はじめに
数年前に導入したNaoPi NEO / NaoPi NEO2 のNASキットがだいぶバージョンが古くなってしまったのでバージョンアップをした。それなりにはまってしまったのでいずれまとめた記事を書くつもりだが、前提条件としてNASキットが今どのような状況にあるのかを別記事としてまとめた。
NanoPi NEO / NanoPi NEO2 + NASケースキットとは
現在(正確にはコロナ禍以降の半導体不足や大幅な円安による値上げ前)、安価で性能そこそこ、コンパクトで低消費電力なNASを構築しようとする時の一番メジャーな方法はRaspbery piにUSBハードディスクを接続する方法だろう。
Rasberry piを使う方法以外にもFRIENDLYARM社(中国)のSBC(Single Board Computer)の一種であるNanoPi NEOやNanoPi NEO2に専用のNASキットを組み合わせる方法がある。数年前にインプレス社からネット記事が出たので知っている人や購入した人も多いと思う。
- 「小型ボードコンピュータ、NanoPiを使った自作NASで遊ぶ」(2018年4月5日掲載)
- 「40×40mmの極小ボード「NanoPi NEO2」、秋月電子通商で税込2,400円」(2018年4月5日掲載)
簡単に説明すればHWとしてはNanoPi NEO / NanoPi NEO2のNAS構築キット(ケース付き)でストレージにはmicroSD(ブート用)と2.5インチHDD/SSD(データ用)を使用する。SWレベルではOSがdebian
でNAS構築ソフトウェアとしてOpenMediaVault(OMV)
を使用している。OMVはWeb管理ツール(ラッパーUI)で、例えばWindows PCとのやりとりは実際はSAMBA
が使われている。
このNASキットの個人的に感じるメリットは以下の通り。
-
そこそこの性能
(NanoPi NEO2のIO性能はRaspberry pi 3と同等レベル。なお、当時Rasberry pi 4は未発売) - USBケーブルを使わずに専用ボードで直接HDD/SSDと接続するため組み立ててしまえば市販のNASと同様な外観。
USB(ケーブル)によるトラブルとも無縁
-
安価
(HDD/SSD抜きで5,000円弱(当時)。12VACアダプタ1(1,000円程度)、microSDカード(8GB以上)、コイン電池(CR2032)も別途必要) -
入手が容易
(国内通販でも秋葉原でも購入可能。店舗購入なら送料いらず) -
RTC(リアルタイムクロック)がついている
ので、再起動の度に時刻合わせをする必要がない。(Raspberry piにはRTCはついていない。外付けモジュールは一応ある) - 無線モジュールがついていないので
技適を気にする必要がない
(自分は有線での利用を想定) - このNASキット以外にSBCのNASキット製品がほぼない2
反対に個人的に感じるデメリットは以下のとおり。
-
大容量安価な3.5インチHDDを使えない
(端子は2.5インチと同じなのでケースをどうにかすれば使えそう。ただし電源容量不足が発生する可能性はある)
現在(2022/12)の入手性と価格
NanoPi NEOはLTSとして現在でも販売されているが、NanoPi NEO2はディスコン(販売終了)になってしまったようだ。少し前ならNanoPi NEO2もメーカー直販なら購入できたと記憶している。
また、安価であることが大きなメリットだったが以前に比べて大幅に値上げがされてしまっている。
価格(税込) (秋月電子) (2018年頃) |
価格(税込) (秋月電子) (2019年頃) |
価格(税込) (秋月電子) (2022年12月 現在) |
メーカー直販価格 (送料3、税金等除く) (2022年12月11日現在) |
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NanoPi NEO (512M RAM) |
1,680円 | 2,280円 | 3,580円 (112301) |
18$4(2,520円5) |
NanoPi NEO2 | 2,400円 | 3,240円 | 取扱なし (M-12302) |
取扱なし |
NAS キット | 2,180円 | 2,180円 | 2,180円 (114489)6 |
12.99$(セール価格)(1,819円5) 16.99$(通常価格)(2,379円5) |
まとめ
NanoPi NEO2がディスコンになってしまったようなので、わざわざ性能の低い7NanoPi NEOを新たに購入してまでNASキットを購入するのはお勧めしない。
NanoPi NEOやNanoPi NEO2をすでに持っている場合は、今の値段で入手可能なうちにNASキットを購入しておくのもいいだろう8。人は買えなくなるとなぜか欲しくなるものである。
なお、以下の点には注意が必要
- NASキットは特定のバージョンのNanoPi NEO / NanoPi NEO2にのみ対応している(バージョンによってピンの位置が少し異なるらしい)
- 現在秋月電子で販売しているNASキットのバックパネルはNanoPi NEO2には対応していない(アルミ製のバックパネルを削って穴を合わせるとか、プラ板その他で自作する分には大丈夫なはず)
(追記)NanoPi NEO / NanoPi NEO2 以外の選択肢(2022/12/13現在)
NASキットは本来NanoPi NEO、NanoPi NEO2にのみ対応しているが、他のNanoPi NEOシリーズで利用できないか調べてみた。
まず、現在購入可能なNASキット(1-bay NAS Kit v1.2 for NanoPi NEO&NEO2)に対応しているのは
- NanoPi NEO V1.31
- NanoPi NEO V1.4
- NanoPi NEO2 V1.1
で、主にピン互換の観点から他の選択肢を調べてみた。なお、物理的な形状やバックプレートの対応は考慮していない。最悪ケーブル接続して、ケースも別途用意すれば使えるかもしれない。
また、NanoPi NEO/Nano Pi NEO2が要求する5V/2Aよりもアンペア数が必要な物は注意が必要だろう。
(電源はACアダプターからNASキットの基板を介してNanoPi NEO/Nano Pi NEO2などのSBCに電源が供給されるため)
サイズ | RAM | 電源 要求 (5V) |
メーカー直販価格 (送料3、税金等除く) (2022年12月13日現在) |
NAS キット 接続 |
Armbian 対応 |
備考 | ||
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NanoPi NEO | 40 x 40mm | V1.4 | 256MB 512MB |
2A | 16$(256MB) 18$(512MB) |
〇 | 〇 | |
NanoPi NEO2 | 40 x 40mm | V1.1 | 512MB | 2A | - | 〇 | 〇 | |
NanoPi NEO3 | 48 x 48mm | - | 1GB 2GB |
1A | 32$(1GB) 36$(2GB) |
△? | 〇 | 基板サイズもピン配置も違う |
NanoPi NEO4 | 60 x 45 mm | - | 1GB | 3A | 50$ | △? | △ | 基板サイズもピン配置も違う 電源容量注意 |
NanoPi NEO Plus2 | 40 x 52mm | V2.0 | 1GB | 2A | - | △ | 〇 | WiFiの技適対応不明 |
NanoPi NEO Core | 40 x 40mm | - | 512MB | 2A | $24 | △ | 〇 | イーサネットポートなし (外付け可能) |
NanoPi NEO Core2 | 40 x 40mm | - | 512MB 1GB |
2A | - | △ | △ | イーサネットポートなし (外付け可能) |
NanoPi NEO Air | 40 x 40mm | V1.1 | 512MB | 2A | $26 | △ | △ | イーサネットポートなし WiFiの技適対応不明 |
【Armbian対応9】
〇:対応(イメージ配布あり)、△:コミュニティーによるサポート(イメージ配布なし)、✕:非対応
【NASキット接続】
〇:公式対応、△:接続可能性あり、✕:接続不可
NASキットの回路図を見る限りでは、GPIOの24ピンとUSB2(USB2.0)を接続できれば動作可能に見える。NASキットに付属しているUSB2.0 Type-AポートはUSB1に単純結線されているようだ。
結局NASキットとは内部的にUSB2.0で接続されているので、
入手性や実用性を考えると、NanoPi NEO / NanoPi NEO2 以外の選択肢はほぼなさそう。
(ヘッダピンで直接接続できないなら、USBケーブルで接続するのとあまり変わりがない)
それにUSB3.0 I/Fがあるマイコン(Raspberry pi 4 Model B、等)ならUSB3.0 ハードディスクをUSBケーブルで接続した方が性能も出るだろう。
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必要アンペア数は不明(以前情報を探したが見つからなかった)。なお、メーカーは12V/2AのACアダプタをセット販売している ↩
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ROCK64/PINE64のNASキットが出るとか出ないとかそんな時だっと記憶している ↩
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以前はNanoPi NEOとNano Pi NEO2の両方に対応していたが、現在はNanoPi NEO専用(NanoPi NEO用とNanoPi NEO2用ではバックカバーの穴の位置が異なる) ↩
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NanoPi NEOがCortex-A7(32ビット)の4コアで10/100Mbpsイーサネットのみ対応。NanoPi NEO2がCortex-A53(64ビット)の4コアで1Gbpsイーサネットにも対応。メーカーからはIO性能の比較は公表されている。CPU性能の比較は見つからなかったが、シェル操作時でも体感的に明らかに違う。 ↩
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秋月電子の現在(2022/12/11)の在庫量はAAAで「弊社(秋月電子のこと)販売量のおよそ4ヶ月分を超える量の在庫がある商品です。」。通販を含めた全体の在庫数は不明だが、店舗の在庫は秋葉原店に2つだけ、八潮店に1つだけになっている。2019年頃は秋月電子以外の秋葉原の店舗でも購入できたが、国内は通販も含めて秋月電子が一番安価だったと記憶している。 ↩
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詳しくはArmbianのサポート定義を参照。NASキットを利用するにはmicroSDにArmbianをインストールして、Armbian上からOMVをインストールするのが簡単 ↩