河野龍太郎著の「ヒューマンエラーを防ぐ技術」を読んで為になった事を記載しています。
安全
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安全とは「許容できないリスクがないこと」
国際基本安全規格(ISO/IEC GUIDE 51:2014)より -
竹やり精神型安全
「ちゃんと注意しろ!」「気合を入れろ!」「ボケッとするな!」など
(池田:JR東日本安全研究所より)
このような旧来の方法には限界がある -
リスクを高める要因
- 機械側の要因
- 人間側の要因
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上下関係により誤りを指摘できなかった
熟練度とか
熟練者が確認者をする方が指摘しやすい
熟練者が作業して大丈夫といっているから問題ないと思い指摘できなかった
エラーに対する人間的特性
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生理的身体的特性
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疲労
脳を休めることが大事(休憩を必ず取るべき)
疲労による影響- 作業効率の低下
- 集中力の低下
- 注意力の衰え
- 意欲減退
- 知覚機能が鈍る
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睡眠
眠気を感じているときは疲労以上に脳の機能が低下している状態にある。
睡眠不足は酩酊と同じ状態
「サーカディアンリズム」
休憩は必ずとるべき
夜勤明けの朝方はミスが起きやすいと考えられる -
加齢
55歳を超えると以下の能力の衰えが顕著(ミスに関連するもので)- 五感を用いた情報の取り込み機能
- 疲労回復機能(PCのディスプレイが見えずらい)
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体躯(たいくーからだ。また、からだつき。体格。)
狭い場所での作業は事故やミスにつながる。
作業スペースが狭かったりするのはよくない
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認知的特性
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注意の特性
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選択的注意(注意には選択性がある)
必要なものや関心のあるものしか見えていない
手順書内に※などでかかれてもみえていない
長い文章は飛ばしてしまう。
箇条書きやチェックボックスの方がちゃんと読まれる。 -
分割的注意(注意には容量がある)
注意が必要なことが複数並行すると注意の容量を超えてしまう
注意は配分されている
作業が輻輳しているときはこれが起こりやすい
一項番一手順にするのはこれが理由
長文は控える、箇条書きを有効活用する -
持続的注意
非常に面白いといわれているゲームでさえ20~30分しか注意は持続しない
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ゲシュタルト特性
人間の知覚には多くの対象が同時に存在する場合、「まとまり」で知覚する特性
「まとまり」ゲシュタルト(プレグナンツの法則) -
視覚による認知の特性
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聴覚による認知の特性
- 耳で「聞く」のではなく、脳で聞きたいものを聞いている
- 期待聴取
- 見る人、聞く人の知識や経験、特に期待や欲求が強いと物理的刺激(実際に耳で聞いた音)をゆがめてしまい、思い込みや聞き間違いなどが起こる
BとD、EとDなどの似た音を聞き間違ってしまう。
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正常性バイアス
- 人は災害や危険に直面すると、普通は恐れや不安を感じ平常心でいることが難しいが現実に迫った危険について理解できない場合がある
コマンドの応答が少しだけ違っても異常や危険と認知できないことがある
- 人は災害や危険に直面すると、普通は恐れや不安を感じ平常心でいることが難しいが現実に迫った危険について理解できない場合がある
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認知的不協和・こじつけ解釈
- あるものごとにおいて相互に矛盾があると人は不安になる。その不安を解消したいと、その矛盾を自分なりに納得できるように考えて、うまく説明がつくような話を作って安心するけいこうがある。
作業中に手順書と少しでも異なる点があれば、一時作業を中断すべきである
- あるものごとにおいて相互に矛盾があると人は不安になる。その不安を解消したいと、その矛盾を自分なりに納得できるように考えて、うまく説明がつくような話を作って安心するけいこうがある。
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忘却曲線
- 時間の経過にともなって忘却が進む。早い段階で繰り返し復習するのがよい。
「エビングハウスの忘却曲線」
- 時間の経過にともなって忘却が進む。早い段階で繰り返し復習するのがよい。
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記憶の変容
- 外部からの刺激を受けて記憶が変容することがある。
- 事故の目撃者の証言は目撃から証言の間に、別の情報が入ったり、誤った情報が入ったり、あるいは質問の仕方によって最初の記憶が何らかの影響を受ける。これは時間が経つほど顕著。
「目撃者の証言」 -エリザベス・F. ロフタス
ログなどの事実ベースで確認すべき。
ヒヤリング対象者には余計な情報が入らないようにする
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積極的忘却は困難
- 人間の記憶は積極的に忘却、変容することはできず、特に非常事態、緊急事態には古い記憶が思い出され、間違った行動をしてしまう。
作業内容は変更されることが多いので、ナレッジベースではなく手順書遵守で作業するべき
- 人間の記憶は積極的に忘却、変容することはできず、特に非常事態、緊急事態には古い記憶が思い出され、間違った行動をしてしまう。
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集団の心理的特性
普通に考えると常識的なことであっても複数の人間が集まった集団においては一人のときと異なった人間の行動が現れる。
エラーに関連する7つの特性- 権威勾配
人は権威をもった人に弱く権威を持っているいる人(上位職者)に指示命令されると、自分の意志に反してそれに服従してしまう。(アイヒマン実験)
熟練者が作業者で間違って作業をしていた場合、経験の少ない確認者は指摘しにくい - 同調行動
周囲の人間がたった3人自分の意見と違う意見を述べた場合、異なる自分の意見を主張するのは難しくなる。
対応の切り分けには同調行動による圧力がかかっていないか気にしなければいけない - 社会的手抜き
自分一人だったら100の力を発揮できたところ、多数の他者がいたために手を抜いてしまう、チームで作業すると人は単独のときよりも働かなくなる。(リンゲルマン効果) - 社会的促進
得意なことは張り切ってやる
競争状態や他社と一緒に、あるいは他者が見ている状況で作業したり行動したりする方が、作業効率が上がることがある。しかし、このような状況で自分の得意でない作業は効率が下がることがある。 - 集団浅慮
人が集まって意思決定を行うとき、各個人が優れた人たちであっても大失敗をおこすことがある。
集団浅慮を防ぐ方法- リーダーは批判的な評価者の役割を重視し、成員が反対意見や疑問点を出すように鼓舞しなければならない。
- リーダーは最初から自分の好みや希望を述べて偏った立場にあることを明らかにしてはならない。
- 複数の集団に同じ問題について政策決定させる。
- 運命共同体
- 集団凝縮性:集団における活動を活性化するためには、集団がメンバーとまとまり、強い結び付きを持っている必要がある。この集団としてのまとまりを強める作用のことを集団凝縮性という。
- 集団の機能を向上させるためには集団凝縮性は重要だが、凝縮性の高さがメンバーへの圧力にもなる。
- 集団浅慮に結びつく。
- リスキーシフト
集団の決定は個人の決定よりも危険な選択をする集団討議の減少をリスキーシフト現象という。リスキーなひとほど討論で積極的な役割を演じる。
- 権威勾配
事故のメカニズム分析
- 問題事象の連鎖を書き出す
- 背後要因の存在を見つける
事故の特徴
https://resilient-medical.com/human-error/swiss-cheese-model
手順書においては複数の壁でミスを防ぐようにする。
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同一事象がないか確認(類似事象が発生している確率が高い) ハインリッヒの法則
「1件の重大事故の背後に、29件の軽微な事故があり、さらに事故につながりかねない300件のヒヤリ・ハットがある」
ヒヤリハットを共有する仕組みが必要 -
事故パターンの特定
包括的エラー・モデリング・システム(GEMS)
- 意図しない動作の起動: 習慣的にからだが動いてしまうミス
- 妨害で混乱: 動作の流れの途中で妨害が入った後におかすミス
- 意図の見失い: 動作の意図を途中で忘れてしまう
- 取り違え: 動作の対象に対する注意が不足して起きる
- 動作の混線: 途中で別の動作に乗り換えてしまう
- 無意識的モニターの狂い: 動作の省略、繰り返し、逆転
事故分析手法FTAに基づいて報告書の作成
ヒューマンファクター工学
人間に関する基礎科学から得られた知見を、人間や機械などからなるシステムに適用して、安全性、生産性、および人間の健康と充実した生活を向上させるための応用化学技術である。
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人間の特性に合わせる(人間中心設計)
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m-SHELモデルを参考にすると
人が使いこなす方法から現在では人間の特性を知った上で設計する方法に移行している。 -
ただし人間のイメージだけが優先されるものではなく他の要求事項も考慮しなければならない。人間にとって理解しやすい表示法や間違ったことをしようとしてもできないようにする仕組みが必要。
例)水道のレバーは上げたらでるのか、下げたらでるのか?震災を考慮し上げる方に統一
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自然な対応付け(Natural Mapping)
例)前進するのに後ろに引くレバー
自然な対応付けが壊れているところでは、いずれエラーが生じる
例)日本語の横書きは左から右に読むことを考慮する -
設計をする場合、対象者を明確にする。
→ 共通値をとるのがベストだが無理な場合は一番立場・レベルの低いひとに合わせる。
それでも無理なときはユーザを階層分けする、寛容性を持たせるなど現場にあった対応をする
プラスに働くヒューマンファクタ―
冗談で緊張をほぐす(緊張状態ではミスを起こしやすくなる)
ヒューマンエラー防止と業務の効率化
- 業務のコンパクト化(不要作業の削減)
- 自動化
→人間中心設計によって使いやすく合理的時間の省略
ヒューマンファクター工学3要件
- 設計の段階で安全確保のしくみを組み込むこと。
- 運用の段階では人間と機械の品質を保証すること。
- リスクが高まる兆候を早期につかみ、リスクが顕在化する前に対策をとること。
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運用段階で考慮しなければならないことは品質保証活動
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適切に動くことを確認するには想定結果を記載しておくことが大事
手順書には想定結果を必ず記載する -
人間の品質を保証するのは難しい要求事項を定める(知識・技術的能力)
ツールやドキュメントがいかに人間のエラーを誘発しにくいか考慮する必要がある。 -
決まり事でがんじがらめになってしまう?
例)チェックリスト
ストレスの増加やチェック項目の増加につながっては本末転倒である。
チェックリストを作る前にヒューマンファクタ―による対策を実施する
チェックリストのチェックリストはつくらない
リスクが高まる兆候を事前につかみ取る
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環境や時代の変化に対応する
ドキュメント、ツール、スクリプトのメンテナンス
時代が変わると人の常識も変化してくる。
本を読んでた世代とSNSを見ている世代では、文書の読み方に違いがある。 -
マイナス情報を集める
ヒヤリハット情報の共有とそれがおこないやすい環境づくり
「組織事故―起こるべくして起こる事故からの脱出」-J.Reasonによると
「良質な報告」を得るためには、情報を報告する側と収集する側との信頼関係を醸成し、
常に報告を促す努力が必要である。具体的には以下になる- 現実に可能な限り、報告者を懲戒処分から保護する。
- 情報の極秘性を確保したり、匿名での報告を認める。
- 報告を収集する部門と懲戒処分などを行う部門を分ける。
- 報告者に対してできるだけわかりやすいフィードバックを返す。
- 報告しやすい用紙フォーマットや質問内容にする。
報告の文化をつくることが大事
ヒューマンエラー対策
- 工学的な見直し
fool proof,fail safe
- 説明、説得、要請
- 人事
- 教育訓練
- シミュレーション
最近おこなわれている。意思決定の際のエラーを減らす。
戦略と戦術
- エラー自体の発生の防止
- エラーが損害に結びつく拡大の防止
エラーの回数=エラーが発生する可能性のある作業を行う回数 ∗ その作業一回あたりエラーが発生する確率
戦略的エラー対策 4STEP/Mに基づいたエラー対策
- エラー発生作業軒数を低減
- 当該作業でのエラー確率を低減
- 多重のエラー検出策
- エラー発生への備え
ヒューマンエラー対策11のガイドライン
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やめる(なくす)
- 無駄な作業をしない
- やり方を工夫して工数を減らす
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できないようにする
例)さわってわいけないスイッチにはカバーがついている -
わかりやすくする
- 太字になっていたり色がついている
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やりやすくする
- 作業スペースを広くとる
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知覚させる
- 生理的特性、認知的特性をの変化(眠気、疲労、老化による感覚器官の衰え)を認識する
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認知・予測させる
- KYT(危険予知トレーニング)、ツールボックスミーティング(作業前のうち合わせ)の実施
- ヒヤリハットやエラーの起きやすい危険なパターンの情報のデータベース化と共有
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安全を優先させる
- 重要なことは管理職自ら参加すること!
- わからないことはわからないと正直に言える
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能力をもたせる
- ノウハウや知識を身に着ける
- メンバーのスキルチェックの実施
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自分で気づかせる
- 指差呼称
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検出する
- ダブルチェック
人を変えて複数回確認すること - クロスチェック
観点をかえて確認すること
- ダブルチェック
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備える
- fool proof
- fail safe
- 代替手段の準備
- 組織的対応(社会的信用を失わないために、事故が起こった時にやるべきことを事前に決めておく。リスクマネジメント)
作業の3S化
- 単純化(Simplification)
- 標準化(Stsndardization)
- 専門家(Specilization)
→作業手順を明確化
人間行動は人間の特性と環境で決まる
心理学者レヴィン(Lewin)の行動の法則
B=f(P,E)
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B(ehavior)
決定された行動 <右へ走った、コマンドを打った> -
f(unction)
関数 <相互関係性> -
P(ersonality)
人間の特性 <ゲシュタルト特性> -
E(nvironment)
人間を取り巻く環境 <表示、手順書表記>