はじめに
こんにちは。HacobuでQAエンジニアをしているおおくにです。
12/14, 15に開催されたWACATE2024 冬 ~夢の中ではテストできてました~に参加してきました。
ワークショップの中でアウトプットすることが大事、というお話があったので今回はいくつかのセッションの内容(詳細は割愛します)と学びをレポートします。
WACATEとは
Workshop for Accelerating CApable Testing Engineers:内に秘めた可能性を持つテストエンジニアたちを加速させるためのワークショップ
WACATE(わかて)とは「若手でテストに興味がある者」向けのワークショップ中心の勉強会です。
夏と冬の年2回開催されており、冬はテストに関するテーマを広く扱うことがコンセプトになっています。
2024冬では「同値分割・境界値分析」「ユーザビリティ」「直交表」「品質管理の歴史学」「レビュー」など幅広いテーマのセッションを体験しました。
公式サイト:https://wacate.jp/
体験したセッション
1日目と2日目合わせて10個(招待講演を含む)のセッションを体験しました。
その中でも特に印象的だったセッションについて以下に書こうと思います。
各セッションの詳細:https://wacate.jp/workshops/2024winter/program/
品質管理の歴史学
2日目のモーニングセッションでは、品質管理の歴史について学びました。
- 日本と欧米における品質管理の違い
- 1950年以前から欧米では性悪説にもとづいた検査重点主義が発展した(検査部門を強くすることで品質を保とうとする方法)
- 日本ではQC(品質管理)が始まってすぐに検査重点主義を捨て、検査員の比率も大きく異なっていた
- 日本・・・1~5%
- 欧米・・・15%の場合も
- 日本では性善説にもとづいた工程管理重点主義が発展した(検査部門から検査部門以外までQCを実施する方法)
- 近年提唱されている考えとTQC(全社的品質管理)/TQM(全社的品質マネジメント)の違い
- 最近のトレンドであるHolistic TestingやQA2AQといった考え方と、昔のTQC/TQMの根本的な部分は変わらない
- 新しい用語に触れる際にも「温故知新」の精神で捉えることが重要
学んだこと
日本は伝統的に性善説にもとづいた文化や人が多いと評されることも多く(野菜の無人販売などがいまだに生き残っているように)、その文化的背景が日本的QCにつながったのではないかと思いました。
性善説の日本流と性悪説の欧米流、2つの考え方は異なりますが、どちらにもよい面があるため目的に応じて手法を検討することが大事なのかもしれません。
また、日本では1950年代から「品質はチーム全体の責任である」という考え方が根付いていたことを学びました。
半世紀以上前からQCの歴史が始まっていたことを知らなかったため、そんなにも前から試行錯誤が行われていたことに驚きました。
現在所属しているチームでは、品質をチーム全体で作り上げる雰囲気があります。しかし、テスト工程がボトルネックと見なされたり、テスト担当者が品質の責任を負う体制になっていることも少なくありません。
テスト工程だけで全ての欠陥を防ぐのは難しいため、「人間は間違えるもの」という考えをもとに、テスト以外の工程でもチーム全体で品質を保証していくことが重要だと改めて感じました。
初めてのリスクベースドテスト
このセッションではリスクにもとづいてテストを実施するアプローチについて学びました。
やったこと
以下の4ステップでリスク分析を行いました。
- とあるプロジェクトのユーザーストーリーを読み込み、想定されるリスクを識別する
- ユーザーストーリー単位でリスク影響度を判断し、班でリスクポーカーを行う
- ユーザーストーリー単位でリスク可能性を判断し、班でリスクポーカーを行う
- リスク影響度とリスク可能性が決定したら、リスクレベル(影響度×可能性)を判断する
学んだこと
「リスクを味方につけてテストに役立てる」という言葉が印象的でした。
これまでしっかりとしたリスクベースドテストを行ったことはなかったのですが、広げたテスト観点を同値分割法・境界値分析を用いてやるべきテストケースだけに絞り、リスクアセスメントをもとにテストの優先順位を決める、このプロセスを取り入れると、より効果的・効率的なテスト活動ができそうだなと感じました。
また、エンジニアやQA、PdMなど様々なメンバーといっしょにリスクポーカーをすると、それぞれの職種で感じているリスクの違いを知ることができ、リスクに対する共通認識をチームで作ることができます。共通認識があると、テスト計画が立てやすくなりプロジェクトリスク・プロダクトリスクを減らすことができるため、より強いチームになれそうだなと思いました。
WACATEの体験を持ち帰ろう!
本プログラム最後のセッションでは、WACATEで得た学びを誰かに伝える方法を学びました。
やったこと
以下の4ステップで持ち帰りたい体験をパッケージ化することに取り組みました。
- 1日目の初めに配布された持ち帰りたい学びや気づきを書き留めたワークシートの中から、誰かに伝えたい学びや気づきを選び、その理由を考える
- その学びや気づきを相手に伝えるために、どのような体験をしてもらうべきか、班の全員でアイデアを出し合う
- 出されたアイデアをもとに相手にしてもらう体験を選ぶ
- 最後に、選んだ体験をどのようにデザインするかを考え、班で共有する
学んだこと
どのような体験をしてもらうと他者に学びや気づきを伝えられるか、班でアイデアを出し合いました。この過程で、自分はこの体験をこう解釈したよと学びとったことを伝え合ったり、自分では思いつかなかった新しいアイデアが出てきたり、と様々な学びがありました。同じ体験をしても学びとったことは人によって異なり、それを知ることができるのはワークショップならではの体験でした。
また、学んだことを誰かに伝えようとすることで、その学びをより自分自身のものとして捉え、理解することができると感じました。
私は誰かに伝えたいこととして、BPPセッションでの学びを選びました。演劇を軸にした表現の考え方についてのセッションだったのですが、一番心にぐさっときた内容でした。
何がささったのかはあえて書かないのですが、セッション資料が公開されているのでぜひ見てみてください。テストに興味があってもなくても、面白い内容なんじゃないかなと思います。
さいごに
1泊2日で行う勉強会ということで当日までどきどきしていたのですが、いざ参加してみると非常によい体験だったなと感じました。
様々な環境・職種で品質保証に向き合っている人たちとグループワークを行い、テストについて話し合う機会はとても貴重だと思います。
私を含め今回が初参加という方が多かったのですが、参加するのが2回目以上というリピーターの方や実行委員の方がサポートしてくれるため、2日間たのしくテストについて学ぶことができました。
迷われている方はぜひ参加をおすすめします。