はじめに
FIWARE は国(官公庁)が進めるスマートシティ施策やデジタル田園都市国家構想、国土空間データ連携基盤で想定されるデータ連携基盤(の一つ)として、先進的な自治体では既に採用が進んでいますが、複数のオープンソースからなるプラットフォームであることもあり、FIWARE エコシステムと呼ばれる複数の構成コンポーネントを組み合わせて利用することが想定されています。
ただ、ヨーロッパ発のプロジェクトとして始まった歴史的経緯もあり、日本語での説明資料や解説サイトは FIWARE の公式?サイトを除いては非常に乏しいのが現実です。
そこで、主なコンポーネントを以下にまとめてみました。
主なコンポーネントの一覧
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コンポーネント |
機能と特徴 |
ユースケース |
1 |
Orion Context Broker |
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データ管理の中核: FIWARE エコシステムの中核であり、リアルタイムデータの収集・管理・公開を行う
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NGSI API: 標準化された NGSI v2 / NGSI-LD インターフェースを使用し、IoT デバイス、アプリケーション、データソースを統合
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スケーラビリティ: 大量のデータトランザクションを処理可能
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- スマートシティの交通管理(リアルタイム交通データの収集・可視化)
- 環境モニタリング(センサーからのデータ統合とアラート生成)
- スマートビルディング(エネルギー消費データの収集と制御)
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2 |
IoT Agent |
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プロトコル変換: IoT デバイスからのデータを FIWARE 標準(NGSI)に変換
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マルチプロトコル対応: MQTT、HTTP、LwM2M、CoAP など、さまざまなプロトコルに対応
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双方向通信: IoT デバイスへの制御コマンドの送信をサポート
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- スマート農業(センサーやデバイスからのデータ収集と自動灌漑制御)
- スマートホーム(デバイスのリモート制御)
- インダストリー4.0(工場内センサーからのデータ収集)
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3 |
Cygnus |
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データ永続化: Context Broker から受信したデータを永続化するためのツール
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データストレージ統合: HDFS、MySQL、MongoDB、PostgreSQL などのさまざまなストレージに対応
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バッチ処理: 大量データの効率的なストレージ管理が可能
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- IoT データの長期保存と分析
- 歴史的データを活用した予測分析(例: 天候パターンの予測)
- ログデータ管理(センサーアクティビティの追跡と監査)
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4 |
Quantum Leap |
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時系列データの管理: Context Broker からのデータを時系列データベース(TimescaleDB や CrateDB)に保存
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クエリ対応: 時系列データに特化したクエリのサポート
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リアルタイム分析: データの履歴を用いた迅速なインサイトの提供
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- エネルギー管理(電力消費データのモニタリングと最適化)
- 気象データのトレンド分析
- 交通量の履歴データ分析と将来予測
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5 |
Comet |
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時系列データの保存: Context Broker から受信したデータを時系列として保存。既定で MongoDB に保存する
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柔軟なデータクエリ: 時系列データをクエリ可能にし、過去のデータ分析や可視化をサポート
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データの永続性: データの変更履歴を保持するため、過去のデータ状態を追跡可能
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カスタマイズ可能なデータモデル: 保存するデータ形式や内容をプロジェクト要件に合わせてカスタマイズ可能
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環境データの履歴管理: センサーから取得した温度、湿度、CO2レベルの履歴を保存し、将来的なトレンド分析に活用
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スマートビルディング: 建物のエネルギー消費量や利用状況の時系列データを分析し、効率的なリソース配分を実現
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スマート交通: 交通流量や平均速度データの履歴を記録し、交通渋滞解消や最適ルート提案に活用
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予測メンテナンス: 機械やインフラストラクチャのセンサーデータ履歴を分析し、故障や異常の兆候を予測
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6 |
Wirecloud |
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ダッシュボード作成: ユーザー向けにカスタマイズ可能なデータダッシュボードを提供
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ウィジェットベース: さまざまなウィジェットを組み合わせて視覚化
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API 連携: FIWARE の他のコンポーネントや外部システムと簡単に統合可能
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- スマートシティのオペレーター向けリアルタイムモニタリングツール
- エネルギー使用状況の可視化とレポート作成
- 交通管理ダッシュボード
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7 |
Keyrock |
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ID 管理: ユーザー認証とアクセス管理(OAuth 2.0準拠)
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ロール管理: ユーザーごとに異なるアクセスレベルを設定可能
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セキュリティ強化: サービスやアプリケーションにセキュアなアクセスを提供
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- スマートシティサービスのユーザー管理(住民と行政の異なる権限)
- データ共有プラットフォームのアクセス制御
- セキュアな産業IoTアプリケーション
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8 |
PEP Proxy (Wilma) |
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セキュリティゲートウェイ: API リクエストに対する認証と認可を提供
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Keyrock との統合: アクセス制御を強化
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データ保護: 非許可ユーザーからの不正アクセスを防止
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- スマートシティAPIのセキュリティ
- ヘルスケアアプリケーションのデータ保護
- 企業内アプリケーションのアクセス制限
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9 |
Draco |
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データ処理パイプライン: データのリアルタイム変換と永続化を実現
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柔軟なストレージサポート: S3、HDFS、Kafka など、多様なターゲットをサポート
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イベント駆動: データフローの自動化が可能
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- IoT イベントデータのリアルタイム分析
- データフローの簡素化
- 複雑なデータ処理パイプラインの構築
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参考