はじめに
ChatGPT サイドバーから呼び出せる OpenAI Codex(codex-1) は、「コードを自動生成するAI」ではなく “クラウド上で並列に働くソフトウェア開発エージェント” です。
本記事では、次の 3 点を中心にまとめます。
- Codex の仕組みと料金体系(ChatGPT 版・API 版の違い)
- 得意/苦手領域と IDE 補完ツールとの使い分け
- AGENTS.md を活かした現場運用ノウハウ
早速試してみましたが、リポジトリ全体を読み込みテスト&PR まで仕上げてくれるため、コストと生産性の両面から効率化が期待できると実感しました
参照: https://openai.com/index/introducing-codex/
1. Codex の概要
項目 | 内容 |
---|---|
モデル | codex-1(o3 を開発用途に最適化) |
実行 | 各タスクを隔離コンテナで実行、ネットワーク遮断 |
UI | ChatGPT サイドバー:Ask (Q&A) / Code (タスク実行) |
利用層 | ChatGPT Pro / Team / Enterprise(研究プレビュー)※Plus / Edu は近日対応 |
API |
Responses API で codex-mini-latest を提供 |
料金 | ChatGPT 版: 期間限定で無料枠+レート制限 API 版: 入力 100 万 token = $1.50/出力 100 万 token = $6(75 % キャッシュ割引) |
テスト | リポジトリ同梱スクリプトや AGENTS.md に従い自動実行 |
ポイント
- 完了時には diff・ターミナルログ・テスト結果 がセットで返却。
- ベンチマーク pass@k は o3-high を上回り、PR 品質が向上。
2. API と Codex CLI の料金・使いどころ
利用形態 | 主な用途 | 課金形態 | ベストプラクティス |
---|---|---|---|
ChatGPT サイドバー | 少量タスクの試用・PoC | 研究プレビュー中は無料(レート制限あり) | 手作業で投げて挙動を確認 |
Codex CLI | ローカル自動化・CI 組み込み | Responses API と同じ従量課金 | CI スクリプトから failing test を自動修正 |
Responses API | SaaS/社内ツールへの統合 |
codex-mini-latest 入力 $1.50/出力 $6(100 万 token) |
大量ジョブをサービス化、codex-mini と codex-1 を使い分け |
コスト注意点
モノレポ全体を丸投げすると token 数=コスト が膨らむ。
- サブリポ に分割、または
codex-mini
(o4-mini ベース)と性能・料金を比較
して最適化するのがコツ。Pro / Team ユーザーは CLI 連携時に $50 分の API クレジット が 30 日間付与されるため、無料枠での試行がおすすめ。
3. 得意な点(強み)
分類 | 強み | 代表シナリオ |
---|---|---|
並列タスク処理 | 複数エージェントを同時稼働し機械的な修正を一気に完了 | 10+ パッケージで eslint 設定を統一 |
リポジトリ横断の大規模改修 | 依存解析+テスト実行で安全に API バージョンを一括更新 | Monorepo で React 18 へ全面移行 |
長時間テストの自己ループ | テスト失敗→パッチ→再テストを自動で回し、人間は最終レビューのみ | E2E が 30 分以上かかる UI 回帰修正 |
ログ&証跡の透明性 | diff と詳細ログが付き、規制業界でも監査要件を満たす | FinTech でのコード監査 |
スタイル・規約順守 | PR の好みを学習し、AGENTS.md の制約も厳守 | 社内コーディング規約を徹底 |
安全な実行環境 | ネット遮断コンテナで機密情報に触れない | SaaS のプライバシー保護要件 |
4. 苦手な点(弱み)
分類 | 課題 | 回避 / 緩和策 |
---|---|---|
レイテンシ | 1–30 分かかり“即時性”がない | IDE 補完(Cursor / Copilot)で下書き → Codex でリファクタ&テスト |
双方向性不足 | 実行途中の仕様変更がしづらい | タスクを細かく分割、完了ごとにフィードバック |
外部ネット不可 | 新規 OSS を pip install できない | 依存モジュールをリポジトリに vendoring |
UI/画像生成は未対応 | スクショ比較や UX 試作は苦手 | Sora などビジュアル AI と分担 |
ドキュメント無しのコード | 仕様曖昧だと誤修正リスク | AGENTS.md に仕様とテストコマンドを明記 |
創造的設計 | 要件ゼロからのアーキテクチャ設計は人間が得意 | 設計はホワイトボード、人間主導 |
ポリシー拒否 | マルウェア開発は明確に拒否される | 正当な低レイヤ開発は目的を具体的に記述 |
5. 使い分けベストプラクティス
フェーズ | 推奨ツール | 役割 |
---|---|---|
要件定義・設計 | 人間 + ホワイトボード | アイデアの発散・整理 |
プロトタイプ実装 | Cursor / Copilot | 行単位補完・素早い試行錯誤 |
大規模リファクタ & テスト追加 |
Codex (Code ) |
横断的変更を並列処理・テスト自動化 |
Q&A・依存解析 |
Codex (Ask ) |
依存グラフ・呼び出し関係の照会 |
CI / Bot 連携 | Codex CLI | failing test を自動修正し PR 作成 |
6. AGENTS.md を最大活用するコツ
AGENTS.md
はレポジトリ内に設置することで、codex利用時にエージェントに読み込ませる指示をまとめたファイルです。
以下のようなセクションで分けて書くことでエージェントにレポジトリを理解させ、期待通りの動きを試してもらうことができます。
セクション | 書く内容 | 効果 |
---|---|---|
Project Overview | モノレポ構造 / 各パッケージ説明 | 迷子防止 |
How to Test |
npm run test:all など必須コマンド |
Codex が確実に実行 |
Coding Conventions | 命名規則・禁止 API | PR 品質を自動担保 |
Prohibited Areas |
/legacy/ 編集禁止など |
誤爆リスク回避 |
PR Template | Summary / Motivation / Screenshot | レビュー効率化 |
Tip: 階層が深い AGENTS.md ほど優先度が高い。モノレポではサブパッケージごとに配置すると◎。
7. これからの展望
- 途中ガイダンス – 実行中に追加指示を挿入できる双方向対話
- IDE ネイティブ統合 – ChatGPT Desktop → VS Code 連携でシームレス
- 自動チーム編成 – テスト担当・リファクタ担当など複数エージェントが協調
終わりに
Codex は「コードを速く書く AI」ではなく “退屈な作業を丸ごと肩代わりしてくれるクラウド同僚”。
大量・機械的・テスト駆動なタスクに投げれば投げるほど、開発チームの生産性は跳ね上がります。