1. はじめに
製造業の品質管理とソフトウェアのQAの続きです。
製造業の品質管理をソフトウェア開発の参考にするなら設計工程も込みで参考にするとよいでしょう。
2. 製造業の設計工程の特徴
2.1 試作を繰り返す
こちらは株式会社Shiftallの公式ブログ記事ですが、「IoT設計製造のテンプレ・ガントチャート~Shiftall流、設計製造のポイントを添えて」にてEVT1 → EVT2 → DVT → PVT → MP(量産)と数回の試作を経て量産に至ることが示されています。また、ソフトウェアはEVT1用ソフト、EVT2用ソフト、DVT用ソフト、工場検査モード実装、工場検査治具用ソフト、PVT/量産用ソフトと段階的に開発しています。
製造業の設計工程は試作を繰り返して完成度を上げていくのが特徴です。また、段階的にソフトウェアを開発してハードウェアチームや工場へリリースするのはアジャイルぽくもあります。
2.2 現実に合わせる
かつて筆者がプログラマだった当時、ハードウェアのエンジニアからこれとこのレジスタは値をいろいろ変えて検討したいから簡単に変えられるようにしてほしいとリクエストされて機能を追加したりしていました。
試作品を手にしたエンジニアが設計、評価する過程であれをもっとよく見てみたい、これはパラメータをいろいろ変えて試して良い方を採用したいというのはごく当たり前のことです。厳密なウォーターフォールであればそういったリクエストは要件定義の時点でなされるはずですがそれは無理な話というもの。むしろ三現主義、現場、現物、現実に合わせて課題解決を図ります。
3. アジャイル開発に取り入れられる製造業のプラクティス
製造業の設計工程は大きなくくりでいえばウォーターフォールですがその対立項として登場するアジャイル開発は製造業のプラクティスをいろいろと取り入れているようです123。「「アジャイル」を語る上で「トヨタ生産方式」が欠かせない理由(大越章司)」では次の製造業のプラクティスが紹介されています。
- ポカヨケ、ムダの排除
- 自行程完結
- 見える化
- カイゼン、アンドン
4. おわりに
製造業の設計工程はウォーターフォールといっても教条的なものではなく、試作を繰り返して段階的に開発を行い、現実に合わせて柔軟に対応します。
製造業のプラクティスは必ずしもソフトウェア開発に応用できるとは限らないものの、例えばパブリックベータ版をリリースして市場の反応を認識し必要に応じて修正してから正式版をリリースするのは製造業の三現主義をソフトウェア開発へ応用したものと言えます。
製造業の品質管理をソフトウェア開発の参考にするなら製造工程だけでなく設計工程も含めて参考にするのがおススメです。