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🤖 Google Agent Development Kit (ADK) 入門ガイド

Last updated at Posted at 2025-04-13

🌟 はじめに

こんにちは!今回は2025年4月にGoogle Cloudイベントで発表された Google Agent Development Kit (ADK) について詳しく解説します。AIエージェント開発の新しい波が来ていますが、特に複数のAIエージェントを連携させるマルチエージェントシステムの開発に注目が集まっています。

この記事では、ADKの基本概念から実装方法、ユースケースまで、初めての方でも理解できるように解説していきます。さあ、未来のAIエージェント開発の世界を一緒に探検しましょう!

📝 Google ADKとは?

Google Agent Development Kit (ADK) は、AIエージェントを効率的に構築・管理・評価・デプロイするためのオープンソースフレームワークです。特に注目すべきは、複雑なマルチエージェントシステムを100行未満のコードで構築できる点です。

💡 ADKの目的: エージェント開発の「フルスタックのエンドツーエンド開発」ライフサイクル全体を簡素化し、開発者により細かな制御と柔軟性を提供すること

主な特徴

  • コードファーストアプローチ: Pythonコードを中心にエージェントのロジック、ツール、オーケストレーションを定義
  • モジュール性: 特化したエージェントの組み合わせによる再利用性とスケーラビリティ向上
  • 多様なモデル対応: Gemini, OpenAI, Anthropic, Meta, Mistralなど多様なLLMをサポート
  • マルチエージェント設計: 階層構造でエージェント間の委任や協調が可能
  • Google Cloud最適化: 特にGeminiモデルやVertex AIとのシームレスな連携

🏗️ ADKのアーキテクチャ

ADKは複数の層から構成される包括的なフレームワークです。以下がその全体像です:

コアコンポーネント

  1. エージェント(Agent) 🤖

    • LlmAgent: 基本的なLLM駆動エージェント
    • SequentialAgent: エージェントを順番に実行
    • ParallelAgent: エージェントを並列に実行
    • WorkflowAgent: 複雑なワークフローを構築
  2. ツール(Tool) 🔧

    • FunctionTool: Python関数をエージェントのツールとして提供
    • AgentTool: 他のエージェントをツールとして利用
    • ExternalTool: 外部APIやサービスとの連携
  3. モデル(Model) 🧠

    • Gemini: Google提供のLLM(最適化済み)
    • 各種LLM: LiteLLM統合で様々なモデルをサポート
  4. インフラ(Infrastructure) 🏢

    • セッション管理: 会話文脈の保持
    • メモリサービス: 長期情報の保存
    • Artifactサービス: ファイルやデータの管理

マルチエージェントアーキテクチャ

ADKの強みは複数のエージェントを階層的に組み合わせられる点にあります:

Google Cloud Platformとの統合

ADKはGoogle Cloudサービスとシームレスに連携します:

🚀 ユースケース

ADKはさまざまな分野で活用できます。その中でも主なユースケースをご紹介します:

1. マルチエージェントによるタスク分割と処理

複数の専門エージェントが連携して複雑なタスクを処理:

  • 🧠 企画開発システム: 企画生成、評価、改善エージェントが連携して企画案を洗練
  • 📊 研究アシスタント: データ収集、分析、レポート作成を体系的に自動化

2. 企業データ統合システム

既存の企業システムと連携したインテリジェントな対応:

  • 👥 顧客サポートシステム: CRMデータ、製品情報、対応履歴を統合
  • 📈 ビジネスインテリジェンス: 社内データベースに自然言語でクエリ

3. 専門分野向けアプリケーション

特定産業に特化した知識を持つエージェント:

  • ⚖️ 法務アシスタント: 法律文書分析、契約書レビュー
  • 🏥 医療診断支援: 患者データ、医学文献、症例分析の統合
  • 💰 金融アドバイザー: 市場分析、リスク評価、投資提案

4. 教育・トレーニングシステム

学習者に合わせたパーソナライズされた学習体験:

  • 📚 適応型学習: 理解度に応じたコンテンツ調整
  • 💻 プログラミング教育: コード分析、エラー説明、課題提供

5. 高度な自動化システム

複雑なワークフローを自動化:

  • 📝 コンテンツ制作: 調査、ドラフト作成、編集、画像生成の一元化
  • 🔄 プロダクト開発: 市場調査から製品設計、テスト、マーケティングまで統合

実際のアプリケーション例:企画開発支援システム

🔄 他のフレームワークとの比較

ADKは他のAIエージェントフレームワークとどう違うのでしょうか?

機能/特徴 Google ADK LangChain AutoGen CrewAI LlamaIndex
オープンソース
開発言語 Python Python, JavaScript Python Python Python, TypeScript
マルチエージェント設計 ✅ (ネイティブサポート) ⚠️ (部分的サポート) ⚠️ (部分的サポート)
LLMサポート Geminiネイティブ + LiteLLMで多様なモデル 広範なモデルサポート 広範なモデルサポート 広範なモデルサポート 広範なモデルサポート
ストリーミングサポート ✅ (双方向ストリーミング) ⚠️ (部分的)
メモリ管理 ✅ (組み込み) ✅ (組み込み) ⚠️ (限定的) ⚠️ (限定的) ✅ (組み込み)
開発ツール ✅ (CLI + Web UI) ⚠️ (限定的) ⚠️ (限定的) ⚠️ (限定的)
評価フレームワーク ✅ (組み込み) ✅ (LangSmith)
デプロイオプション ✅ (コンテナ化簡易) ⚠️ (限定的) ⚠️ (限定的) ⚠️ (限定的)
A2A連携 ✅ (ネイティブサポート)
Google Cloud統合 ✅ (深い統合) ⚠️ (部分的) ⚠️ (部分的) ⚠️ (部分的) ⚠️ (部分的)
マルチモーダルサポート ⚠️ (部分的) ⚠️ (部分的) ⚠️ (部分的) ⚠️ (部分的)
コミュニティ成熟度 🆕 (新興) ✅ (確立済み) ⚠️ (成長中) ⚠️ (成長中) ✅ (確立済み)
学習曲線 中程度 中程度 緩やか 中程度

Google ADKの主な強みは:

  • 🔥 マルチエージェントシステムのネイティブサポート
  • 🔥 Google Cloudサービスとの緊密な統合
  • 🔥 A2Aプロトコルによるエージェント間相互運用性
  • 🔥 組み込みの評価・デバッグツール

一方で、新しいフレームワークのため、コミュニティリソースやサンプルは他の確立されたフレームワークと比較するとまだ発展段階にあります。

🛠️ 環境構築手順

ADKを使うための環境構築は比較的シンプルです。

前提条件

  • Python 3.9以上
  • pip(Pythonパッケージ管理ツール)

基本的な環境構築

# 仮想環境の作成と有効化(推奨)
python -m venv adk_env
source adk_env/bin/activate  # Windowsの場合: adk_env\Scripts\activate

# ADKパッケージのインストール
pip install google-adk google-generativeai

# Geminiモデル使用のためのAPIキー設定(環境変数)
export GOOGLE_API_KEY=あなたのAPIキー
# Windowsの場合: set GOOGLE_API_KEY=あなたのAPIキー

Google Cloud環境での設定(オプション)

# Google Cloud統合のための環境変数
export PROJECT_ID=あなたのプロジェクトID
export LOCATION=us-central1  # または他のリージョン
export GOOGLE_GENAI_USE_VERTEXAI=true

APIキーはGoogle AI Studioから取得できます。

💻 サンプルコード

基本的なエージェント実装

以下は、ADKを使用した基本的なエージェント実装の例です:

from google.adk.agent import LlmAgent
from google.adk.tool import define_function_tool
from google.adk.integration.llm.gemini import GeminiLlm
from google.adk.integration.vertexai.session import InMemorySessionService
from google.adk.runner import Runner

# シンプルなツール関数の定義
def get_current_weather(location: str, unit: str = "celsius") -> str:
    """指定された場所の現在の天気を取得する"""
    # 実際のAPI呼び出しなどはここに実装
    return f"{location}の天気は晴れ、気温は25{unit}です"

# 関数をADKツールに変換
weather_tool = define_function_tool(get_current_weather)

# エージェントの構築
def build_agent():
    return LlmAgent(
        llm=GeminiLlm(),
        description="天気情報を提供するアシスタントです",
        instruction="""
        ユーザーから天気に関する質問があった場合は、get_current_weather関数を使って回答してください。
        それ以外の質問には一般的な知識に基づいて返答してください。
        """,
        tools=[weather_tool]
    )

# エージェントの実行
def main():
    agent = build_agent()
    runner = Runner(
        agent=agent,
        session_service=InMemorySessionService()
    )
    
    # ユーザーとの対話
    session = runner.create_session()
    response = runner.run(session, "大阪の天気を教えてください")
    print(response.text)

if __name__ == "__main__":
    main()

マルチエージェントシステムの実装例

複数のエージェントを連携させたシステムの実装例:

from google.adk.agent import SequentialAgent, LlmAgent
from google.adk.integration.llm.gemini import GeminiLlm
from google.adk.runner import Runner

# 質問生成エージェント
def build_question_generator():
    return LlmAgent(
        llm=GeminiLlm(),
        description="トピックに基づいて質問を生成するエージェント",
        instruction="与えられたトピックについて、3つの関連質問を生成してください。"
    )

# 質問回答エージェント
def build_answer_generator():
    return LlmAgent(
        llm=GeminiLlm(),
        description="質問に回答するエージェント",
        instruction="前のエージェントが生成した質問に対して、詳細な回答を提供してください。"
    )

# 複数のエージェントを連携させるSequentialAgent
def build_sequential_agent():
    return SequentialAgent(
        agents=[
            build_question_generator(),
            build_answer_generator()
        ],
        description="トピックについての質問と回答を生成するシステム"
    )

# メイン実行関数
def main():
    agent = build_sequential_agent()
    runner = Runner(agent=agent)
    
    session = runner.create_session()
    response = runner.run(session, "人工知能の未来について教えてください")
    
    print(response.text)

if __name__ == "__main__":
    main()

Google Cloud統合の例

Vertex AIのGeminiモデルを使用したエージェント実装例:

from google.cloud import aiplatform
from google.adk.agent import LlmAgent
from google.adk.tool import define_function_tool
from google.adk.integration.vertexai.llm import VertexAiLlm
from google.adk.runner import Runner
from google.adk.integration.vertexai.session import VertexAiSessionService

# Google Cloud初期化
def initialize_gcp():
    aiplatform.init(
        project="あなたのプロジェクトID",
        location="us-central1"
    )

# Vertex AIのGeminiモデルを使用するエージェントを構築
def build_vertex_agent():
    # 外部関数ツールの定義
    def search_knowledge_base(query: str) -> str:
        """知識ベースを検索して回答を見つける"""
        # 実際の実装では、Vertex AI Search または企業の知識ベースへのクエリを実行
        return f"知識ベースから「{query}」に関する情報を取得しました。"
    
    # 関数をツールに変換
    kb_search_tool = define_function_tool(search_knowledge_base)
    
    # Vertex AI上のGeminiモデルを使用するエージェントを作成
    return LlmAgent(
        llm=VertexAiLlm(model_name="gemini-1.5-pro"),  # Vertex AIのモデルを指定
        description="企業の知識ベースにアクセスできるアシスタント",
        instruction="""
        企業の知識ベースから情報を検索して質問に回答してください。
        知識ベースに情報がない場合は、一般的な知識に基づいて答えてください。
        """,
        tools=[kb_search_tool]
    )

# メイン実行関数
def main():
    # GCP初期化
    initialize_gcp()
    
    # エージェント構築
    agent = build_vertex_agent()
    
    # Vertex AIのセッションサービスを使用
    runner = Runner(
        agent=agent,
        session_service=VertexAiSessionService()
    )
    
    # セッション作成と実行
    session = runner.create_session()
    response = runner.run(session, "当社の最新の製品ラインナップについて教えてください")
    print(response.text)

if __name__ == "__main__":
    main()

🔮 今後の展望

Google ADKの今後の展望としては以下が考えられます:

1. A2Aプロトコルとの連携強化 🤝

Agent2Agent (A2A) プロトコルは、異なるベンダーやフレームワークで構築されたエージェント間の相互運用性を実現する標準です。50以上の技術パートナーが貢献し、2025年後半にはプロダクションレディ版が提供される予定です。

2. マルチモーダル機能の強化 🎨

テキスト、画像、音声、ビデオなどを含むマルチモーダルな対話能力がさらに拡張されるでしょう:

  • Gemini 2.0以降のマルチモーダルモデルとの連携強化
  • リアルタイム音声・映像ストリーミングの機能拡充
  • マルチモーダル入出力を活用した新しいユーザー体験の創出

3. エンタープライズ統合の拡充 🏢

企業システムとの連携が強化されていく見込みです:

  • 既存の100以上の事前構築されたコネクタのさらなる拡張
  • Vertex AI、BigQuery、AlloyDBなどのサービスとのシームレスな統合
  • 企業のセキュリティとコンプライアンス要件に対応した機能強化

4. コミュニティとエコシステムの成長 👥

オープンソースプロジェクトとして、以下の方向に発展すると予想されます:

  • サードパーティの拡張機能とプラグインのエコシステム形成
  • コミュニティ主導の改善とベストプラクティスの確立
  • 業界固有のソリューションテンプレートの開発

5. マルチエージェントシステムの標準化 📊

複雑なマルチエージェントシステムの設計・実装パターンを標準化する方向に進むでしょう:

  • エージェント間通信とオーケストレーションの標準プラクティス確立
  • マルチエージェントシステムのためのデザインパターンライブラリ
  • エージェント協調のための新しいアーキテクチャモデルの提案

📝 まとめ

Google Agent Development Kit (ADK)は、AIエージェントとマルチエージェントシステムの開発を大幅に簡素化するフレームワークです。特にGoogleのクラウドサービスとの統合に優れ、Geminiモデルの能力を最大限に引き出す設計になっています。

主な特徴をまとめると:

  • マルチエージェント設計に最適化 - 複数の専門エージェントを階層的に組み合わせて複雑なタスクを解決
  • Googleエコシステムとの緊密な統合 - GeminiやVertex AIとのシームレスな連携
  • 柔軟なモデル対応 - LiteLLM統合による多様なLLMモデルのサポート
  • 開発ツールの充実 - CLIとWeb UIによる開発・デバッグ・評価機能
  • A2Aプロトコル対応 - 異なるフレームワーク間の相互運用性

まだ新しいフレームワークではありますが、その潜在能力は非常に高く、今後のAIエージェント開発における重要なツールになることでしょう。特に複数エージェントの連携が必要なプロジェクトや、Googleのクラウドサービスと統合したいケースでは、ADKの導入を検討する価値があります。


いかがでしたか?この記事が皆さんのGoogle ADK理解の助けになれば嬉しいです。質問やフィードバックがあれば、ぜひコメントで教えてください!👋

参考リソース

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