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相対的リスク回避度の推定

Last updated at Posted at 2021-05-17

株式投資をする投資家にとってのリスク回避度の測定方法の一つをこの記事で紹介します。

#相対的リスク回避度とは

相対的リスク回避度 (Coefficient of Relative Risk Aversion)とは、資産の変動率をリスクの大きさと捉え、投資家がどれだけリスクをとることを避けたいと考えているかを示した数値
(引用元 : ファイナンス用語集)

相対的リスク回避度は次の式で示されます。

$$\lambda(x) = - \frac{x u^{\prime\prime}(x)}{u^{\prime}(x)}$$

~記号の説明~
$x$: 資産
$\lambda(x)$: 相対的リスク回避度
$u(x)$: 投資家の効用関数

#相対的リスク回避度の推定
相対的リスク回避度を求めるには上記の定義から、投資家の効用関数が必要となりますが、効用関数を推定することが困難です。
そこで以下のように定式化することで、相対的リスク回避度の推定をすることがあります。

$$ \lambda = \frac{\mu_{risk} - r_f}{\alpha\sigma_{risk}^{2}} $$

~記号の説明~
$\lambda$: 相対的リスク回避度
$\mu_{risk}$: 危険資産全体の期待リターン
$\sigma_{risk}$: 危険資産全体のリターンの標準偏差
$r_f$: リスクフリーレート
$\alpha$: 危険資産保有割合

危険資産全体のリターンの期待値・標準偏差は以下の通りです。
$$ \mu_{risk} = \sum_{i=1}^{n}w_i\mu_i $$

$$\sigma_{risk} = \sqrt{\sum_{i=1}^{n}\sum_{j=1}^{n}w_i w_j\sigma_i\sigma_j}$$

$$ \sum_{i=1}^{n}w_i = 1 $$

~記号の説明~
$\mu_{k}$: 銘柄 $k$ の期待リターン
$\sigma_{k}$: 銘柄 $k$ のリターンの標準偏差
$w_k$: 銘柄 $k$ への投資割合

#導出方法
相対的リスク回避度 $\lambda$ 推定式の導出方法を説明します。

##導出方法①
確実等価額 $\hat{X}$ は以下の式で定義される。
$$u(\hat{X}) = E(u(X))\tag{1}$$

$u(X)$ を$\mu_x$ の周りでテーラー展開し3次以降の項を無視すると、
$$u(X) \approx u(\mu_X) + u^{\prime}(\mu_X)(X - \mu_X) + \frac{1}{2}u^{\prime\prime}(\mu_X)(X - \mu_X)^2 $$
となり、両辺の期待値をとると確率変数は$X$のみであることから
$$E(u(X)) \approx u(\mu_X) + u^{\prime}(\mu_X)E(X - \mu_X) + \frac{1}{2}u^{\prime\prime}(\mu_X)E[(X - \mu_X)^2] $$
$$\approx u(\mu_X) + \frac{1}{2}u^{\prime\prime}(\mu_X)\sigma_X^2\tag{2}$$
$u(\hat{X})$ についても同様にテーラー展開し2次以降の項を無視すると、
$$u(\hat{X}) \approx u(\mu_X) + u^{\prime}(\mu_X)(\hat{X} - \mu_X)\tag{3}$$
(1)式より(2),(3)式の右辺はそれぞれ等しくなることから、$\hat{X}$について整理すると、
$$\hat{X} \approx \mu_X + \frac{1}{2}\frac{u^{\prime\prime}(\mu_X)}{u^{\prime}(\mu_X)}\sigma_X^2\tag{4}$$
$$\Longleftrightarrow\hat{X} \approx \mu_X - \frac{1}{2}\frac{\lambda}{\mu_X}\sigma_X^2\tag{4}$$

初期資産を$X_0$(定数), 収益率を$R$(確率変数)とすると、
$$X = (1 + R)X_0$$
(4)式に代入すると、
$$\hat{X} \approx E((1 + R)X_0) - \frac{1}{2}\frac{\lambda}{\mu_X}V((1 + R)X_0)$$
$$ \approx X_0E(R) + X_0 - \frac{1}{2}\frac{\lambda}{\mu_X}X_0^2V(R)$$
$$ \approx X_0E(R) + X_0 - \frac{1}{2}\lambda X_0V(R)\tag{5}$$
($\mu_X \fallingdotseq X_0$とした)

今回、危険資産の保有割合・リターンをそれぞれ $\alpha$, $R_{risk}$ とし、リスクフリーレートを$r_f$とすると、(5)式より
$$\hat{X} \approx X_0 \bigl((1 - \alpha)r_f + \alpha E(R_{risk})\bigl) + X_0 - \frac{1}{2}\lambda X_0V(\alpha R_{risk})$$
$$\approx X_0 \bigl((1 - \alpha)r_f + \alpha \mu_{risk} + 1 - \frac{1}{2}\alpha ^2\lambda \sigma_{risk}^2\bigl)$$
投資家は確実等価額を最大化すべく$\alpha$を決定し、投資を行うことが合理的であるため、
$$\frac{\partial \hat{X}}{\partial \alpha} = X_0 \bigl((\mu_{risk} - r_f) - \alpha \lambda \sigma_{risk}^2 \bigl) $$
この値が0の時に、投資家の確実等価額が最大となる。

この時の$\lambda$は

$$ \lambda = \frac{\mu_{risk} - r_f}{\alpha\sigma_{risk}^{2}} $$

##導出方法②
以下の記事に、別の導出方法(ブラウン運動を用いた導出)が記載されています。

##応用
以下にこの測定方法を採用した、ポートフォリオ分析の記事を載せているので是非読んでみてください。

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