はじめに
私は 5 年ほど前から友人や同僚といくつかの勉強会を開催してきたのですが、うまく続くこともあれば、なかなか続かないこともありました。
そんな中、この 1 年間で実施した勉強会は毎週 4 時間1という長い時間をとるにも関わらず、しっかり続けることができました。
良い意味で「惰性で学べる環境」を作れたようなものです。
こういった経験から、「勉強会はこうすれば長続きする」といった工夫すべきポイントがなんとなく分かってきました。
社内勉強会や友人とのプライベートな勉強会など、「勉強会をやってみたい」ということはよくあると思うので、その際の参考になれば幸いです。
今までやってきた勉強会のふりかえり
さて、振り返ってみると、私は今までに大きく 6 つの勉強会をやってきています。
それぞれどんな内容で、なぜ続いたか、またはなぜ続かなかったかを簡単にまとめました。
文系的な本の読書会 (2015/05 - 2015/07)
私が初めて開催した勉強会は、友人と本を読んできて議論する系の、いわゆる「読書会」的なものでした。
しかし、この会は 2 回で終わってしまいました。
なぜ続かなかったのか
続かなかった理由はいくつかありますが、
- 本を読んでくるのはハードルが高いこと
- 「せっかく勉強会をするなら」と、分厚い本を課題図書にしてしまったため、開催頻度が低くなったこと
が大きいのではないかと思います。
このときに次回の課題図書として購入した分厚い本は、いまだに自宅の本棚に積んであります。
もしかすると、このまま永遠に読まないことになってしまうかもしれません。。
統計・機械学習の勉強会 (2017/04 - 2017/11)
2 つ目に企画したのは、統計・機械学習系の勉強会です。
学生時代に統計を勉強して面白いと思いつつもあまり理解を深められずにいたため、同じ研究室に所属していた友人に声をかけて勉強会を始めました。
テーマとしては、t 検定などを含む古典的な統計から MCMC などのベイズ統計、当時広く認識され始めたディープラーニングといった機械学習などなどです。
この勉強会は月に数回程度の頻度で半年ほど続きました。
なぜ続いたのか
この会が続いたのは、以下のような良い環境だったからだと思います。
- 当時大学院生だった友人が統計・機械学習をがっつり勉強しており、勉強会をリードしてくれた
- 研究で統計を扱っている (扱っていた) メンバーだったため、モチベーションが非常に高かった
- 数学の知識レベルが同程度のメンバーが集まっていたため、みんなで同じところに同じように悩むことができた
特に「リードできるメンバーがいたこと」と「研究で使うためモチベーションが高かったこと」が大きいのではないかと思います。
IT 関係の雑多な勉強会 (2017/04 - 2017/08)
上記の勉強会に加え、同じ頃に仕事の同期 3 名で勉強会を試みました。
月に 1 回程度の頻度で何度か開催しましたが、すぐに消滅してしまいました。
なぜ続かなかったのか
続かなかった理由は以下の通りです。
- 各自があまり知らないことを調べてきて共有する形式だったため、準備が大変だった
- メンバーが自分を含め 3 人だけだったため、誰か 1 人でも体調不良などで休むとリスケすることになった
- 「仕事が忙しくて準備できてない」「じゃあリスケしよう」と何度もリスケしてしまった
- そもそもどんな会にしたいのか共通認識が作れなかった
日程調整は勉強会を開催する上で大きな敵です。
特にメンバーが少ないとリスケする可能性が高くなり、結果モチベーションが下がり、またリスケするという負のスパイラルに陥ってしまいます。
なんでもありの雑多な勉強会 (2017/08 - 2018/06)
2 つ上の統計・機械学習の勉強会を一緒にやっていた友人から声をかけられ、もっと幅広く雑多な勉強会が始まりました。
テーマとしてはディープラーニングやブロックチェーンといった技術系から、演劇や落語といったものまで、本当になんでもありでした。
この会は月に 1 回程度の頻度で続きましたが、ある程度の期間の後、開催が滞るようになってしまいました。
なぜ開催が滞ったのか
開催が滞った理由は以下のようなものではないかと思います。
- テーマが広い分、参加者の前提知識のズレが大きいため、深い議論をしにくかった
- テーマがなんでもありのため、毎回次回の発表者・テーマを決めるのが負担になった
- 日程調整が大変だった (次回の日程を決め忘れることも多かった)
- 毎回テーマが変わるため毎回必ず参加するというモチベーションは働かず、参加者が固定されなかった
内容は面白かったのですが、テーマが広いこともあり、なかなか習慣化する勉強会にはできませんでした。
なんでもありの雑多な勉強会 - ソフトウェア・プロダクト開発系多め ver (2019/01 - 現在)
上記のなんでもありの勉強会の中でコアだったメンバに声をかけ、ソフトウェア・プロダクト開発系の内容が多めの勉強会が始まりました。
参加者は独学などでも含め、プログラミングを多少は経験したことがあるメンバのみになりました。
アプリケーションの設計や AWS などのいわゆるシステム開発に役立つ系のテーマを多くしつつ、財務やマーケティング、果てはゲームがテーマの会もありました。
やり方としては、午前 2 時間は誰かが何かのテーマで発表し、午後 2 時間は実際にプログラミングなどで手を動かすという、毎週 4 時間の構成に落ち着きました。
なぜ続いたのか
毎週 4 時間という長時間を使った勉強会が、なぜ 1 年間も続いたのか、おそらく以下のような理由があるのではないかと思います。
- 毎週土曜日 10 時に同じ場所集合と、時間・場所を固定した
- 多くのメンバーにとって仕事と関係があり、実用性が高かった
- 自分がすでに知っている内容でこのメンバーに対して話せることがたくさんあった
- とにかく継続を重視し、準備する資料の質にはこだわりすぎなかった
- 毎週みんなでランチに行っていた
これらがなぜ良かったかは、この記事の後半でまとめています。
スマホアプリ作り (2019/11 - 現在)
最後になりますが、もう 1 つスマホアプリ開発の勉強会を始めました。
まだ始めたばかりですが、この会は続くのではないかと思っています。
なぜ続きそうと思うか
なぜ続きそうかというと、
- 週 1 の頻度で開催している
- 参加者が好きなことをやっている
からです。実際に続くかどうかも楽しみです。
長続きする勉強会開催のポイント
さて、長くなりましたが、これらの経験を踏まえ、勉強会を続けるポイントを 10 個まとめました。
1. 参加者の仕事に多少でも関係する分野にする
当たり前のことですが、参加者の仕事に関係する分野にすることで、参加するモチベーションが向上します。
また、「あのテーマ知りたいんだけど誰か詳しくないの ?」といった話題も上がりやすくなり、「そういえばそれ自分話せる」といった流れで次回のテーマが決まることも少なくありません。
また、次のポイントである「前提知識を揃える」ためにもプラスに働きます。
2. 前提となる知識をある程度そろえる
プログラミングの話をするのであれば if、for などは分かっているメンバーを集めるのか、そうじゃないのか
統計・機械学習などの話をするのであれば、微分積分や行列計算の基本が分かっているメンバーなのか、そうじゃないのか
など、前提知識をそろえることができると勉強会は続きやすいです。
前提知識が異なる場合、初心者に向けて話せば他のメンバーが退屈になり、詳しいメンバーに向けて話せば初心者がついていけなくなってしまいます。
もちろんぴったりそろえることはできませんが、ある程度の範囲内にしたほうが参加者全体の満足度が上がり、継続参加に繋がるのではないでしょうか。
3. 毎週同じ時間をおさえる
勉強会を続ける一番の敵は日程調整だといっても過言ではありません。
これまで開催した勉強会の多くは、開催の度に「次回はいつにしようか」と話していましたが、日程調整を忘れたり、そもそも結構先まで都合がつかなかったりと、本当に大変でした。
この 1 年間続いた勉強会では、毎週土曜日の 10 時に同じ場所に固定することで、毎週参加するのが当たり前という流れを作ることができました。
毎週開催するのであれば、土曜日の午前はかなりオススメです。
平日からの流れで朝起きる習慣が続いているうえ、土曜の午前から他の予定が入ることは比較的少ない気がします。
4. 人数は 5 人が最低ライン
内容次第でもありますが、人数は 5 人以上集めることをオススメします。
2 人では発表形式の勉強会は難しいです。
3 人では、1 人が体調を崩した場合にリスケすることになります。
4 人でも、1 人が体調を崩したときに聴講する側が少ない雰囲気になります。
5 人くらいから 1 人休んだ場合の重みが少し小さくなります。
6 人以上いればバッチリです。
もしくは、欠席者が多くても勉強会自体は開催できるよう、アプリ開発などをそのメンバーで並行して進めるといいのかもしれません。
5. すでに知っていることを発表する
勉強会で何より負担になるのは、発表の準備です。
勉強会ということで思い切って新しいことを勉強して発表したいという気持ちになりがちですが、まずはすでに知っていることを発表することをオススメします。
聴講する側からしても、誰かがすでに知っている、詳しい話ができる分野の話は大変ありがたいです。
発表する側の準備も楽ですし、実はすでに知っている分野の発表は Win-Win なのです。
すでに知っている分野で発表することは、「ごめん、今週準備できなかったからリスケして」という現象が発生する確率も下げることができます。
「勉強会の準備が勉強になる」という方もいますが、勉強会を継続的に開催するという観点では、すでに知っていることを発表することをオススメします。
6. 資料の質を求めない
勉強会となるとある程度しっかりした資料を用意する方も多いと思いますが、資料の質は求めないことをオススメします。
上記の「すでに知っていることを発表する」との組み合わせ技でもありますが、ある程度詳しい分野であれば、たいした資料がなくてもペラペラ話せたりします。
話すことの構成を考えて、最低限だけの準備で実施するくらいがちょうどいいです。
「資料を作り込もうとすると知らないことが出てきて勉強になる」という意見を聞くこともありますが、私はそれに反対です。
有名な話ですが、勉強するうえで「キレイなノートを作る」はアンチパターンです。
勉強については質を求めすぎず、完璧主義を捨てることが重要です。
(もちろん質も無視はしませんが ...)
7. みんなが興味のある分野でたくさん話せる人がリードする
ある程度深いテーマで長続きする勉強会をするためには、そのテーマで他のメンバーをリードできるメンバがいることが重要です。
リードできるメンバがいると、内容のレベルが上がりやすく、参加者のモチベーションが向上します。
また、1 回あたりの情報量も多くなるため、「休まず毎回参加する」というモチベーションにもなります。
これに加え、次のポイントにも良い影響をもたらします。
8. 誰かの準備が間に合わなければ誰かが代打する
どうしても「来週自分が担当だけど準備が間に合わない」といったことが発生する場合があります。
このときリスケしてしまうと、勉強会の継続にかなり悪影響が出てしまいます。
そこで、何かしら話せるテーマを持った人が、代打で話してしまうことをオススメします。
このとき、上記の「みんなが興味のある分野でたくさん話せる人」がいると、勉強会自体は開催するということにしやすいです。
9. 勉強会自体を目的にする
「勉強会は仕事に活かすことを目的だ」という方もいるかもしれませんが、続けるためには「仕事にも役立つかもしれないけど、そもそも勉強会自体が目的」となっている方が続きやすいです。
これは「仕事には後から生きてくる」という意味ではなく、「役立つかより面白いかを重視する」という意味です。
個人の性格にもよるので絶対にとは言えませんが、「勉強会を開催し、何かを学ぶこと」くらいを目的にできると長続きしやすいかもしれません。
10. 毎回一緒にご飯にいく
最後になりますが、この 1 年開催した勉強会では、みんなで毎回同じお店にランチに行っていました。
一緒にご飯にいくと結束も固まり、雑談する中で次回の勉強会のテーマが決まったりもします。
個人的に「うまくいくプロジェクトはチームでランチに行っている」というイメージもあります。
ランチならお金的にも優しいですし、特に土曜であれば毎回行きやすいです。
「毎回このお店」というお店が決まっているとなお良いかもしれません。
おわりに
さて、このようにして毎週 4 時間の勉強会が 1 年間続く仕組みはできたのですが、課題がないわけではありません。
例えば、
- 議論の前提となる知識が増えすぎて、途中から新メンバが参加しにくい
- 習慣化しすぎてモチベーションが下がりつつある
といった課題があります。
とはいえ、「来年はこういうことやりたいね」といった話もたくさん出ているので、これらの課題に対処しつつ、また 1 年間トライしてみようと思います。
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毎週 4 時間ということは、1 ヶ月あたり 16 時間 = 2 日分、1 年あたり 24 日 = 1 ヶ月分です。1 ヶ月間仕事を休んで研修を受けるくらいの効果かもしれません ↩