🔰 1. はじめに

Windows を使っている方へ質問です．

　Q. ￤エクスプローラー📂 を開かない日はありますか？

おそらく殆どの人は，毎日のように エクスプローラー のお世話になっていることでしょう．

そして，アドレスバーに cmd と入れることで，いま開いている場所をカレントディレクトリとしてコマンドプロンプトを起動できる¹ ことも，知っている人は多いかもしれません．

ある日，私は思いました．「似たようなことを VSCode でもやりたい！」

🗒️ 2. この記事の内容

この記事では，「エクスプローラーのアドレスバーに vsc と入力することで，いま開いている場所を VSCode で起動できるようにする方法」を説明します．

完成例

（背景が一瞬暗転するのは，裏でコマンドプロンプトが開くためです．すぐに消えます．）

✨ 3. 手順

ここから，具体的な手順を説明していきます．

注意
C:\Windows\ に手を加えます．操作を誤るとシステムファイルに影響を及ぼすかも知れません．自己責任で進めてください．

├ ① バッチファイルを書く

任意の場所に，以下の内容の vsc.bat ファイルを書きます．
ここでは，C:\Tools\ の中に置くことにします．

vsc.bat

@echo off
code %cd%

@echo off で，見やすさのためにコマンドの実行ログを非表示にしています
%cd% で，カレントディレクトリを読み取り，それを code コマンドに渡しています

（コードの更なる詳細については，次章「4. どうして/どのように動いているのか」をお読みください！）

└ ② シンボリックリンクを作成する

管理者権限で コマンドプロンプトを開いて，以下を打ち込んで Enter してください．
これは，vsc.bat が C:\Tools\vsc.bat にある場合の例です．

cmd

mklink C:\Windows\vsc.bat C:\Tools\vsc.bat

mklink コマンドで，いま作ったバッチファイル vsc.bat のシンボリックリンクを C:\Windows\ フォルダに作成します
C:\Windows\ は Windows の環境変数 PATH にデフォルトで含まれているため，vsc と打つだけで，どこからでもこのバッチファイルを実行できます

トラブルシューティング
アクセスが拒否されました 等と表示される場合は，管理者権限で実行できていない可能性があります．コマンドプロンプトのアイコンを右クリックして「管理者として実行」をクリックして，コマンドプロンプトを開いてください．

これにて完成です！

完成例 同様の挙動を示すか確認してみてください．

以降では，上記手順の 詳細を解説していきます．興味のある方は ぜひ読んでみてください！

注意
将来的に vsc という名前のプログラムが追加された際に，競合するかもしれません．その場合には今回のシンボリックリンクを削除するなど，対応してください．

シンボリックリンクの削除

del C:\Windows\vsc.bat

📚 4. どうして/どのように動いているのか

たった2ステップで，今回の内容を実装できました．この簡易性の裏には，どのような 抽象化 が隠れているのでしょうか．ここからは，それを深堀っていこうと思います！💎⛏️

そもそもバッチファイルとは何者か？

今回は，vsc.bat というバッチファイルを作り，それをコマンドプロンプトから呼び出しました．ここでは「バッチファイルとは何なのか」，そして「コマンドラインから呼び出せる実行ファイルとは何なのか」を見ていきます．

バッチファイル（BAT/Batch file）とは

Windows 環境（コマンドプロンプト等）で実行できるコマンドを記述したテキストファイル（ .bat あるいは .cmd ）です ²³
- Mac（および Linux）でのシェルスクリプト（ .sh ）に相当
- 一見似ているが .dat（データファイル）とは別物 ⁴
- バッチ（Batch）：ひと束，一群，一団 ⁵
つまり，一度バッチファイルを作成しておけば，ひとかたまりのコマンドを楽に実行できるわけです✨
バッチファイルの詳しい書き方については，バッチファイルの基本的な書式と考え方 - Qiita が参考になります
さらに興味のある方は，Microsoft の公式ドキュメント Windows Commands - Windows Server documentation に目を通してみるのも良いかも知れません

コマンドラインから呼び出せる実行ファイルについて

バッチファイルは Windows のコマンドが書かれたスクリプトで，ダブルクリックで実行できます
ただし，Windows の環境変数 PATH にパスが通っている 場合，それに加え コマンドラインからファイル名だけで直接実行できる のです
- 「拡張子を省略して」呼び出せる理由は，環境変数 PATHEXT に登録された拡張子が自動で探され，最初に見つかったものが実行されるようになっているためです
- 環境変数 PATHEXT については，「そもそも“パスを通す”とはどういうことか」を含めて 「PATH を通す」の意味をできるだけわかりやすく説明する試み - Qiita に詳しく載っています
したがって，PATH が通っている C:\Windows\ に vsc.bat（のシンボリックリンク）を置くことで，拡張子を省略したファイル名 vsc だけでコマンドを呼び出せるわけですね

シンボリックリンク については詳細を「 シンボリックリンクとは何か？」で後述します

なぜエクスプローラーのアドレスバーからコマンドが実行できるのか

これは単純に，「エクスプローラーのアドレスバーがファイルパスだけでなく，コマンドの実行にも対応している ため」です
- 正直，調べても「そういう仕様になっているから」以上の理由を見つけられませんでした…
調べたている中で見つけた，エクスプローラーのアドレスバーで使える便利技を幾つか載せておきます
- エクスプローラの今すぐ使えるアドレスバー芸 - Qiita
- 誰もが使っているエクスプロ―ラーをさらに使いこなすテク - Ascii

`code` コマンドとは？

vsc.bat では code %cd% といった具合に， code コマンドを使用しました．これは一体なんでしょうか？

`code` コマンド

VSCode のインストール時にデフォルトで環境変数 PATH に追加されるコマンドです
- VSCode が丁寧にも CLI のコマンドをビルトインしてくれているわけですね
よく使いそうなコマンドについては，VSCode使いなら抑えておくべきCodeコマンド - Zenn にまとまっています
もっと興味が湧いてきた方は，公式ドキュメント Command Line Interface (CLI) - Visual Studio Code へどうぞ

シンボリックリンクとは何か？

今回，C:\Tools\vsc.bat のシンボリックリンクを C:\Windows\vsc.bat として作成しました．シンボリックリンクとは何なのでしょうか？「ショートカット」とは違うのでしょうか？

シンボリックリンク（symlink）

ある場所にあるファイルやフォルダへの参照（リンク）です
普通の「ショートカット」と違い，OSレベルで リンク先が実際にその場所に存在するかのように扱われます
- ショートカットとの違いは，シンボリックリンクの使い方と落とし穴 - Qiita に一例が載っています
また，シンボリックリンクの対義語として「ハードリンク」があります
- シンボリックリンク は「シンボリック（象徴/記号）」と言うだけあって，リンク元のファイル/フォルダとは別物です（削除してもリンクが切れるだけで，リンク元は残ります）
- ハードリンク は，リンク先と（殆ど）同じものであり，「リンク先」と「リンク元」という区別すら曖昧です（どのリンクを書き換えても他のリンクすべてに変更が反映されます） ⁶
もともと Linux などで出てくる用語らしいですが，ここでは Windows に特化した話をしています

ショートカット・シンボリックリンク・ハードリンクの違い

それぞれの違いを表にまとめたものが，以下になります．⁷

	ショートカット	シンボリックリンク	ハードリンク
目的	GUI上の手軽なリンク	ファイルやディレクトリの参照	同じファイルへの複数の参照
実態の有無	実態なし	実体なし	実体あり
データの共有	オリジナルを開くだけ	オリジナルとリンク先は同じ内容	ハードリンクすべてが同じ実体を共有
破損の可能性	オリジナルを移動/削除すると無効化	リンク先が削除されるとリンク切れ	どのリンクが消えてもデータは残る
対象	アプリ・ファイル・フォルダ	ファイル・ディレクトリ	ファイルのみ
異なるディスクの参照	可能	可能	不可（同じパーティション内のみ）
管理者権限	不要	必要	必要

なぜわざわざ `C:\Tools\` にバッチファイルを置くのか？

シンボリックリンクが「OSも騙せる“本物に近い”ショートカット」であれば，初めから C:\Windows\ にバッチファイルを置いてはダメなのでしょうか．

結論を言えば，それでも問題なく動作します．しかし，主に次のような理由から，C:\Windows\ 以外の場所にバッチファイルを置くことが望ましいのです．

直接 `C:\Windows\` にバッチファイルを置かない理由

保守・管理がやりやすい
- C:\Windows\ には他にもシステムファイルが元からたくさん保管されています
- 自作のバッチファイルを毎回 C:\Windows\ から探すよりも，C:\Tools\ にまとめてあった方が，管理が楽です
システムの安全性の観点
- いま述べたように C:\Windows\ にはシステムシステムが保管され，その多くは OS にとって重要なものです
- バッチファイルを C:\Windows\ に直置きするよりも，実体を別フォルダに隔離させた方が，システムシステムの誤った上書き/削除などを防げます
OS アプデの影響回避
- Windows のアップデートや再インストールによって C:\Windows\ に置いたバッチファイルが消えることがあります
- 消えるのがバッチファイル本体ではなくシンボリックリンクであれば，再リンクさせれば良いだけなので，軽症で済みます

また，C:\Windows\ にシンボリックリンクを作成せずに，C:\Tools\ を環境変数 PATH に追加するのも，ひとつの手です．😎

🌇 5. おわりに

思っていたより長くなってしまいましたが，ここまでお読みいただき ありがとうございます．😌

今回の内容を踏まえれば，日常作業の利便性を上げる何かを，他にも実装できる気がしてきませんか？どうせ何かを学ぶなら，他に応用が利く形で（なるべくなら体系的に）習得したいですよね！🌟

自分はこの度，初めて Qiita に記事を書き，初めて ちゃんとバッチファイルに触れました．

エンジニアの世界では「アウトプットするネタを見つけて記事にまとめることで，（誰かの疑問に役立つだけでなく）自分のインプットの質を高める」ことが日常的に行われているように思います．これをすぐに習慣化するのは難しくとも，自分もこの好循環の渦（沼？）にゆったりと入っていきたいものです．🌱