本記事はラクスパートナーズ Advent Calendar 2024の16日目の記事です。
はじめに
2024年11月23日にAWSの新資格であるAI Practitioner(AIF)に合格しました。
(2025年2月15日までに合格した場合はアーリーアダプタバッジが貰えます!)
対策情報の少なさや機械学習の知識不足に苦労し、学習方法に悩みながらも無事に約2週間で合格することができました。
本試験の学習方法について課題を感じている方も多いのではないか思います。
そこで、学習方法の参考として、合格体験談と使用した教材を公開してみたいと思います。
※長くなってしまったので、要点は太字にしました。
読む際にはざっと見出しと太字を流し読みして、気になる部分は詳しく読むといった使い方が良いかと思われます。
本記事の対象者
- AIFに挑戦してみたいけど何からやったらいいかわからない方
- 独学でAIFの学習を進めているが苦戦している方
- AIF受験にかける費用をできるだけ抑えたい方
前提
筆者のスペック
非情報系学部卒、前職は営業。
2024年7月にラクスパートナーズ入社。
3か月の研修を経て、11月より公共系SIerのインフラ構築プロジェクトに参画。
受験日(2024/11/23)時点でのIT経験
- AWS:3か月のハンズオン経験、2024/11/09にSAA取得
- AI:前提知識なし
- その他:Linux上でのサーバ、オンプレネットワークの構築
このようにIT経験が浅い状態でも合格できました!
本記事を通して、同じような立ち位置の方に「自分も合格できるかも」と感じてもらい挑戦するきっかけになれば嬉しいです。
そもそもAWS AIFとは?
AWS AIFは2024年8月に登場した新しいAWS認定資格です。
上位資格であるAWS Certified Machine Learning Engineer - Associate(通称MLA)も登場しています。
上記2資格の登場から、今後はAIやML関連サービスを拡充させていきたいというAWSの方針が伺えます。
試験の概要
本試験では、主に以下のような内容が問われます:
- AI/機械学習の基礎知識
- 生成AIの概念や運用方法
- AWSで利用可能なAIサービス(SageMaker、Rekognition、Bedrockなど)の設定方法
- プロンプトエンジニアリングや運用上の注意点
AIの動作原理や構築~運用に関する知識を広く身に着けることができます。
受験のメリット
個人的には、生成AIの具体的な活用方法を身に着けられる点が受験の最大のメリットだと感じました。
試験範囲には「プロンプトエンジニアリング」と呼ばれる生成AIの出力精度を向上させるための手法が含まれており、学習した内容はChatGPTなどの生成AIを使った日常業務にすぐに活かすことができます。
AWSや機械学習が専門でなくても、AIを使う方なら誰にとっても役立つ試験ではないかと考えています。
AIF受験に立ちはだかる障壁(3つの壁)
このように有意義な試験ではある一方で、新試験であるがゆえの課題も存在します。
受験にあたり、私が特に感じた3つの壁を以下にまとめました。
1. 学習リソースの壁
2024年12月15日現在の時点においても対策本が出版されていません。
ネット上の試験情報を収集しながら対策する必要があるため、独学だと何から始めたらいいか判断が難しい状況です。(一応、AWS公式サブスクAWS Skill Builderに加入するという手もありますが、金額はひと月当たり約4000円とやや高めです…)
2. 前提知識の壁
クラウドとAIの知識が両方とも求められるため、どちらかが不足していると学習難易度が上がります。筆者の場合はAIの知識が不足していたため学習初期は苦労しました。
特に機械学習のアルゴリズムやモデル構築手法は専門用語が難しく感じ、理解に時間がかかりました。
3. 受験料の壁
受験料が1.5万円、自費だと負担がかなり大きいです。
※資格補助制度がある企業でも、登場して日が浅いために未対応な場合があります。
前述したAWS公式サブスクに加入を検討する場合、学習コストがさらに増大してしまいます。
試験対策
0.試験の準備
※そこまで重要ではないため、興味が無ければ読み飛ばしてください
11/09のSAA試験を済ませた後、すぐにAIFの準備に取り掛かりました。
受験料半額クーポンとAWSサービスの知識を流用できるため、受験が楽になります。事前にCLFやSAA等のAWS資格に合格しておくと比較的お得です。
試験について知る
学習を始める前に、合格に必要な知識や出題傾向を調査しました。
具体的に行ったことは以下の3点です。
- 合格体験談を検索
- 試験ガイドに目を通す
- 学習リソースを調査し、選定する
1. 合格体験談を検索
ネット上で合格体験談を検索しました。重要なのは、執筆者の前提知識や背景についても確認することです。IT初心者からAWS全冠保持者まで、幅広いレベルの人々が体験談を書いています。自分と近い前提知識を持つ方の体験談を中心に読み込みました。
その結果、以下の共通点が見えてきました
- 試験ガイドを確認している
- AWS公式の無料教材を活用している
- AI/機械学習の知識を補うためにAI資格対策本(G検定など)やネット記事 を参照している
これらを参考に、学習計画立てました。
2. 試験ガイドに目を通す
AWS公式が提供している試験ガイドを参照し、出題分野や比重を確認しました。詳細を読み込む必要性は少ないと感じましたが、試験の全体像をざっくり把握するためには有益でした。
3. 学習リソースを調査し、選定した
合格体験談に記載されていた教材に触れつつ、追加で使えそうな学習リソースを調査しました。調査と選定結果を以下のようにまとめました。
◎:メインで使った 〇:補足資料として軽く参照した程度 △:使わなかった
リソース | メリット | デメリット | 費用 | 利用頻度 |
---|---|---|---|---|
① AWS公式無料講座(13時間) | 試験に直結、基礎知識の習得に最適 | 完了までに時間がかかる | 無料 | 〇 |
② AWS公式無料模試(20問) | 試験範囲の確認ができる | 問題数が少なく、実践的な演習には不十分 | 無料 | 〇 |
③ AWS公式有料講座+模試 | 試験範囲を網羅し、十分な演習量を提供 | 高コスト、時間がかかる | 月4,000円 | △ |
④ Udemyの模擬試験 | 模擬試験の分量が多く、試験傾向を掴みやすい | 解説が不足している場合がある | セール時1,800円 | ◎ |
⑤ 技術ブログ | 実体験に基づく具体的な情報が得られる | 情報が古い場合や信頼性が低い場合がある | 無料 | ◎ |
⑥ AI資格の対策書籍 | 機械学習の基礎を体系的に学べる | 試験範囲外の内容が多く、効率が悪い | 約2,500円 | △ |
⑦ その他ネット検索 | 必要な情報をピンポイントで調べられる | 情報の信頼性や網羅性に欠ける | 無料 | ○ |
受験費用を抑えたかった点、受験までの期間が短かった点から、④と⑤をメインに使用しつつ、適宜①、②、⑦を参照するといった形で学習することに決めました。
1.インプット
教材 技術ブログ
メインのインプット教材として、クラスメソッド社が公開している社内勉強会資料を拝読させていただきました。下記の3部作を読み込むことで試験に必要な知識の大半をカバーできました。
「AWSの新認定試験 AWS Certified AI Practitioner (AIF) 勉強会を実施したのでその内容をまとめました」
- 【その1:AI/ML一般知識】
- 【その2:生成AI+Bedrock】
- 【その3:SageMaker+その他】
それぞれ要約動画付きで、試験に必要なAI/機械学習の基礎やAWSサービスの内容がわかりやすくまとめられています。
- 動画視聴でざっくり全体を把握
- 記事を読んで細かい点まで理解
- 疑問点があればネット検索で深堀る
といった流れで学習しました。
また、理解した知識はNotion等にメモをして内容を整理していました。
(トグルリストが便利です。知識をツリー状に配置することで思考が良くまとまります。)
引用: AWSの新認定試験 AWS Certified AI Practitioner (AIF) 勉強会を実施したのでその内容をまとめました【その2:生成AI+Bedrock】
2日かけてインプットした後は、残りの時間をアウトプットに割り当てました。
2.アウトプット
教材 Udemyの模擬試験問題
日本語版のUdemy問題集をメインに使い、やり込みました。
「AIF-C01 / AWS Certified AI Practitioner 模擬試験(4回分)+補足問題」
試験対策のほとんどの時間を費やしましたが、大正解だったと感じています。
内容は模擬試験4回分+補足問題となっており、本試験の対策として非常に役立ちます。
教材の難易度と本試験との比較
本番と比べて問題の難易度は優しめですが、主要な用語や論点は十分カバーされていました。 受験後の印象として、本教材で学んだ知識は本番試験でも役立ちました(筆者個人の感想です)。 本番では、本教材をやり込んで得た知識を基に選択肢を絞り込みながら問題を解いていました。
効率的な進め方
模擬試験は、第1回と第2回を繰り返し解き、その後すぐに補足問題に移るという学習の仕方がおすすめです。模擬試験は重要な論点が繰り返し出題される構成になっているため、第1回と第2回を重点的に復習することで、第3回と第4回の内容も自然とカバーできます。
筆者自身も第1回と第2回を5周ほど解いた結果、第3回と第4回は8割以上得点できる状態になったため、これらは飛ばして補足問題の学習に取り組みました。補足問題は追加の知識が必要ですが、本試験でも類似問題が出題されていたため、十分やる価値があると考えます。
演習の進め方
最初のうちは解けない問題ばかりでかなり凹みます。挫折しないための工夫として、最初から全問を理解しようとせず、1回の演習で5~10問ずつ理解していくことを目標にしました。こうすることで学習のハードル下げてモチベーションを保てるようしました。
以下の手順で問題演習を進めました。
1. 模擬試験1回分(65問)を解く
分からない問題はスキップして解答を提出しました。初回では大体5問程度はまぐれで正解できます。
2. まぐれで正解した問題(約5問)を理解する
下記3つの観点で設問や選択肢を調べ、インプット時と同様に理解できた内容をメモしていきました。
- 設問と選択肢の意は理解できているか?
- なぜ正解がその選択肢なのか理解できているか?
- 知らない単語はあるか?あった場合、その意味は?
問題が解けない理由は上記3項目のいずれかに起因すると考えられます。
次の回では根拠をもって正解できるようになることを目指して復習しました。
3. 同じ模擬試験の2周目を解く
根拠をもって答えられた問題はブックマークして解答を提出し、問題を以下の4種類に分けました。
- ①ブックマーク付き正解
- ②ブックマーク付き不正解
- ③まぐれ正解
- ④不正解もしくは未回答
4. ②と③(約10問)を復習して理解する
1周目と同じ方法で②ブックマーク付き不正解と③まぐれ正解のみを復習しました。
①ブックマーク付き正解は既に理解できていたため、④不正解もしくは未回答については数が多すぎたためこの周ではスキップしました。
5. 以降、全問正解するまで解答→復習の周回を繰り返す
65問全てを正解できるまでブックマークをつけながら演習を繰り返しました。 筆者の場合、4周目で不正解もしくは未回答が約10問程度に絞られていたため、これらを仕上げて5週目に入った時点で満点を取ることができました。その後は第2回目の模擬試験に進みました。
このように、理解できる問題の範囲を少しずつ広げていくことで試験対策を進めていきました。
3. 補足資料
メイン教材の補足用として使っていた資料を2種類紹介します。これらに記載されていない内容については、ネット検索をして出てくるAWS公式ドキュメントやピンポイントで内容が載っているネット記事を参照していました。
1. AWS Skill Builderの無料講座
AWSが提供している無料の試験対策教材で、利用するにはアカウント登録が必要です。
-
Standard Exam Prep Plan: AWS Certified AI Practitioner (AIF-C01)
読み進めるタイプの教材で、学習想定時間が約13時間と分量が多めです。
出題されるAWSサービス一覧を確認する目的で流し読みして活用しました。 -
Exam Prep Official Practice Question Set: AWS Certified AI Practitioner (AIF-C01)
公式が提供している無料の模擬試験で、20問の模擬問題が付いています。
試験前日の実力チェックのために使いました。
2. G検定(AI・機械学習)機械学習用語集
機械学習用語集は、わからなかった機械学習用語を調べるために使用しました。
図を使った解説と理解度チェック問題が付いており、非常に分かりやすい資料でした。
4. 試験当日
試験当日は、直前までインプット学習のメイン教材と、自身で作成したNotionのメモを見返していました。
試験が始まり5問目あたりから未学習の概念が登場し、不安を感じました。30問目くらいまでは、自信をもって解答できた問題が半分ほどで、残りは2択まで絞れた問題とわからない問題がそれぞれ半々でした。
40問目あたりで疲労から集中力の途切れを感じましたが、その後持ち直して全問解き終わった時点で20分ほど見直し時間ができました。特に後半に疲労を感じた部分を中心に見直し、自信がなかった問題を再確認しました。最終的に、わからなかった問題は20問ほどでした。
受験終了から約6時間後、認定バッジと合格通知のメールが届きました。得点は716点で、合格点の700点を少し上回る結果でした。
あとがき
想定していたよりも記事が長くなってしまいましたが、本記事は以上となります。
振り返ってみると、これはAIF試験に特化した学習法というよりも、勉強法そのものの方法論に近い内容になったかもしれません。他の試験、例えばMLAなども、今回の流れを参考に対策を試してみたいと思います。
また、こうして自分の学習の軌跡を言語化して振り返る機会はこれまでなかなか無く、文字に起こすことで初めて気づいた工夫も多くありました。これにより、学習の再現性が高まったと感じています。アウトプットによる言語化がノウハウの再現性を高める現象は、勉強法だけでなく技術の習得にも有効だと思うので、またどこかで技術ブログの執筆に挑戦してみたいです。次回はもっと端的にまとめられるよう頑張ります。
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。少しでもAIF受験の参考になれば嬉しいです!
参照記事