はじめに
私は、カスタマーサポートとして弊社が開発している製品に関する問い合わせへの回答業務を管理しており、カスタマーサポートにおける顧客満足度のさらなる向上に向けて施策を検討、実施しています。
この記事では、顧客満足度向上施策においてKPIの設定に失敗したお話として、KPI設定の背景、達成に向けた取り組み、結果と反省点など、ご紹介させていただければと思います。
カスタマーサポートの概要はより愛される製品を育むためのカスタマーサポート心得、あるいはレビュー基準の記事をご参照ください。
目標設定の背景
私の担当しているカスタマーサポートのシステムでは、お客様が回答を受領しチケットがクローズした際に対応が満足いくものだったかどうかのアンケート(満足度アンケート)をしています。回答項目は「満足度(満足/不満足の2択)と「自由記述」です。
過去の満足度アンケートの満足度と自由記述の関係を分析したところ、満足度の要因は「丁寧な対応」と「迅速な対応」の2つに大別されることがわかりました。
目標設定
まず注目したのは「迅速な対応」です。過去の満足度アンケートの分析から、初回質問からクローズまでの日数と満足度に相関が見られました。5営業日以内にクローズしているチケットの満足度が高かったことから「5営業日以内クローズ率」を指標としました。
「迅速な対応」だけに注力してしまうと「丁寧な対応」が疎かになってしまうことを懸念しました。そのため、「丁寧な対応」の指標として「満足度アンケートの満足率(無回答を除く) 」を指標としました。
目標値は過去の実績をもとに以下のように設定しました。
観点 | KPI | 目標値 |
---|---|---|
丁寧な対応 | 満足度アンケートの満足率(無回答を除く) | 96.0% |
迅速な対応 | 5営業日以内クローズ率 | 64.0% |
目標達成に向けた取り組み
目標達成に向けた取り組みとして、回答作成時のレビュー基準と注意事項を策定しました。
「丁寧な対応」の目標達成に向けて、より愛される製品を育むためのカスタマーサポート心得、あるいはレビュー基準の記事で紹介したレビュー基準を導入しました。
「迅速な対応」の目標達成に向けて、以下のようなクローズまでの日数短縮に向けた施策を回答作成時の注意事項に盛り込みました。
- 一定時間考えてもわからない場合は相談すること
- 問い合わせ内容に不明点がある場合は先方に確認すること
- 事象の再現に必要な情報が不足している場合は、調査をする前に、先方に情報提供を依頼すること
結果と反省点
結果は以下のとおりとなりました。
観点 | KPI | 目標値 | 実績値 | 判定 |
---|---|---|---|---|
丁寧な対応 | 満足度アンケートの満足率(無回答を除く) | 96.0% | 96.3% | 達成 |
迅速な対応 | 5営業日以内クローズ率 | 64.0% | 61.1% | 未達成 |
「5営業日以内クローズ率」は未達となりました。
原因としては、問い合わせのクローズはお客様に依存するため、お客様にてすぐに回答の確認作業ができない場合や、確認できたとしてもすぐにクローズ操作がおこなわれない場合があることが挙げられます。お客様から連絡がなく放置されるチケットもあり、なかなか思うようにクローズ率を向上させることができませんでした。
まとめ
今回のKPI設定は、大きく以下の面で失敗だったと考えています。
- 満足度アンケートの分析をそのままKPIにしてしまった
- 目指したもの(迅速な対応)を正確に計測できる指標ではなかった
- こちら側で取り組みができたかを評価できる指標ではなかった
顧客満足度の向上に向けてどんな取り組みをするかを考え、その取り組みができたかを評価できるものを指標とするべきだと思います。
現在は、満足度アンケートの満足率を指標としつつ、回答作成時の注意事項とレビュー基準をブラッシュアップ(事例の記載など)していくことで、顧客満足度のさらなる向上に向けた取り組みを進めています。
ここまでお読みいただき、誠にありがとうございました。