概要
SPHERICというSPH法(粒子法)の組織がValidation Tests(SPH Benchmark Test Cases)を公開しています。[1]
ここではテストケース10の2次元スロッシング問題をOpenFOAMで計算を行い、妥当性確認を行います。
OpenFOAMはESI版のv2112を使用します。
乱流モデルはk-εモデル(realizable k-εモデル)およびレイノルズ輸送モデル(LRR)を使用します。[2]
[1] https://www.spheric-sph.org/validation-tests
[2] 鵜沢, 三次元矩形貯水槽の非線形スロッシング解析 (2012)
解析モデル
解析条件
振動はconstant/dynamicMeshDictで設定します。
FoamFile
{
version 2.0;
format ascii;
class dictionary;
object dynamicMeshDict;
}
dynamicFvMesh dynamicMotionSolverFvMesh;
motionSolver solidBody;
solidBodyMotionFunction tabulated6DoFMotion;
CofG (0.45 0 0);
timeDataFileName "<constant>/positionOriginal.dat";
CofGは振動を与える軸(y軸)の中心点を示します。
時系列データは公開されているデータの次の列を使用します。
-
Time[s]
-
Position_original[deg]
時系列データのフォーマットは次のような形式です。60001 // 総データ数
(
(0 ((0 0 0) (0 1.143341E-09 0))) // Time[s] x,y,z位置変位タプル[m] x,y,z軸廻りの回転量タプル[deg]
(5E-05 ((0 0 0) (0 0.001194 0)))
(中略)
(2.99995 ((0 0 0) (0 -3.994658 0)))
(3 ((0 0 0) (0 -3.994658 0)))
)
解析結果
realizable k-εモデル
テストケース10の結果をExperiment、解析結果をCalculationで表した、側面の圧力の比較図を以下に示します。
アニメーションを以下に示します。
LRR
realizable k-εモデルと同様に、側面の圧力の比較図を以下に示します。
アニメーションを以下に示します。
圧力の振動について
realizable k-εモデルおよびLRRの両方で、最大圧力到達後の圧力の振動が激しいことがわかります。
これは時系列データのPosition_original[deg]に重複があり、補間が上手く計算できていないことが原因と考え、重複を除去した時系列データを用意して、再度解析を実施しました。
なお、補間値はinterpolateSplineXYクラス($FOAM_SRC/OpenFOAM/interpolations/interpolateSplineXY)を使用して求めています。
補間にはCatmull-Rom法を用いています。
解析結果(時系列データ修正後)
realizable k-εモデル
テストケース10の結果をExperiment、解析結果をCalculationで表した、側面の圧力の比較図を以下に示します。
アニメーションを以下に示します。
LRR
realizable k-εモデルと同様に、側面の圧力の比較図を以下に示します。
アニメーションを以下に示します。
まとめ
時系列データの重複を削除すると、圧力の振動はある程度抑制されることがわかりました。
側面の圧力の最大値の比較を以下に示します。
Time[s] | Max Pressure[Pa] | Experimentとの差[Pa] | |
---|---|---|---|
Experiment | 2.3749 | 3683.36 | - |
realizable k-ε | 2.3746 | 6288.97 | 2605.61 |
LRR | 2.3631 | 2683.61 | -999.749 |
realizable k-ε(時系列データ修正) | 2.3741 | 4826.16 | 1142.80 |
LRR(時系列データ修正) | 2.36 | 2554.93 | -1128.43 |