今回は、新しく公開された GitHub Copilotの新しい機能「Copilot Coding Agent」について、いろいろ触ってみたので、できることや具体的な使い方をまとめました。
「AIに仕事を奪われる」なんて言われる時代ですが、むしろ「面倒な作業をAIに奪ってもらう」くらいの気持ちで活用していきましょう。
Copilot Coding Agentとは?
簡単に言うと、コードを書いてくれるAIの相棒が、PRまで作ってくれるようになりました。
これまでの Github copilotでは、VS Codeの拡張機能やCodespaceなどエディタを主体として操作していましがが、Coding Agentは、Web UIやチャット経由でも「直接リポジトリを自動操作できるエージェント」になりました。チャットやIssueなどから自然言語で指示し、AIがリポジトリへの自動修正・PR作成まで実行でき、「自然言語での指示からコードの自動生成・修正・Pull Request(PR)作成まで」を一貫して実施できるAIエージェントです。
「あのコード書くの面倒だなぁ…」「バグ修正したいけど原因特定が大変…」という煩雑な手作業を減らし、開発プロセス全体の自動化・効率化を支援してくれます。
歴史
GitHub Copilot Coding Agentは、最初「Project Padawan」(スターウォースファンにはニヤリとくるネーミング)というコードネームで2025年2月に発表されました。そして2025年5月19日のMicrosoft Buildカンファレンスで正式に「Copilot Coding Agent」として公開プレビュー版が発表。これは従来のVS Code内での「Agent Mode」をさらに発展させたもので、GitHubプラットフォーム全体に統合された独立型AIエージェントとなっています。もはや「AI搭載の同僚」と言っても過言ではありません。
利用できるプラン(2025年5月時点)
利用できるプランは以下の通りです。
- Copilot Pro+(個人/組織向け) → 利用可能
- Copilot Business(組織向け) → 利用可能
- Copilot Enterprise(大規模組織・追加の管理/セキュリティ機能) → 利用可能
何ができるの?――主な機能一覧
1. コードの自動生成・修正
- 指定したリポジトリに、関数やクラス、ファイル、設定などを自動生成。まるで「クリエイト・テーブル」のようにサクッと作れます。
- 既存のコードに対して、リファクタリングや改善提案を自動で実施。「これ、技術的負債かも…」と思っていた箇所も救済できます。
例:
「main.py
に新しいログ出力機能を追加してください」
「UserService
クラスのメソッドをリファクタリングして」
2. バグ修正・テスト自動生成
- バグレポートやエラー内容を伝えると、該当箇所をAIが特定し修正PRを作成。
- 新旧機能のテストコードを自動生成し、テストの抜け漏れを防止。
例:
「APIのバグを修正してテストも追加してほしい」
「user.py
にユニットテストを書いて」
3. ドキュメント・コメントの自動生成
- READMEや関数コメント、APIドキュメントを自動作成・更新。
- コードの説明文や使い方ガイドも生成可能。
例:
「README.mdを最新仕様に合わせて更新して」
「login
関数に詳細なコメントを追加」
4. Pull Request(PR)の自動作成・管理
- 指示内容に基づき、差分を作成して自動でPRを作成。
- PRタイトルや説明文もAIが自動記述し、レビューの効率化。
例:
「新機能の追加をPRとして作成して」
「この修正内容でPRを出して」
5. コードレビューと改善提案
- コードの問題点や改善案をAIがレビュー時にフィードバック。
- セキュリティやパフォーマンス観点でのアドバイスも可能。
例:
「このPRのコードレビューをして」
「パフォーマンス改善案を挙げて」
使い方ガイド
Step 1. Copilot Coding Agentの有効化
たとえば個人向けのPro+プランでは以下の方法で有効にできます。
[GitHub設定画面でのCoding Agent設定]
ユーザー設定画面からCoding Agentの有効化や適用範囲を設定できます
Step 2. Copilot Coding Agentにアクセスできる場所
Coding Agentは以下の場所から利用できます。
- GitHub.com の Copilot Chat(右下Copilotアイコンからアクセス...あのニコニコしたアイコン)
- Pull Request画面やコード閲覧画面のCopilotパネル
- VS Code/JetBrainsなどエディタ内のCopilot Chatパネル
必ずしもIssueに書く必要はありません。チャットUIで直接指示してください。
GitHub Copilotチャットインターフェースの例
Copilot Chatでリポジトリについて質問したり、タスクを指示したりできます
Step 3. リポジトリやブランチを指定
最初に修正・提案したいリポジトリやブランチを伝えます。「どこで作業するのか」をAIに教えてあげましょう。
「github/hello-worldのmainブランチに新しいエンドポイントを追加して」
「foobar/sample-app の develop ブランチにバリデーションを追加してください」
ポイント:
リポジトリをまたぐ作業や、現在とは異なるブランチの場合は、必ず明示的に「owner/repo」「branch名」を記載しましょう。AIは優秀ですが明示しないと迷子になります...まだね。
Step 4. やりたいことを自然言語で指示
日本語・英語どちらでもOK。
「AIっぽく難しく言わなきゃ」なんて考えず、普段同僚に頼むような感じで要望をそのまま伝えましょう。
「バグを修正して」
「テストを自動生成して」
「APIドキュメントを作成して」
「UserServiceクラスのリファクタリングをお願いします」
「READMEを最新仕様に更新して」
Step 5. AIが自動でPRを作成
指示内容をもとにAIが修正し、PRを作成します。
内容を確認・レビューしてマージします。
Copilotが自動でリファクタリングを行い、PRを作成した例。修正内容の説明も丁寧です
また、以下のように直接Issueを書いて、Copilotに担当を割り当てることも可能です。
新しいIssueを作成し、右側の「Assignees」からCopilotを選択できます
Copilot Coding Agent活用のコツ
-
要件はできるだけ具体的に!
ファイル名・クラス名・変更内容を明示すると、意図通りの結果になりやすいです。 -
Issueライクに構造化すると精度UP
「目的」「背景」「期待する動作」などを箇条書きにするとAIが理解しやすくなります。 -
小さな要望から試してみる
いきなり「システム全体を再設計して」とか言わず、まずは「リファクタリング」や「コメント追加」など簡単な指示から始めてみましょう。 -
大きな修正は小分け推奨
「全部書き直して」よりも「この関数」「あのクラス」と小さな単位で頼むと失敗しにくいです。 -
複数の要望も一度に指示できる
「バグ修正とテスト追加」を同時に依頼できます。 -
出力フォーマットやコーディング規約も指定できる
例:「PEP8準拠で書いて」「JSDocコメントを追加して」など。 -
自動PR作成でレビュー効率UP
PRの説明文やタイトルも自動生成されるため、レビューやチーム共有もスムーズです。 -
生成内容は必ず確認・レビュー
AIによる変更は意図しない影響を及ぼすことも。PR内容は必ずチェックしましょう。
具体的な指示例
新機能実装の指示例
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フィーチャー追加
users-serviceリポジトリのmainブランチに、ユーザーのプロフィール画像をアップロードする機能を追加してください。画像は最大5MBまでのJPEG、PNG形式のみ許可し、S3に保存するようにします。 (画像容量の制限忘れて炎上したことあるんです...)
-
APIエンドポイント作成
api-gatewayのdevelopブランチに、商品在庫を検索するRESTエンドポイントを追加してください。クエリパラメータとして商品名、カテゴリ、在庫数の範囲を受け取れるようにします。
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UI機能実装
frontend-appのfeature/dashboardブランチで、ダッシュボード画面にデータ可視化グラフを追加してください。Chart.jsを使用して、過去30日間のユーザーアクティビティを表示するラインチャートを実装します。
リファクタリング・最適化の指示例
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パフォーマンス改善
backend-serviceのutils/database.jsファイルを最適化してください。特に大量データを扱うfetchAllRecordsメソッドのクエリ実行が遅いので、インデックスを活用するなどしてパフォーマンスを改善してください。
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コード品質向上
auth-serviceのsrc/middlewareディレクトリにあるファイルをリファクタリングしてください。重複コードを削減し、より読みやすく保守しやすい構造にしてください。ESLintのルールにも準拠するようにします。
バグ修正の指示例
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エラー対応
order-serviceのcheckout処理で「Cannot read property 'id' of undefined」エラーが発生しています。このバグを修正し、未定義値の適切な処理を追加してください。
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セキュリティ修正
api-gatewayのauthentication.jsにXSSとCSRF脆弱性があります。適切なバリデーションと防御策を実装してセキュリティを強化してください。
テスト作成の指示例
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ユニットテスト追加
core-libraryのsrc/utils/formatter.jsに対するユニットテストをtests/utilsディレクトリに追加してください。全ての公開メソッドに対して、通常ケース、エッジケース、エラーケースのテストを作成してください。Jest使用。
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E2Eテストシナリオ
e-commerceプロジェクトのCypressテストに「ユーザーログインから商品購入までの一連のフロー」をテストするシナリオを追加してください。
ドキュメント作成の指示例
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APIドキュメント
payment-apiのエンドポイントについて、OpenAPI/Swagger形式のドキュメントを作成してください。各エンドポイントのリクエスト・レスポンス形式、必須パラメータ、エラーレスポンスを詳細に記述してください。
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READMEアップデート
microservices-demoプロジェクトのREADME.mdを更新して、最近追加されたキャッシング機能とロギング機能の説明、設定方法、トラブルシューティングセクションを追加してください。
GitHub Copilot Coding Agent が利用できる場所
- 自分のリポジトリ・組織のリポジトリ(権限あり)ならCoding Agentは利用可能
- 他人のリポジトリは基本不可**(権限があれば例外的に可)
- チャットUIが主流、Issueからの直接利用は今後拡大の見込み
リポジトリの種類別
リポジトリの種類 | 利用可否 | 備考・条件 |
---|---|---|
自分のリポジトリ | 〇(利用可) | 対象リポジトリに**書き込み権限(Write権限)**が必要。 |
組織のリポジトリ | 〇(利用可) | 組織リポジトリでも書き込み権限があれば利用可能。組織のCopilot有効化+必要なプランも要件。 |
他人のリポジトリ | △(基本的に不可) | 書き込み権限があれば利用可能だが、通常は権限がないため不可。PublicリポジトリでもPR作成等は不可。 |
コントリビュート権限のみ | △(限定的に可) | コントリビューターとして書き込み権限が付与されていれば可。PR作成権限が必要。 |
指示方法別の違い(チャット vs Issue)
指示方法 | 利用可否・条件 |
---|---|
Copilotチャット | **対象リポジトリに「書き込み権限」+必要なCopilotプラン(Pro+/Business/Enterprise)**があれば利用可能。 |
Issue | (2025年5月時点)Issueから直接Coding Agentに指示できるかは機能のロールアウト状況による。 |
一部のユーザー・リポジトリで「IssueからPR作成」のような体験が可能な場合もあるが、基本はチャットからの指示が主流。 |
-
必須条件
- Copilot Pro+/Business/Enterpriseプランの契約
- 対象リポジトリに「書き込み権限(Write)」が付与されていること
-
他人のリポジトリ(Public含む)
- 普通は書き込み権限がないため、Coding Agentは利用不可(フォークして自分のリポジトリで使うことは可能)
-
組織リポジトリ
- 組織側でCopilot有効化+自分に権限付与が必要
-
Issueからの操作
- 現状はチャット経由の利用が確実。Issueから直接エージェントを呼び出す機能は順次展開中。
注意点
- 対象リポジトリやブランチの指定は忘れずに。AIに「どこで」作業するのか教えてあげないと迷子になります。
- AIの提案内容は100%正解とは限らないので、必ずレビュー・テストしましょう。
まとめ
GitHub Copilot Coding Agentは「開発の自動化・効率化を加速させるAIパートナー」です。
自然言語で指示を出すだけで、修正・追加・テスト・ドキュメント化・PR作成までをワンストップで自動化できます。
ぜひ皆さんも、日々の開発現場でCopilot Coding Agentを活用して、よりスマートな開発ワークフローを体験してみてください。
関連リソース
公式ドキュメント
- GitHub Copilot Coding Agent 公式ドキュメント - 詳細な使用方法とベストプラクティス(英語...翻訳待ち)
- GitHub Copilot プラン比較 - Pro+、Business、Enterpriseの違い
- GitHub Actions との連携 - バックグラウンド処理の仕組み
解説リソース
- GitHub Blog: Meet the new coding agent - Coding Agentの詳細解説
- GitHub Changelog: Coding Agent in public preview - 最新アップデート情報(英語ですが短いです)
- VS Code Blog: Introducing GitHub Copilot agent mode - VS Code上での使い方(スクショ多め)
コミュニティリソース
- GitHub Community Discussions - 質問・意見交換ができる公式コミュニティ
- GitHub Issues - フィードバックの提出先(バグ報告はここで!)