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Perlは愛だ - YAPC::Tokyo 2019に参加してみて -

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※この記事はPerlメインの国内カンファレンスであるYAPC::Tokyo 2019に参加した所感です。

 実に4年振りに参加した国内YAPC。

そこに参加していること自体が、極上の映画を鑑賞しているような体験だった。
参加して一日経った今日、その体験はいったいどこからくるのかを考えた。

結果、それはであるという結論に至った。
以下はその理由をまとめたものである。

報恩謝徳

 今回のテーマは「報恩謝徳」である。恩に感謝し報いるということを意味する。歴史の長いPerlならではだ。いままでやってきたこと。そこで得たもの。そしてこれから。

 このテーマを掲げられることが、Perlという言語を中心としたコミュニティの資産であると思う。きらびやかな仏像も美しくてテンションが上がるが、歴史を重ねて色が抜け、深みのある様相となったそれはもはや文化遺産である。

PerlはWebアプリケーション開発の古典としての位置を超え、世界文化遺産になろうとしているのではないか。そう感じさせるテーマである。

Perlの文化を支えるもの

思想(やりかたはひとつではない)

 Perlには、「やり方はひとつではない(There's More Than One Way To Do It. 頭文字を取ってTMTOWTDIと呼ばれる)」というスローガンがある。多様性を許容する環境が当初から存在していたのだ。それを強く感じた発表(以下、トークと称する)が、広木 大地氏の『2つのDXと技術的負債』である。

詳細はリンク先の資料に委ねるとして、このトークにはPerlの話やプログラミング、アーキテクチャの話は強く出てこない。このトークの趣旨は、「エンジニアリングとは何かを俯瞰して捉え、それはプログラミングすることやアーキテクチャを設計することだけではなく、良い組織化を行うことでより効果的に達成できるのではないか」であると思った。つまり、生産性を高めたり品質を上げたり、世界を良くするための技術はプログラミング技術だけではないということだ。

このトークがYAPCでされたことの背景に、Perlのスローガンが少なからず寄与しているのではと感じる。そもそもYAPCとはYet Another Perl Conference(Perlだけじゃない、Perlに留まらない)カンファレンスであるということを意味している。その根本には、寛容さがあると言ってよい。

開発文化(後方互換性と未来)

 大仲 能史氏のトークはRuby on Rails特有の機能をPerlで使えるようにしたというもの。面白い。ファンキーで、何よりロックだ。

 氏は質疑応答の場で、「RubyからPerlに取り入れたいと思った考え方はありますか?」という質問に対し、Perlの後方互換性を挙げた。「Perlの異常に素晴らしい後方互換性。Rubyもそろそろこれを考えないといけない時期にきているのかな」と。

面白いのは、後方互換性を維持することで逆に安心して新しい開発へ挑戦できるということだ。
単なる利便性に留まらず、(そうと意識していないにしても)未来のことを考えた開発ができるというのは良いことだと思う。

歴史の長さ(言語との大人な関係)

 teckl氏の『レガシーPerlとPerlのこれから』を聴いているとき、銀座のシックなバーのカウンターに座りながらラフロイグ18年のロックを転がしているような気分になった。それほど、氏のトークは「大人」であった。Perlに限らず、物事というものはそれ一つで万能なものは少ない。良いところと悪いところを吟味したうえで、ベストプラクティスの一つとしてPerlを使うという態度は尊敬する。

 @ikasam_a氏のトークには、「先人への感謝」がキーワードとして盛り込まれていた。現在から見れば不適合な実装でも、その当時の状況で発生していた制約を考慮しない限りは良い解決策は生まれないのではないか。そもそも、いまサービスが継続できているから当時の不適合な実装を再検討する機会が生まれたのだ。これを感謝せずして文句ばかり言うのは罰当たりというものだ。

聴きながら、そんな妄想を思っていた。

豊かな文化が支える明るい未来

 トレンドとのつきあい方を見れるのもカンファレンスの面白いところだ。紅白歌合戦で今年一年の流行の歌をダイジェストで見れるような感じと似ている。

実際にトークを聴いて、興味を惹かれたのは以下のものだ。
・わいとん氏 『実演 サーバレスPerl 顔認証データを扱おう
・hitode909氏 『WebVRで作品を作って展示しよう
・さいくろん氏 『Perl to Go』
・moznion氏 『Perl meets AWS Lambda

上記の技術にはPerlの公式サポートが無いものも多いが、そこをPerlでやってしまおうというのが面白い。そもそも、他の技術の良いところをPerlに取り入れようとしてきたのがPerlのHack文化だ。

最新技術への向き合い方として、ユーモラスな取組みが多い。
未来が必ず明るいとは思わないが、面白いことは明るい未来となることが多いと感じている。
面白いことには人が集まる。エンターテインメント万歳なのだ。

ロックンロールと落語とPerl

 以上が、カンファレンスの参加を通してPerlの愛を感じた理由である。
Perlは、これまでの在り方とこれからの在り方についてきちんと考えている印象を受ける。寛容な態度もつまり、それを構成しているのは懐の深さなのだと思っている。否定から入らず、自由である。

落語は人間の業の肯定であるとは立川談志の弁だが、Perlにも似たようなところがあるように思える。極限まで利便性を追求したり、効率を上げるのも良いが、どこかしらに「遊び」がないと柔軟性に欠けるものだ。悪いところもあるけど、それを笑って許容できるところに物事の豊かさがある。

ロックンロールも、ダメな人間を肯定してくれるところがある。ダメな俺でも生きていて良いんだと思わせてくれるところがある。ロックは生きることに勇気をくれる。

Perlはまさしく生きている。「やりたいことがあるなら、それはひとつじゃないよ。だから他を否定するくらいなら自分の好きなことを貫こうね。それが一番自由ってことさ」と。

最後に

 コミュニティへの参加も言語への貢献も、やりかたはひとつじゃない。それぞれが、それぞれに思うところをやっていければ最高だ。

今回カンファレンスに参加したことで、具体的に残る形で感謝の意を示そうと思うことができた。
特に技術的に革新的じゃなくても、ポエムが混じっていても、コードが無くても、やれることは無限にある。その方法が多ければ多いほど、Perlは面白くなっていく。そう思った。

次回のYAPCでは、出来るかぎりの貢献をしたい。
 

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