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JavaScriptを使ってチャーチ数で遊ぼう

Last updated at Posted at 2019-10-10

JavaScriptを使って、チャーチ数で遊びましょう。
チャーチ数とは、関数で自然数を表現したものです。
ここでは、JavaScriptを使ってチャーチ数を定義し、初等的な計算を行います。

チャーチ数

チャーチ数 (Church numerals) とは、自然数 $n$ を
「関数 $f$ を『$f$ を $n$ 回適用する関数』に写す関数」
として定義するものです。

例えばJavaScriptを使って 2 をチャーチ数として表すと

const two = f => x => f(f(x));

となります。two(f) は、f2 回適用する関数となっていますね。
(=> について知らない方は「JavaScript アロー関数」で検索してみてください)

0 から 3 までをチャーチ数として表すと

const zero  = f => x => x;
const one   = f => x => f(x);
const two   = f => x => f(f(x));
const three = f => x => f(f(f(x)));

となります。

チャーチ数の確認

チャーチ数は関数ですので、そのままコンソールに出力しても値がよくわかりません。
チャーチ数を自然数に変換するため、以下の関数を使いましょう。

const evaluate = n => n(x => x + 1)(0);

例えば evaluate(two) は、 0 に対し x => x + 12 回適用した結果ですから、結果は 2 となります。

console.log(evaluate(two));  // 2

注意

以降、チャーチ数 n とこれに対応する自然数を同一視して「n 回」という表現を使うことがあります。

チャーチ数の後者(successor)

まず、自然数の 後者 (successor) とは、平たく言うと「次の自然数」のことです。
自然数 n の後者は n + 1 です。

チャーチ数の後者は、以下の関数で定義できます。

const succ = n => f => x => f(n(f)(x));

チャーチ数 n の後者が succ(n) で得られることを確認しましょう。
n(f) は、 fn 回適用する関数でしたね。
一方 succ(n)(f)、つまり x => f(n(f)(x))fn + 1 回適用する関数です。
このことから succ(n)n の後者であるといえます。

succ を使うと、1 から 3 までのチャーチ数は以下のように書き直すことができます。

const zero  = f => x => x;
const one   = succ(zero);
const two   = succ(one);
const three = succ(two);

チャーチ数の計算

チャーチ数同士で初等的な計算をしてみましょう。
結論から書くと、チャーチ数の和、積、べき乗は以下の関数で定義できます。

const add = m => n => f => x => n(f)(m(f)(x));
const mul = m => n => f => x => n(m(f))(x);
const pow = m => n => f => x => n(m)(f)(x);

順を追って説明します。

チャーチ数の和

チャーチ数の和は以下の関数で定義できます。

const add = m => n => f => x => n(f)(m(f)(x));

チャーチ数 mn の和が add(m)(n) で得られることを確認しましょう。
n(f)(m(f)(x)) は、 x に対し fm 回適用し、さらに n 回適用したもの、つまり fm + n 回適用したものです。
このことから add(m)(n)、つまり f => x => n(f)(m(f)(x))mn の和であるといえます。

実際にチャーチ数の和を計算してみましょう。

console.log(evaluate(add(two)(three)));  // 2 + 3 = 5

チャーチ数の積

チャーチ数の積は以下の関数で定義できます。

const mul = m => n => f => x => n(m(f))(x);

より簡潔に書くと

const mul = m => n => f => n(m(f));

となります。

チャーチ数 mn の積が mul(m)(n) で得られることを確認しましょう。

n(m(f)) は『「fm 回適用する関数」を n 回適用する関数』です。
m 回を n 回、これはつまり 「fm * n 回適用する関数」ですね。
このことから mul(m)(n)、つまり f => n(m(f))mn の積であるといえます。

実際にチャーチ数の積を計算してみましょう。

console.log(evaluate(mul(two)(three)));  // 2 * 3 = 6

チャーチ数のべき乗

チャーチ数のべき乗は以下の関数で定義できます。

const pow = m => n => f => x => n(m)(f)(x);

より簡潔に書くと

const pow = m => n => n(m);

となります。
和や積と比べて複雑かと思いきや、定義自体は驚くほどシンプルですね。

チャーチ数 mn 乗が pow(m)(n) で得られることを確認しましょう。

n(m) は「mn 回適用する関数」です。
m1 回適用するごとに関数 f の個数は m 倍になりますから、
mn 回適用すると fmn 乗個に増えます。
このことから pow(m)(n)、つまり n(m)mn 乗であるといえます。

定義自体はシンプルですが、頭が痛くなりますね。

実際にチャーチ数のべき乗を計算してみましょう。

console.log(evaluate(pow(two)(three)));  // 2 ^ 3 = 8

まとめ

これまでやったことを1つのコードにまとめると、以下のようになります。

const succ = n => f => x => f(n(f)(x));

const zero  = f => x => x;
const one   = succ(zero);
const two   = succ(one);
const three = succ(two);

const evaluate = n => n(x => x + 1)(0);

console.log(evaluate(two));  // 2

const add = m => n => f => x => n(f)(m(f)(x));
const mul = m => n => f => x => n(m(f))(x);
const pow = m => n => f => x => n(m)(f)(x);

console.log(evaluate(add(two)(three)));  // 2 + 3 = 5
console.log(evaluate(mul(two)(three)));  // 2 * 3 = 6
console.log(evaluate(pow(two)(three)));  // 2 ^ 3 = 8

チャーチ数への興味が出た方は、これを機に「チャーチ数」や「ラムダ計算」で検索してみてください。

参考文献

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