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「ロジカルシンキングが重要」、ではどうすればそのスキルを伸ばせるのですか?

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はじめに

皆さん新入社員研修などで「ロジカルシンキング」の研修を受けたことがあるかと思います。「社会人として自分の意見を論理的に説明できるスキルは重要です」、という形で説明されることも多いかと思います。
ロジカルシンキングのスキルが重要であるということに意を唱えるつもりはありませんが、「結局ロジカルシンキングって何?」、「ツールの使い方は理解できたけれども、ツールが使えること=ロジカルシンキングなのか?」、と疑問に思ったことはないでしょうか。

本投稿ではロジカルシンキングという言葉についての違和感について再度見つめなおし、本当に社会人に求められるスキルについて再考したいと思います。

そもそもロジカルシンキングとは?

ロジカルシンキングを日本語にすると「論理的思考」となり、wikipediaによると「一貫していて筋が通っている考え方、あるいは説明の仕方のこと」とあります。

「ロジカルシンキング(論理的思考)」の背景には「相手」という隠れた要素がとても重要になってきます。相手がいるから、相手に正しく自分の意見を伝えるために論理的思考が必要である、と考えられていることが多いです。

相手に自分の意見を正しく伝えたい、そのためには自分の話には以下の要素が必要になります。(これがすべてではなく一例)

  • 体系的に整理されている
  • 一貫性がある
  • シンプル、明確である
  • 論理に矛盾がない

図1:
Snag_9197e38.png

では、図1の要素でどの部分が論理的思考に該当するのでしょうか?
wikipediaの定義では「一貫していて筋が通っている考え方、あるいは説明の仕方のこと」とありましたので、「一貫性がある」の部分だけでしょうか?
実際のユースケースでは、4つすべてに対して論理的思考として説明されることが多いように思います。

図2:
Snag_911af70.png

つまり、「ロジカルシンキング(論理的思考)」という単語自体が文脈によって意味が変わるあいまいな単語であるため、「ロジカルシンキングのスキルを伸ばす」という文章に対しても結局どうすればいいのか?という疑問が湧くわけです。

では、「ロジカルシンキング」を「相手に自分の意見を正しく伝えるための話の組み立て方」という定義でとらえるとどうでしょうか。
つまり、「ロジカルシンキングを鍛える」、という言葉ではなく「自分の意見を体系的に整理するスキルを鍛える」「自分の意見を一貫性を持った形に組み立てるスキルを鍛える」「自分の意見をシンプルに整理するスキルを鍛える」「自分の意見を矛盾なく組み立てるスキルを鍛える」という説明の方がより理解できるかと思います。

この4つのスキルをどう伸ばしていくのか、について詳細に説明していこうと思います。

自分の意見を体系的に整理するスキルを鍛える

体系的とは全体が網羅されており、俯瞰して物事をとらえることができている、ということです。
例えば、新入社員の教育カリキュラムを作る場合を考えてみましょう。
まず、自分たちの業務の技術スタックを洗い出します、どういった知識が必要なのか、どういったスキルが必要なのか、その中から取捨選択をして教育カリキュラムを作っていくわけですね。
また、ロードマップを作るのもいいと思います。
教育カリキュラム終了後には皆さんはこういった知識を得ることができ、実現場で活躍できる人材になります、といったイメージです。

では、どうやったらこのスキルを伸ばすことができるのか。
物事を体系的にとらえるスキルは一長一短で獲得できるスキルではありません。
その分野の専門的な知識が必要になりますが、全体的な流れとしては以下かと思います。

  1. 要素を洗い出す
  2. 矛盾が無いように要素を整理する

例えば、新入社員の教育カリキュラムを作る場合を考えます。
要素を洗い出す段階で以下の要素が出たとします。

  • 社会人マナー(コミュニケーション)
  • IT基礎
  • Git
  • プログラミング言語(Python)
  • クラウド基礎(AWS)

カリキュラムの順番として、「プログラミング言語⇒社会人マナー⇒Git⇒クラウド基礎⇒IT基礎」として組み立てたとします。はい、明らかに順番がおかしいですよね。

「社会人マナー」の研修で「コミュニケーションの円滑な取り方」を先に学ぶことで、以降の研修でより効率的なコミュニケーションをとることができます。次に「IT基礎研修」をすることで、メンバーそれぞれのIT知識の差を確認でき、次の研修でのサポート方法などに生かすことができます。

つまり、こういう理由でこういう順番で組み立てています、というのが相手に納得できる形で整理することができるスキル が、「自分の意見を体系的に整理するスキル」です。
このスキルを伸ばすためには実際に数をこなして経験値をためていくしかありませんので、業務の中でチャレンジしていってください。

自分の意見を一貫性を持った形に組み立てるスキルを鍛える

一貫性とは、**「全体の方針に沿っていること」**です。
例えば、新入社員の教育カリキュラムの目的を「カリキュラム終了後にどの現場でも必要とされる最低限の知識を有している状態になる」と定義している場合を考えます。
カリキュラム内に「Linuxファイアーウォールについて」という講義が入っている場合、どう思いますか?確かに一部の部署ではこの知識はとても重要かもしれませんが、全体方針の「どの現場でも必要とされる知識」の方針に沿っていません。
これはカリキュラム全体を見た時に一貫性を保っていない状態(粒度がそろっていないとも)となります。

つまり、一貫性を保っているとは自分の主張の軸を決めて、自分の主張全体がその軸に沿った内容になっているのか、を考えて主張を組み立てるスキルになります。

このスキルも結局トライアンドエラーで伸ばしていくしかないのですが、重要なのは相手からのフィードバック です。
結局のところ自分の意見が相手にとって一貫した内容になっているかは自分ではわかりません。 なので、自分の意見に対して常にフィードバックをもらえるような関係、フィードバックをもらえるような場を設定することが重要になってきます。

自分の意見をシンプルに整理するスキルを鍛える

これは物事の本質を突く、というスキルかと思います。よく結論から先に述べよ、という格言があるかと思いますが、これに通ずるものです。

例えば、新入社員のカリキュラムに「キーボードタイピング基礎」を入れる必要があると感じたとします。それを上司に伝える場合を考えてみます。

悪い例:
「教育カリキュラムにキーボードタイピング基礎を入れる必要があると感じています、最近の若者はスマートフォンの利用が多く、実際のキーボードの利用になれてない人が多いです。タイピングはどの業務での必要なスキルであるため、タイピングの講習を入れることが必要だと考えています」

いい例:
「教育カリキュラムにキーボードタイピング基礎を入れることを提案します。今年の新入社員にアンケートを取ったところ、タイピングに不安を覚えているメンバーが8割を超えていました。ヒアリングしたところそもそもPCを持っておらず、普段からキーボードを触る機会が少なく、いきなり実業務でキーボードを触る前に何らかの講習があると嬉しいという意見がありました。しかし、2割のメンバーはIT系の学部出身のため、ブラインドタイピングも余裕ということでしたので、キーボードタイピング講習は参加任意のオプションの講習として入れることを検討します。タイピング講習の最終目的としては教育カリキュラム全体の終了後にはブラインドタッチができるようになることを目指します」

シンプルとは単に文章が短い方が良い という意味ではありません。必要な要素がしっかりと端的に含まれている、という意味です。

最近の若者はスマートフォンの利用が多く、実際のキーボードの利用になれてない人が多いです。

⇒この文章はシンプルに見えて内容が曖昧です、文章に対していろいろな疑問が湧きおこります。これは一般的な話をしているのか?それとも今回の新入社員に対してのことを言っているの?

タイピングはどの業務での必要なスキルであるため、タイピングの講習を入れることが必要だと考えています

⇒この文章自体に疑問はありませんが、講習のゴールとして最終的にどの程度のスキルを目指すのか?という疑問があります。

では、必要な要素を端的に含めるためにはどうしたらいいのか、これもトライアンドエラーにつきます。ただし、「相手目線で考える」「最終的なゴールを意識する」 ということは忘れないでください。
例えば、上記の例の場合上司は「講義を追加することでカリキュラム終了までの時間が延びる、すると配属までの時間が延びるので、売り上げなどに影響する」という考えがあります。この意見を踏まえて、売り上げに影響する部分を差し置いてもこの講義を入れるべきです、理由は○○だからです、という考えを持つ必要があります。
また、最終的なゴールとして「カリキュラム終了後にどの現場でも必要とされる最低限の知識を有している状態になる」としていた場合、タイピング基礎が無かった場合どうなるのか、現場に配属された後、タイピングで苦労して本質的な業務や学習に支障が出る場合、そもそも教育カリキュラムのゴールを達成できていません。

「自分の意見を矛盾なく組み立てるスキルを鍛える」

矛盾がない、これもかなり重要なスキルです。ビジネスにおいて矛盾があるような話をすると信用を失いかねません。「さっきこういう話をして、今はこう言ってますけれどもそれっておかしくないですか?」とクライアントから突っ込まれた時には信用がた落ちです。

また、教育カリキュラムの例を使います。
「タイピング基礎をカリキュラムに追加します、これで新入社員の不安を解消して実業務にスムーズに入ることができるサポートをします。。。(いろいろな説明)。。今回の研修では少し厳しめの課題を多く出します。社会人として学生とは違い責任感の大きさを実感してもらうという意図があります」
⇒「新入社員側として、課題厳しいと感じて実際の業務やっていけるのかな?という不安は持たないのか?一部では不安を解消するような講義があり、一方で不安を感じるような内容もあって結局どこを目指しているの?」

こういった話は結構よくあるのではないかと思います。特に意見が長くなる場合、全体を見返したときに論理が矛盾している場合ですね。一見するとすべて最終的なゴールを目指しているように見えて、別の観点から見ると論理が矛盾しているという。

論理に矛盾が無いように組み立てるためには、これまた経験を積むしかありません。ただ、一つの観点で見るのではなく、複数の観点で物事を見るように気を付けることが重要 です。
自分で意見を出した場合、それは必ずと言っていいほど自分の一方向の見方でしか考えられていません
自分がこれは必要だろう、こうしたらいいだろう、と考えた場合、まずはその逆の意見(批判)を考えてください。
「タイピング基礎を追加するべき」と考えたならば、反対意見を考えてください。「追加する場合の工数はどこで回収するの?」「なぜ追加するべきと考えたのか理由は?」「追加する場合のデメリットについては考えているの?」などです。
反対意見から自分の論理の矛盾を見つけることができる場合もありますが、やはりどこまで行っても自分の狭い視野での考えになるので、自分の視野を広げるには自分以外の人のサポートが必要 です。相談したり、フィードバックをもらう場を設定して、積極的に他の意見を取り入れる姿勢も必要です。

最後に

本文章が「ロジカルシンキングを鍛えるのはどうしたらいいのか?」の問いに対して少しでもヒントとなる内容が含まれていれば幸いです。
ただ、本文章も結局のところ「経験をつめ!」「トライアンドエラーや!」としか書いてないので、具体的にどうすればいいのか、についての回答は含まれていないかもしれません。
ただ、あるスキルを自分なりに分解してみて、それぞれの要素について自分なりにどうしたらいいのか、具体的なアクションに落とし込む手助けにはなるかなと思っています。

少しでも皆さんの参考になれば幸いです。(^^♪

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