TL;DR
- エントリー層から雑なキャリア相談を受けた人向けの内容。
- 転職推奨ではなく、自身のキャリアや業界と向き合うためのツールとして活用しよう。
- この動きが原因で転職(≒人材流出)してしまうリスクはほぼない。
こんな雑な相談を受けたことはないですか?
社内の1on1などで、エントリー層から以下のような相談を受けたことはありませんか?
相談内容 | 例 |
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今後どんな方向性の技術を学んで行くべきかわからない。 | 「業務の取り扱い技術とか、どんな分野や資格があるかとかはよくわりません!何すればいいですか?」 |
現在やっている業務とは別の技術になんか興味がある。 | 「プログラミングに興味があります。言語はAWSです!」 |
とにかく給料が安い! | 「IT業界って儲かると思ったけどなんか違った!SESって給料が安いみたいなんで、インターネットとかAI作る人になります!」 |
例はちょっと極端に書いてみましたが、私が5年間ほどメンター・1on1などを担当している中で割とある相談です。
相談を受ける側の皆さんは気が付いたかもしれません。
なんか相談内容が雑というか、調査不足というか…ぶっちゃけ回答に困りませんか?
イチから説明してもよいけど、それは工数的にも精神的にも厳しい。
そこで、「じゃ、一旦転職サイトに登録してみたら?」と案内することで諸々の悩みを解決してみよう!という記事です。
なぜ転職サイトなのか?
ウィンザー効果が期待できる
ウィンザー効果とは第三者から間接的に情報が伝わることで、より信憑性や信頼感が増すという心理効果です。
社内の上長にあたる人間が同じことを伝えても、会社の回し者感は払拭できません。
正しいことを言っても、色眼鏡で見られてしまう恐れがありますので、それを回避する狙いがあります。
登録時の項目が自身や業界に向き合うきっかけとなる。
転職サイト登録時には自身の現状や将来への展望を記載しないと登録出来ないですよね?
真面目に登録しようとすれば、そこで色々考えを巡らせて、自身や業界に向き合う必要があります。
例えばQiita Jobsであれば以下のような項目をプロフィールとして入力する必要があります。
※太字のところは特にこうなってくれたらうれしいなぁ…という願望です。
項目 | 期待する心理変化 |
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現年収 | 今の自分の年収はいくらなんだろう? 源泉徴収票確認したり、家計簿つけてみようかな… |
希望年収 | 自分のライフプランのためにどれくらい年収が必要なんだろう? そもそも自分のライフプラン考えたことがないから、考えてみようかな… |
勤務地 | 勤務地やテレワーク、選択の自由はどうすれば手に入るだろう? |
自己紹介 | 過去・現在までにしてきた仕事と能力を業界の言葉で言語化すると何だろう? |
この先やってみたいこと | 将来自分がやってみたいことは何だろう? そもそも自分のワークプラン考えたことがないから、考えてみようかな… |
スキル・職歴 | 自身の業務における成果・実績は何かあったかな? 自分の職種・役割を業界の言葉で言語化すると何だろう? |
転職サイトに使わず、個別フォローすればいいのでは?
個別フォローは大変
もともとは個別フォローをしていました。ですが極力減らすように努力しています。
理由は工数。
1on1などの面談の時間が月1hとして、それに加えて個別フォローのために調査・資料作成の時間が1hぐらい必要になるとします。
対象者が1人2人程度の時はさほど気になりませんが、5人、10人となると毎月かなりの工数が必要となります。
残業代というコストもかかりますし、労働基準法(36協定)に抵触する可能性も高くなります。
個別フォローの対応をしてくるのは少数派
個別フォローとして効果のありそうな施策(自己分析ツール、興味のある分野のeラーニング等)を調べ、宿題のように提示することはよくあると思います。
実績ベースですが、これらを実施してくる人は少数派でした。
これには徒労感が半端なく、精神的にかなりきついと思います。
お気持ち表明ですが、エントリー層の大半は自分の現状や将来に向き合い、検討した上で相談を持ちかけるわけではなく、知識・経験の不足により、漠然とした現状への不満と将来に対する不安を持っていると考察されます。
むしろ、めんどくさい宿題を出すうざい上司と思われて、エンゲージメントを下げる要因にもなりそう。
この動きが原因で転職(≒人材流出)してしまうリスクはほぼない。
転職サイトを案内した結果、それを活用して転職するということはほぼないと思います。
なぜなら、本当に転職してしまうような人材は、雑な質問に変わり以下のような発言をしがちです。
発言の例 | その後の行動の例 |
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外部の勉強会に行ったらめっちゃ面白かったので、共有します! | そこで出会った他社の人の勧誘を受けたので転職します!! |
自己分析の結果をマインドマップにしてきました!イマイチ今の会社にマッチしてないけどどう思いますか? | 自分にマッチしてる会社見つけたので、今後のキャリアを考えて転職します! |
ポートフォリオとしてアプリ作って来ました。レビューして! | このポートフォリオがウケがよくて、年収上がりそうなので転職します! |
この手の人達を食い止めるには1on1などの個人で出来る戦術レベルの対策ではなく、企業全体の戦略レベルの対策が必要になりますので、一旦あきらめましょう。
終わりに
相談する側の人へ
皆さんの相談相手となる先輩・上司の多くは、皆さんの将来(ライフ・ワーク両方のキャリア)について割と心配しています。
ただし、昨今は人生の多様性を重んじる時代でもあり、こちらの考えているより良い将来というのが本人に適しているのかどうかを判断し、アドバイスすることはできません。
なので、自分がどのように生き、そのためにどのように働くのか…そればかりは自分で考え、決めてもらうほかありません。
もしこの記事を読んだ人がいれば、雑な相談をして「うわぁ…」って思われる前に、 自身の将来についてよく考えてほしいと思います。
相談される側の人へ
この記事の内容はあくまでTipsの一つです。
1on1・キャリア相談等のコーチングをより良いものにしていくためには、バックボーンとなる多くの知識・技術・経験が必要となります。
日々の自己研鑽(様々な研修・書籍など)と、他の仲間たちとの情報共有などを怠らないように頑張りましょう。
参考