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一般システム思考入門読んだんで、システム思考のさわりを紹介する

Last updated at Posted at 2021-12-05

前振り

どーもどーも、転職会議事業部でzoom背景芸人エンジニアをやっている落合です。
去年のアドベントカレンダーでは記事の体裁を借りた謝罪広告を掲載した結果、自分比最高のLGTM数をもらって「いっそ殺せ…」ってなったので、今年のアドベントカレンダーでは本番環境をぶっ飛ばした以外の話をしたいと思います(今年も本番環境をぶっ飛ばさなかったとは言っていない)。

何を書くか迷っていたのですが、実は先月までジェラルド・M・ワインバーグという人が書いた「一般システム思考入門」という本を読んで、内容を解説するという勉強会を週1でやっていたので、それに絡んだ話をしてお茶を濁すシステム思考に興味がある人や、名前だけは聞いたことがあるという人向けに、システム思考を学ぶご利益やシステム思考のさわりの部分を紹介したいと思います。

とはいえ、私も「システム思考完全に理解した」には程遠い人間ですので、私の理解が間違っているところや、他の人と解釈が異なる点が複数あるかもしれません。そこら辺は、あくまで私の解釈ということで1つ生暖かい目でご笑覧ください。

システム思考とは

システム思考という単語だけ知っている人は、もしかしたらコンピューター・システムに関連するなんらかの思考法なのかな?と思われるかもしれません。ただ、実際はシステム思考のシステムとはもっと一般的(抽象的)なシステムのことを指しています。ここでシステムは、「全体を構成する要素」と「要素に分けると見られなくなる性質を持つ関係性」からなる要素の集まりだと思っていただければよいと思います。

このような考え方をすると、私たちの身の回りにはシステムとみなせるものがたくさんあることがわかると思います。
例えば、私が所属する転職会議事業部は、営業を担当する部署、開発を担当する部署、カスタマーサポートを担当する部署etc..といった複数の部署と、部署同士のコミュニケーションのライン(関係性)から構築されているシステムと見なすことができます。もちろん、リブセンスという会社をシステムと見なすこともできますし、なんらかの組織に所属している人は、みなさんが所属している組織や部署を1つのシステムとして見なすこともできます。また、人間1人ひとりも、臓器やその他の組織などの要素から構成され、それぞれの要素が協調することで初めて1つの生命としての性質を表すのでシステムとみなせます。

さて、システムというのはシステムを構成する要素が増えて要素同士の関係性や関係性がもたらす性質が複雑になればなるほど、全体像を把握することが難しくなります。また、システムの重要な性質はシステムの構成要素単体ではなく、要素同士の関連性・相互作用によってもたらされていたり、要素同士が密接に関連しているが故に、システムの構成する特定の要素一つを変化させることができない(必ず変化の影響が他の要素にも波及する)といった性質を持ちます。このため、ロジカル・シンキングのような物事の全体像を細かい要素に抜け漏れなく分解していくことで明らかにしていくアプローチとは相性が悪いです。システムを要素に分解していく過程で、要素同士の関連性という情報が抜け落ちて、システム全体の重要な性質を見落としてしまうといったことがしばしば発生するためです(あ、ロジカル・シンキングがだめだとかそういうことを言ってるわけじゃないですよ。要は使いどころの問題ですよね、という話です)。

システム思考は、こうしたシステムの難しさ、システムの要素と要素同士の関係性から生まれる構造や性質、課題を整理して表現することに役立つ考え方・概念を提供してくれる思考法となっています。
私の解釈ですが、システム思考はシステム全体を構成する要素と要素の間の関係性、そしてそれらシステムによって作られるアウトプットの変化を上手に扱うために便利な思考のための道具群(観測、状態、サブシステム、境界、環境、特性、ブラック・ボックス、ホワイト・ボックス、安定性、構造、フィードバック)やマインドセットを集めて整理したものと捉えることができると思っています。

システム思考を勉強すると得られるご利益

一般システム思考入門の中では、システム思考を学ぶメリットとして次の3つをあげています。

  1. 思考過程の改善ーー”思考を方向づけ、鋭い質問を提起する”
  2. 特定のシステムの研究ーー”実際の必要あるいは目的”
  3. 新しい法則の創造と古い法則の整備ーー”創り適用を試みて回る”
    1. これは法則をあなたが所属している組織などの”ルール”と読みかえれば良さそう

この内容を見てもらえばわかるように、システム思考を身につけることによって得られるものの考え方は、とても汎用的なものになっています。著者のワインバーグ先生は冒頭で「タイトルの”一般”という語には、次のような二重の意味がある。可能な限り最も”一般”的な読者にとって、利用可能な、最も”一般”的に応用可能な洞察」と述べており、システム思考という考え方がありとあらゆる人の思考プロセスを改善することが企図されていることが伝わってきます。これは、私たちの周りのいたるところにシステムとみなせるものがあるため、システム思考の適用範囲が非常に広いことと関係していると思います。

システム思考の考え方をちょっと紹介

ここまでだいぶふんわりとしたことを書いてしまったので、ちょこっとだけシステム思考の中身に踏み込んでみようと思います。
システム思考では、システムというものはそれ単体では成立しえません。システムというものは、そのシステムの動きを観察する観測者と必ずセットで語られます。システムとは、そこにある事実を観測者が観測して解釈した内容であると言い換えてもいいかもしれません(実際、ワインバーグ先生は著書の中で、システムとはものの見方である、ということを何度も言及しています)。

観測者がシステムを見るとき、その見方は観測者によって様々です。例えば、企業口コミ閲覧サービスというものを1つのシステムとみなした時、エンジニアの私はその口コミサイトのアーキテクチャやコードの品質の高さといった観点からシステムの状態を観測する傾向が強いでしょう。一方で、同じ事業部の営業の方は売上や利益率、事業の成長性といった観点からシステムの状態を見ることが多いと思います。このそれぞれのものの見方に正解はありません。人間の観察力には限界があるので、他人の視点には自分の視点に含まれない情報が必ず含まれています

ここで大事なことは2つあると思っていて、この2つを意識することがシステムを観測する上でも、実際の仕事をする上でも大事だと思っています。

「絶対に正しい」ものの見方といったものはないこと。

これには2つの意味があって、①ものの見方の正当性というのは、システムを観察する目的に照らし合わせてしか判断できません。つまり、システムを見る目的が変わればどの視点でものを見るのが「正しい」かも必然的に変わってきます。どんな時も唯一絶対に正しいものの見方なんてものはありません。②人間の観察能力には絶対に限界がある(ありのままの事実と事実の観察結果の間には、必ずズレが生じる)ということ。

同じシステムを見ていても、観測者が異なればその解釈は必ず異なるということ

何を当たり前のことを、と言われるかもしれませんが、仕事や日常生活ではみなさん思っているより意識できていないことだと思います。同じものを見ているはずなのにお互いの視点が合わない、しかもそれに気づかないことで、議論の前提が共有できなくなるため、議論の内容が噛み合わず結果非生産的な会議になったり結論が出ないまま対立だけ残るコミュニケーションが発生するといったことが起こります。

どうすりゃいいの?

自分と誰かが同じシステムを観測しているとき、その人がそのシステムをどう解釈しているか、自分の観測結果との違いをちゃんと把握するコミュニケーションを取る。これにつきます。人間の能力には限界があるので、1人で完璧に1つのシステムを把握するなんてことは不可能です。別々の人のさまざまな視点を組み合わせてシステムに関する理解を深めることがシステムの全体や課題を理解する上で大事になってきます。
ここは丁寧に相手がどんな視点・視座・視野で物事を見ているかコミュニケーションを取りながら把握していくしかないのですが、コツがあるとすれば「自分のものの見方が他人より優れている」といった思考を持たないことだと思っています。こういったコミュニケーションもうまくいかないし自分の学習の阻害にもなるのでやめたほうがいいです(書籍の中では、自集団中心主義なんて言われてたりします)。

さいごに

そんなわけで、システム思考のさわりの紹介でした。
ほんとはもっといろんなこと言ってるんだけど、自分の理解力と紙幅が足りないので興味がある人はシステム思考勉強してくれ。
そんじゃあな!

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