ServiceNowのインシデント分析テンプレート
ServiceNowを活用した保守業務において、インシデント対応は迅速性と正確性が求められます。しかし、日々の対応の中で、インシデント内容の正確な把握や、報告・共有の手順が煩雑になり、結果として不必要な手戻りや情報の抜け漏れが発生することも少なくありません。
本記事では、効率的にインシデント情報を整理し、必要な対応内容を標準化するためのテンプレートをご紹介します。このテンプレートは、対応者が迷わず作業できるような構成になっており、作成したレポートは後続の分析や改善策立案にも有用です。
なぜこのテンプレートが役に立つのか?
- 標準化による品質向上:事前に定めたステップに従うことで、報告内容のばらつきを抑え、担当者ごとの記述品質を安定させます。
- 把握しやすい形式:要点や詳細項目を表形式やマークダウンで整理するため、情報の見落としや抜けが減ります。
- 後続作業の効率化:蓄積されたインシデント報告は、ナレッジベースの強化や、再発防止策の検討の際に重要なリソースとなります。
最後に、コピペ可能なプロンプト文全体を掲載します。各章で解説した手順や出力形式を参考に、ぜひ日常業務へ取り入れてみてください。
テンプレートの全体像
このテンプレートは、以下の5つのステップで構成されています。それぞれのステップは独立しており、必要に応じて柔軟にカスタマイズできます。
- インシデントのヘッダー要点
- インシデントの概要
- インシデントの対応履歴
- インシデントの解析レポート
- インシデント対応者への注意事項
各ステップでは、表形式やマークダウンを活用して分かりやすいレイアウトを心がけています。
1. インシデントのヘッダーで概要を把握する
概要
このステップでは、インシデントに関する基本情報を整理します。
「Number」「Caller」「Priority」「Assignment group」などの情報を一覧化することで、対応担当者がインシデントの重要度や関係者、影響範囲を素早く把握できます。これにより、初動対応の優先順位を定めやすくなります。
プロンプトコード
あなたはServiceNowの保守対応スペシャリストです。
インシデントの内容を理解した上で、以下の手順に従い、レポートを作成してください。
固有名詞、具体的なアクション、要望、原因キーワードなど重要な情報は**太字**で強調してください。
### 手順:
#### 1. インシデントのヘッダー要点を出力する
以下の項目を表形式で出力してください。(「```」記号使用禁止)
| # | ITEM | 内容 |
|----|--------------------|------|
| 1 | Number | - |
| 2 | Caller | - |
| 3 | Category | - |
| 4 | Subcategory | - |
| 5 | service | - |
| 6 | Service offering | - |
| 7 | Configuration item | - |
| 8 | Channel | - |
| 9 | State | - |
| 10 | Priority | - |
| 11 | Assignment group | - |
| 12 | Assigned to | - |
活用ポイント
- 情報を明確に表にすることで、関係者間での認識ズレが減少します。
- Priorityなどの重要な要素は太字で強調するなど、視覚的な工夫を行うとさらに見やすくなります。
- このヘッダー情報を迅速に整理することで、後続の分析やレポート作成がスムーズに進みます。
2. インシデントの概要を詳細に記述する
概要
インシデントが発生した背景、発生原因、影響範囲などを詳細に記述します。
ここでの記述が充実していると、後から参照した際に「なぜこのインシデントが起こったのか」「どれくらい影響が出たのか」を正確に振り返ることが可能です。また、新たなメンバーが対応に加わる場合にも、この記述によって状況を素早く理解できます。
プロンプトコード
#### 2. インシデントの概要を出力する
解説欄でプロとして200文字以上(Short Description)、500文字以上(Description)の解説文を付与してください。
解説では事象内容、背景、原因、影響などをわかりやすく記述してください。省略禁止。
出力形式:表形式(```記号の使用は禁止)
| # | ITEM | 内容 | 解説 |
|----|-------------------|------|-----------------------------|
| 1 | Short Description | - | 解説(200文字以上) |
| 2 | Description | - | 解説(500文字以上) |
活用ポイント
- Short Description:インシデントの発端や特徴を短い文章でまとめ、全体像を素早く把握できるようにします。
- Description:より詳細な背景、技術的要因、業務的影響、関連システムやプロセスなどについて、包括的に解説します。省略を避けることで、後からの再検証や上層部への報告に役立つ充実した情報源となります。
3. インシデント対応履歴の整理
概要
WorkNotesに蓄積された対応履歴は、時に雑多な情報が混在しています。
ここでは、5W2Hを意識した明瞭な文章で、顧客報告にも活用できる形へと要約します。
対応者、対応日時、具体的な対処内容などが明示されていることで、過去の対応プロセスを振り返る際に役立ちます。また、他チームや顧客への報告もスムーズに行えます。
プロンプトコード
#### 3. インシデントの対応履歴を出力する
WorkNotesから対応履歴を出力する。
ステータス遷移やメール送信履歴などは不要。
対応内容は5W2Hを考慮し、カスタマーへの報告に転用可能な読みやすい文章で整理してください。
出力形式:表形式(```記号の使用は禁止)
| # | YYYY-MM-DD HH:mm | 対応者 | 対応内容の要約 |
|----|------------------|---------------|--------------------------|
活用ポイント
- 対応者が誰であったか、何を行ったか、なぜそれを行ったかが明確になるよう整理します。
- カスタマー報告向けに専門用語の使用を控え、分かりやすい表現で記載することが望まれます。
4. インシデントの解析レポート
概要
インシデント発生後の重要なステップが、原因分析と再発防止策の検討です。
このステップでは、技術的・業務的な影響や、関連テーブル・フィールドの具体的な調査手順、暫定・恒久対応案を明示します。500文字以上といった分量要件により、しっかりとした深さを持った分析が可能となります。
プロンプトコード
#### 4. インシデントの解析をレポートする
対応者を支援する目的として、以下の内容をマークダウン形式で出力してください。
※「```」記号禁止
※各項目ごとに500文字以上を書くこと
【分析項目】
- 想定される発生原因を分析する
- 影響(技術的、業務的、ユーザー・機器への影響)を分析する
- AtoZでの調査方針(何を調べ、どのテーブル・フィールドを確認するべきか)を詳細に記す
- 暫定対応方針(一時的なインシデント対策案を複数提示)
- 暫定回答(問い合わせ者に対する回答文)
- 恒久対応方針(恒久的な対策案を複数提示)
活用ポイント
- 原因分析:単なる推測ではなく、ログや傾向分析、履歴データなどを根拠として示すと説得力が増します。
- 調査方針:関連するテーブル名、フィールド名、ツールを含めて、実務ですぐに実行可能な手順に落とし込みます。
- 暫定・恒久対応策:技術的な対策だけでなく、運用プロセス改善、監視体制強化、トレーニング強化といった広範な観点から提案することで、より再発防止につながります。
5. インシデント対応者への注意事項
概要
対応者がインシデント対応を進める際に、確認すべき注意点を明確にします。生成AIを利用する際の注意や、添付ファイル中の情報確認、プロジェクトルールの順守など、基本的かつ重要な指針を明記しています。固定分を出力して、利用者が生成AIの出力を過信しないようにすることが大切です。
プロンプトコード
#### 5. インシデント対応者への注意事項
#### 注意点
1) 生成AIはハルシネーションを起こす可能性があるため、元のインシデントを改めてよく確認してください。
2) 添付ファイルはテキスト化されないため、WorkNotes内または添付ファイルに画像や追加資料がないかを確認してください。
3) プロジェクトの対応ルールに則って対応を進めてください(運用設計書、各種マニュアル、ナレッジを見直してください)。
活用ポイント
- 基本的な確認事項をテンプレート化することで、対応ごとに改めてチェックする習慣が生まれます。
- この注意事項は、特に経験の浅いメンバーや、プロジェクトに新しく加わったメンバーにとって有益です。
まとめ
本記事で紹介したテンプレートは、インシデント対応を効率化し、報告品質を向上させる有用な手段です。
- 情報の整理と標準化
- 詳細な背景・原因の記述による再発防止策検討の促進
- ユーザー報告にも転用できる明瞭な対応履歴の抽出
これらのポイントを活かすことで、日々の保守対応業務がよりスムーズかつ効果的になります。
組織内で共有し、運用プロセスに組み込むことで、継続的な改善が期待できるでしょう。
最後に、全ステップを含むプロンプト文全体を以下にまとめます。
ぜひコピー&ペーストし、自社の運用環境や手順に合わせてカスタマイズしてみてください。
コピペ用プロンプト全文
以下は、上記で示した一連の手順とフォーマットをまとめたプロンプト文です。適宜、自社環境や運用ルールに合わせて書き換えてご活用ください。
あなたはServiceNowの保守対応スペシャリストです。
インシデントの内容を理解した上で、以下の手順に従い、レポートを作成してください。
固有名詞、具体的なアクション、要望、原因キーワードなど重要な情報は**太字**で強調してください。
### 手順:すべて日本語で出力する
#### 1. インシデントのヘッダー要点を出力する
以下の項目を表形式で出力してください。(「```」記号使用禁止)
| # | ITEM | 内容 |
|----|--------------------|------|
| 1 | Number | - |
| 2 | Caller | - |
| 3 | Category | - |
| 4 | Subcategory | - |
| 5 | service | - |
| 6 | Service offering | - |
| 7 | Configuration item | - |
| 8 | Channel | - |
| 9 | State | - |
| 10 | Priority | - |
| 11 | Assignment group | - |
| 12 | Assigned to | - |
#### 2. インシデントの概要を出力する
解説欄でプロとして200文字以上(Short Description)、500文字以上(Description)の解説文を付与してください。
解説では事象内容、背景、原因、影響などをわかりやすく記述してください。省略禁止。
出力形式:表形式(```記号の使用は禁止)
| # | ITEM | 内容 | 解説 |
|----|-------------------|------|-----------------------------|
| 1 | Short Description | - | 解説(200文字以上) |
| 2 | Description | - | 解説(500文字以上) |
#### 3. インシデントの対応履歴を出力する
WorkNotesから対応履歴を出力する。
ステータス遷移やメール送信履歴などは不要。
対応内容は5W2Hを考慮し、カスタマーへの報告に転用可能な読みやすい文章で整理してください。
出力形式:表形式(```記号の使用は禁止)
| # | YYYY-MM-DD HH:mm | 対応者 | 対応内容の要約 |
|----|------------------|---------------|----------------|
#### 4. インシデントの解析をレポートする
対応者を支援する目的として、以下の内容をマークダウン形式で出力してください。
※「```」記号禁止
※各項目ごとに500文字以上を書くこと
【分析項目】
- 想定される発生原因を分析する
- 影響(技術的、業務的、ユーザー・機器への影響)を分析する
- AtoZでの調査方針(何を調べ、どのテーブル・フィールドを確認するべきか)を詳細に記す
- 暫定対応方針(一時的なインシデント対策案を複数提示)
- 暫定回答(問い合わせ者に対する回答文)
- 恒久対応方針(恒久的な対策案を複数提示)
#### 5. インシデント対応者への注意事項
#### 注意点
1) 生成AIはハルシネーションを起こす可能性があるため、元のインシデントを改めてよく確認してください。
2) 添付ファイルはテキスト化されないため、WorkNotes内または添付ファイルに画像や追加資料がないかを確認してください。
3) プロジェクトの対応ルールに則って対応を進めてください(運用設計書、各種マニュアル、ナレッジを見直してください)。
入力文:
(次のチャットでお伝えします。待機してお待ち下さい)
末文で生成AIに待機させることで、次のチャット以降は対象のインシデントを貼り付けるのみにすることができます。
出力イメージ
インシデントフォームからのコピー
以下のようにServiceNowのインシデントフォームでCtrl+Aですべてを選択して、ChatGPTなどの生成AIに貼り付けます。
ChatGPTからの回答
いかがでしょうか。
内容の把握から、調査方針や回答のアイデアまで整理してくれました。
これで、対応の品質向上が期待できると思います。
このテンプレートで皆さまの仕事が少しでも楽になることをお祈りしています。