二度と鑑賞できないデータになってしまった。
ちなみにPC-9801 MS-DOS6用画像ローダーは、640x800のmag画像を
スクロール表示することができた。GUIに乏しい時代の遺産である。
Windowsがハードウェアの垣根を壊した結果、PC-9801は急速に衰退を
続けて消滅。AT互換と高解像度多色が時代の流れとなる。
Pi/PIC
当時お大臣PCであったX68000を使うやなぎさわ氏考案の可逆圧縮画像。
256色に対応。基本的にX68000のスペックにあわせて開発されたようだ。
最後に
お気に入りの画像がマイナーなフォーマットの場合、できるだけ早く
メジャーフォーマット(BMP/可逆PNG/可逆Tiffなど)に変換しておく
ほうが安心である。