以前、携帯通信(主にLTE)のコアネットワークという記事を書きましたが、コアネットワークと並んでもう1つ重要な携帯通信網に「無線アクセスネットワーク (RAN: Radio Access Network)」があります。無線アクセスネットワークは無線関係の装置(変調装置など)がメインになるかもしれませんが、装置同士の繋がり方の部分でネットワークトポロジが興味深かったのでまとめてみました。
コアネットワークと無線アクセスネットワーク
コアネットワークは外部へパケットを転送したり外部から来たパケットを端末へ届けるためのルーティングなどがメインの仕事でした。一方で無線アクセスネットワークは、最終的に無線技術を用いて端末とのインターフェイスを管理します。
LTE の無線アクセスネットワーク
LTE の無線アクセスネットワークは下図のような構造になります。
この図は User Plane と Control Plane を両方描いています(USer Plane と Control Plane の説明は携帯通信(主にLTE)のコアネットワークを参照)。
新たに登場したものは
- S1 Interface
- eNodeBとコアネットワークを結ぶインターフェイス
- プロトコルは S1 Application Protocol (S1 AP)
- S-GW とつながるインターフェイス(User Plane側)は特に S1-U と呼ばれ、 MME とつながるインターフェイス (Control Plane側)は S1-MME と呼ばれる
- X2 Interface
- 近隣の eNodeB 同士を結ぶインターフェイス
- プロトコルは X2 Application Protocol (X2 AP)
の2つになります。
X2ハンドオーバとS1ハンドオーバ
eNodeB は近隣のものと相互接続がされています。この相互接続を使うことでハンドオーバ(端末が移動したときの通信経路の切り替え)を高速化することができます。これは X2ハンドオーバ と呼ばれるハンドオーバ方法です。
X2ハンドオーバは前提として切り替え前と切り替え後の2つの eNodeB が同一の MME に接続している必要があります。この条件を満たせば、ハンドオーバで切り替える経路は S-GW と eNodeB の間だけになります。そこで X2 インターフェイスを介して情報をやり取りし、切り替えを行います。
2つの eNodeB が異なる MME に接続されている場合、X2 ハンドオーバはできません。この場合は仕方がないので S1 インターフェイスを介して情報のやり取りを行いハンドオーバをします。これを S1ハンドオーバ と呼びます。
eNodeB の構成
すこし細かいかもしれませんが、一緒に eNodeB の中のネットワークも見てみましょう。
(画像は http://www.sharetechnote.com/html/RF_Handbook_RRH.html より)
大きく BBU (Base Band Unit) と RRH (Remote Radio Head) の2つから構成されます。
- BBU
- ベースバンド装置
- 無線の変調(物理層)、無線リソースへの端末の割当やスケジューリング(MAC層)などを担当
- RRH
- 張り出し無線装置
- 送信電力の増幅、受信信号の低雑音増幅、電波の生成・検出などを担当
LTE以前は BBU と RRH を1つのコンポーネントにして街中に配置していたようですが、最近はアンテナをそこら中に立てる「スモールセル」が主流になったため、RRH を切り離してよりアンテナを取り付けやすいようにしているそうです。
(画像は http://japan.ni.com/usersolutions/fujitsu より)
最後に
携帯通信(主にLTE)のコアネットワークと今回の記事を通して、日本中に張り巡らされている携帯通信網が具体的にどのように敷設されているのかが段々と分かってきました。あとはより具体的に
- BBU がどこに設置されているのか
- S-GW と MME はそれぞれいくつの eNodeB を管理しているのか
- P-GW は日本全国にいくつあるのか
といった情報がほしいのですが...なかなか見つからないものですね...
参考文献
『モバイルシステム技術テキスト エキスパート編 第7版』モバイルコンピューティング推進コンソーシアム