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QMファンネルにおけるTE、SET/PE、QAのスコープ

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1. はじめに

品質を加速させるために、テスターを増やす前から考えるべきQMファンネルの話(3D版)でQMファンネルのQMが次のように説明されています。

  • QM(品質マネジメント)= TE + SET/PE + QA
  • どれか一つだけじゃなくて、3つを理解できて初めてちゃんとQMができる

そして「3つのスペシャリティを全て分かっている」プロモーターロールとしてQMプロモーターがあります。

  • プロモーターロールは、価値観を提示し、方向性やビジョンを示し、組織全体に推進していく役割
  • TEの価値観は価値重視、PEの価値観はエンジニアリング重視、QAの価値観は組織能力重視

QMファンネルはスプリット、インプロセス、コーチ、コンサルタント/サービス、プロモーターの5種類のロールがあり、もともとスコープが広いQAだけでなくTEやSET/PEも同様にスコープが広いと考えられます。また、プロモーターの役割はISO 9000でいえばトップマネジメント相当といえます。

そこでISO 9000の品質マネジメントの説明と見比べてみます。

QMファンネルとISO 9000には、QMファンネルのベースとなっているTQMが後にJIS Q 9005となり、そのJIS Q 9005がJIS Q 9000を引用規格としている関係があります。

2. ISO 9000の品質マネジメント

ISO 9000:2015に対応するJIS規格JIS Q 9000:2015 品質マネジメントシステム―基本及び用語から品質マネジメントの説明を引用します。

3.3.4
品質マネジメント(quality management)
品質(3.6.2)に関するマネジメント(3.3.3)。
注記 品質マネジメントには,品質方針(3.5.9)及び品質目標(3.7.2)の設定,並びに品質計画(3.3.5),品質保証(3.3.6),品質管理(3.3.7)及び品質改善(3.3.8)を通じてこれらの品質目標を達成するためのプロセス(3.4.1)が含まれ得る。

注記は一つの文章に「及び、並びに、及び」が登場してちょっと分かりにくいですね。「及び」「並びに」はその使い方がJIS Z 8301:2019 規格票の様式及び作成方法の「附属書 H(規定)文章の書き方並びに用字,用語,記述符号及び数字」で規定されていて、図解すると次のようになります。

品質マネジメントには、以下が含まれ得る:
└a)品質方針(3.5.9)及び品質目標(3.7.2)の設定
└b)以下を通じてこれらの品質目標を達成するためのプロセス(3.4.1)
 └品質計画(3.3.5)
 └品質保証(3.3.6)
 └品質管理(3.3.7)
  及び
 └品質改善(3.3.8)
 └a)とb)は「並びに」で結ばれている

3. QMファンネルの品質マネジメント

QM(品質マネジメント)= TE + SET/PE + QAの定義から、a)ISO 9000の品質マネジメントの図解、b)その図にQMファンネルのTE、SET/PE、QAを重ねたもの、を以下に示します。

品質マネジメントのモデル

品質方針は「トップマネジメントによって正式に表明された品質に関する組織の意図及び方向付け」、品質目標は「品質に関する達成すべき結果」であり、プロモーターの役割(価値観を提示し、方向性やビジョンを示し、組織全体に推進していく役割)は①品質方針を示すこと、②品質目標を達成すること、といえます。

また、一般にテストは品質管理の一部と認識されていますが

1.2.2 テストと品質保証(QA)
「テスト」と「品質保証」(QA)という用語を同じように使う人が多くいる。しかし、テストと品質保証は同じではない。テストは品質コントロール(QC)の形式の1つである。
出典:ISTQBテスト技術者資格制度Foundation Levelシラバス日本語版 Version 2023V4.0.J02

QMファンネルのTEは品質方針から品質改善までカバーするのが特徴といえます。

4. QMプロモーター

QMファンネルのプロモーターロールは「○○や△△の方向性やビジョンを示し、組織全体に□□を推進していく役割(自分で手を出してはいけない)」という構造をしています。

  • TEプロモーター:価値重視や検証技術の方向性やビジョンを示し、組織全体に検証を推進していく役割(自分で手を出してはいけない)
  • PEプロモーター:エンジニアリング重視や自動化・デジタル化技術の方向性やビジョンを示し、組織全体に自動化・デジタル化を推進していく役割(自分で手を出してはいけない)
  • QAプロモーター:組織能力重視やQAの方向性やビジョンを示し、組織全体にQAを推進していく役割(自分で手を出してはいけない)

プロモーターは「自分で手を出してる時間を、QA全体の戦略や組織設計などに回して欲しい1」というのはQAファンネルから一貫しています。

そしてTE、PE、QAのスペシャリティを全て分かっているプロモーターとして「QMプロモーター」が登場します。TE、PE、QAの3人の異なるプロモーターがいるというよりも1人のQMプロモーターがTE、PE、QAのプロモーターを兼ねていてTE、PE、QAの価値観やバランスを考慮した品質方針や品質目標、品質計画を打ち出すのが役割と考えるとよいように思います。

5. おわりに

QAエンジニアは品質施策を立案して実施する機会が何かとありますがQMファンネルにISO 9000の品質マネジメントの知見を取り入れて次のような工夫をするのはQMプロモーターに限らず有用と思います。

  • 品質施策について社是やMVVといった上位の方針と整合する方針を立てる
  • TE、PE、QAの価値観(価値、エンジニアリング、組織能力)やバランスを反映した目標や計画を立てる
  • ハードウェアのエンジニアなどQMファンネルになじみのないメンバーにはISO 9000のモデルで説明する

これは筆者の失敗例ですが、ある品質施策でデータの収集・分析が手動で手間がかかる問題がありました。QMファンネルでいえばTE、PE、QAのバランスが悪くデジタルチョコ停を招いていたといえ、今思うとプロダクト品質だけでなくプロセス品質としてデータの収集・分析の自動化も目標に入れておけばよかったと思います。

なお、プロモーターは自分で手を出してはいけないとありますが担当レベルで品質施策を推進する場合はむしろ自分で手を動かしながらスキルやノウハウを身に着けたり自ら状況の変化を察知して施策の軌道修正をしたりするほうが自然と思います。

参考:ISO 9000の品質マネジメント

JIS Q 9005:2015より品質マネジメントの構成要素を以下に引用します。

3.5.8
方針(policy)
<組織>トップマネジメント(3.1.1)によって正式に表明された組織(3.2.1)の意図及び方向付け。

3.5.9
品質方針(quality policy)
品質(3.6.2)に関する方針(3.5.8)。
注記1 一般に品質方針は,組織(3.2.1)の全体的な方針と整合しており,組織のビジョン(3.5.10)及び使命(3.5.11)と密接に関連付けることができ,品質目標(3.7.2)を設定するための枠組みを提供する。
注記2 この規格に記載した品質マネジメントの原則は,品質方針を設定するための基礎となり得る。

3.5.10
ビジョン(vision)
<組織>トップマネジメント(3.1.1)によって表明された,組織(3.2.1)がどのようになりたいかについての願望。

3.5.11
使命(mission)
<組織>トップマネジメント(3.1.1)によって表明された,組織(3.2.1)の存在目的。

3.7.1
目標(objective)
達成すべき結果。

3.7.2
品質目標(quality objective)
品質(3.6.2)に関する目標(3.7.1)。
注記1 品質目標は,通常,組織(3.2.1)の品質方針(3.5.9)に基づいている。
注記2 品質目標は,通常,組織(3.2.1)内の関連する機能,階層及びプロセス(3.4.1)に対して規定される。

3.3.5
品質計画(quality planning)
品質目標(3.7.2)を設定すること及び必要な運用プロセス(3.4.1)を規定すること,並びにその品質目標を達成するための関連する資源に焦点を合わせた品質マネジメント(3.3.4)の一部。
注記 品質計画書(3.8.9)の作成が,品質計画の一部となる場合がある。

3.3.6
品質保証(quality assurance)
品質要求事項(3.6.5)が満たされるという確信を与えることに焦点を合わせた品質マネジメント(3.3.4)の一部。

3.3.7
品質管理(quality control)
品質要求事項(3.6.5)を満たすことに焦点を合わせた品質マネジメント(3.3.4)の一部。

3.3.8
品質改善(quality improvement)
品質要求事項(3.6.5)を満たす能力を高めることに焦点を合わせた品質マネジメント(3.3.4)の一部。
注記 品質要求事項は,有効性(3.7.11),効率(3.7.10),トレーサビリティ(3.6.13)などの側面に関連し得る。

  1. JaSST’21 Tokyo セッションB8 新しい品質保証のかたちを目指して~君の心に「ファンネル」はあるか?~質問回答対応表

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