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徳丸本の実習環境を全部 Docker 化してみた

Last updated at Posted at 2023-03-01

概要

「体系的に学ぶ 安全なWebアプリケーションの作り方 第2版 脆弱性が生まれる原理と対策の実践」(徳丸本)の実習環境を OWASP ZAP まで含めて全て Docker で動かします。

ホストに Java などをインストールする必要が無くなります。(必要なのは Firefox と Docker のみ)

OWASP ZAP の設定変更も Docker の構成ファイルに含めているので、手動で OWASP ZAP の設定を変更する必要が無くなります。

本稿の手順を完了すると、以下の3ステップで実習環境が起動します。

  1. docker compose up -d を実行する。(数秒)
  2. ブラウザ(Firefox 以外でもよい)で http://localhost:8080/zap を表示する。(10秒程度)
  3. Firefoxで http://example.jp/ を表示する。(すぐ)

動作確認は WSL + Ubuntu 環境で実施しています。
Ubuntu 無しの WSL オンリー環境や M1/M2 Mac 環境でも同様に実行できるはずです。

編集・追加するファイルは以下の3つです。

$ tree -a
(省略)
├── docker-compose.yml # 編集する
(省略)
└── zap
    ├── Dockerfile # 追加する
    └── homedir
        └── .ZAP
            └── config.xml # 追加する

OWASP ZAP のコンテナイメージ は 2.12.0 から amd64 と arm64 の両方で用意されています。

本稿では徳丸本2-4にある「hosts ファイルの編集」を行ないません。
「hosts ファイルの編集」を行なわないので、徳丸本2-4の最後のページで実施する ping example.jp などの疎通確認は失敗します。

本稿の手順を最後まで実施すると、最終的に Firefox で http://example.jp/ の表示ができるようになります。

VirtualBox 環境との併用は考慮していませんので、この手順を実施する時は VirtualBox 側をシャットダウンしておくと良いでしょう。

同様に既存の wasbook-docker 環境とも併用はできません。既存の wasbook-docker 環境側では docker compose down しておきましょう。

0: WSL と Docker Desktop をインストールする

WSL を新規にインストールする場合

最新のWindows 10 22H2 であれば WSL のインストールは以下のコマンド1つで「ストア版」の WSL がインストールされ、Ubuntu ディストリビューションの導入まで完了するはずです。

PS C:\Users\tadashi> wsl --install

wsl -l -v で Ubuntu ディストリビューションが VERSION 2 で、既定になっている(* が表示されている)ことを確認しましょう。

PS C:\Users\tadashi> wsl -l -v
  NAME                    STATE           VERSION
* Ubuntu                  Running         2

WSL が既にインストールされている場合

必須ではありませんが WSL をアップデートしておくと良いかもしれません。
wsl --update を実行すると「ストア版」の WSL が入ります。
どうしても「インボックス版」の WSL を使う理由がある場合以外は実行しておくのをお勧めします。

PS C:\Users\tadashi> wsl --update

こちらの場合も wsl -l -v でディストリビューションの状態を確認しておきましょう。

Docker Desktop for Windows をインストールする

下記のリンクからインストーラーをダウンロードしてインストールします。

1: wasbook-docker.zip を WSL の Ubuntu 環境に展開する

http://wasbook.org/download/wasbook-docker.zip をダウンロードして wasbook-docker.zip を展開します。

PS C:\Users\tadashi> ubuntu
tadashi@DESKTOP-CRHC3IF:~$ mkdir work # workが無ければ作る
tadashi@DESKTOP-CRHC3IF:~$ cd work    # 以降はこのディレクトリで作業する
tadashi@DESKTOP-CRHC3IF:~/work$ cp /mnt/c/Users/tadashi/Downloads/wasbook-docker.zip ./
$ unzip wasbook-docker.zip
$ cd wasbook-docker
$ pwd # 作業するディレクトリの確認
/home/tadashi/work/wasbook-docker

2: docker-compose.yml に patch を適用する

wasbook-docker.patch を作成して docker-compose.yml に適用します。
これはファイルの編集作業に相当する操作です。

$ pwd # 作業するディレクトリを確認する
/home/tadashi/work/wasbook-docker

$ # vi でも nano でも VSCode でも良いので wasbook-docker.patch ファイルを作成する(以下の cat コマンドの結果を参照してください)

$ cat wasbook-docker.patch # 作成したファイルの中身を cat コマンドで確認すると以下のようになります
--- ./wasbook-docker.orig/docker-compose.yml	2022-12-29 16:00:12.000000000 +0900
+++ ./wasbook-docker/docker-compose.yml	2023-02-10 17:56:47.456526682 +0900
@@ -65,5 +65,16 @@ services:
     networks:
       internal:
 
+  zap:
+    build: zap
+    ports:
+      - 8080:8080
+      - 58888:8090
+    volumes:
+      - ./zap/homedir/.ZAP:/home/zap/.ZAP
+      - ./zap/homedir/.ZAP/config.xml:/home/zap/.ZAP/config.xml
+    networks:
+      internal:
+
 networks:
   internal:

$ pwd # 作業するディレクトリを確認する
/home/tadashi/work/wasbook-docker

$ patch docker-compose.yml <wasbook-docker.patch # 作成したパッチファイルを適用する

3: OWASP ZAP の Dockerfile を配置する

ZAP コンテナのための Dockerfile を作成して配置します。

$ pwd
/home/tadashi/work/wasbook-docker

$ mkdir -p zap/homedir/.ZAP # 必要なディレクトリをこの時点で全て作ってしまう

$ cd zap
$ pwd
/home/tadashi/work/wasbook-docker/zap
$ pwd # 作業するディレクトリを確認する(作成した zap ディレクトリの中)
/home/tadashi/work/wasbook-docker/zap

$ # vi でも nano でも VSCode でも良いので Dockerfile ファイルを作成する(以下の cat コマンドの結果を参照してください)

$ cat Dockerfile # 作成したファイルの中身を cat コマンドで確認すると以下のようになります
FROM owasp/zap2docker-stable:2.12.0

USER root

RUN apt-get update && apt-get install -y \
        fonts-ipafont-gothic \
    && apt-get clean \
    && rm -rf /var/lib/apt/lists/*

USER zap

CMD ["zap-webswing.sh"]

4: OWASP ZAP の設定が記載された config.xml を配置する

ここで作成する config.xml に OWASP ZAP コンテナの基本的な設定(徳丸本2-5と http://wasbook.org/wasbook-docker.html の内容)を Docker 環境用に少し修正してまとめてファイルにしてあります。
手作業で徳丸本2-5と http://wasbook.org/wasbook-docker.html の内容を実施する必要はありません。

$ cd wasbook-docker/zap/homedir/.ZAP
$ pwd # 作業するディレクトリを確認する(zap の下の homedir の下の .ZAP ディレクトリ)
/home/tadashi/work/wasbook-docker/zap/homedir/.ZAP

$ # vi でも nano でも VSCode でも良いので config.xml ファイルを作成する(以下の cat コマンドの結果を参照)

$ cat config.xml # 作成したファイルの中身を cat コマンドで確認すると以下のようになります
<?xml version="1.0" encoding="UTF-8" standalone="no"?>
<config>
    <version>20012000</version>
    <breakpoints>
        <buttonMode>2</buttonMode>
    </breakpoints>
    <network>
        <connection version="2">
            <httpProxy>
                <enabled>true</enabled>
                <host>apache</host>
                <port>3128</port>
            </httpProxy>
        </connection>
    </network>
    <hud version="4">
        <enabledForDesktop>false</enabledForDesktop>
    </hud>
    <database>
        <newsession>1</newsession>
        <newsessionprompt>false</newsessionprompt>
    </database>
    <view>
        <locale>ja_JP</locale>
        <fontName>IPAPGothic</fontName>
    </view>
</config>

5: docker compose up -d する

docker compose up -d で起動します。

初回なのでビルドが走ります。

$ cd wasbook-docker
$ pwd # 作業するディレクトリを確認する
/home/tadashi/work/wasbook-docker

$ docker compose up -d

少し古い環境の場合は docker compose ではなく docker-compose が必要になるケースがあります。
最新の Docker Desktop をインストールしていれば docker compose で大丈夫です。

6: Firefox に FoxyProxy をインストールして設定する

ブラウザ(Firefox 以外でもよい)で http://localhost:13128/ を表示して FoxyProxy の設定ファイルをダウンロードします。(徳丸本2-6)

FoxyProxy を Firefox に導入して、ダウンロードした FoxyProxy の設定ファイルを読みこませます。(徳丸本2-6)

本稿では徳丸本2-4にある「hosts ファイルの編集」をしないので、この時点で example.jp などの名前解決はされません。
つまり、この時点でブラウザで http://example.jp/ を表示しようとしても名前解決ができずにエラーになります。
最後まで本稿の手順を実施して下さい。

7: OWASP ZAP を起動する

ブラウザ(Firefox 以外でもよい)で http://localhost:8080/zap を表示して(/zap を忘れない) OWASP ZAPを起動します。

この操作は実習環境を起動する docker compose up -d ごとに毎回必要となります。

OWASP ZAP を起動することで ZAP の 58888 ポートが有効になります。
これにより FoxyProxy での接続ができるようになります。

8: Firefox で http://example.jp/ を表示する

Firefoxで http://example.jp/ を表示させることができれば完了です。

本稿の手順の範囲では Firefox でなければ http://example.jp/ を名前解決できません。他のブラウザで http://example.jp/ を表示しようとするとエラーになります。

example.jp などの名前解決は、Firefox からプロキシとして指定されている zap コンテナを経て apache コンテナに到達し、実際の名前解決は docker-compose.ymlaliases に従っておこなわれます。

9: Firefox のトータルクッキー保護の設定を実施する

Firefox で http://trap.example.com/firefox_tcp.html を表示します。(http://example.jp/ の冒頭にリンクがあります)

ページの案内に従ってトータルクッキー保護を無効化します。

普段の実習環境の起動と終了

初回の実施で1から9まで完了すると、次回からは以下の3ステップで実習環境が起動します。

  1. docker compose up -d を実行する。(数秒)
  2. ブラウザ(Firefox 以外でもよい)で http://localhost:8080/zap を表示する。(10秒程度)
  3. Firefoxで http://example.jp/ を表示する。(すぐ)

実習環境を終了する時は、可能な限り下記を実行します。

  1. Firefox の http://example.jp/ などを閉じる。
  2. http://localhost:8080/zap を閉じる。
  3. docker compose down を実行する。(10秒程度)

実習環境の動作がおかしくなったと感じたら docker compose downdocker compose up -d をこの順に実行して Docker 環境を再起動してみます。

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