皆さん、こんにちは。大畑と申します。
小売企業でデータサイエンティスト兼データエンジニアとして働いています。データサイエンスの観点から、データの活用方法についてユニークな洞察を提供したいと思います。
アジェンダ
今回は、Power BIのレポート テーマについての話です。テーマの分類方法や選び方、そしておすすめのテーマについて詳しく解説します。
- レポートテーマとは何か?
- レポートテーマの概要
- 利点や注意点
- 構成要素
- レポートテーマの紹介
- 組み込みテーマの種類と分類
- 独自のティア表の公開と評価ポイントの解説
- カスタムレポートテーマの利用方法
- テーマ選択のベストプラクティス
- テーマ選択のロジック
- カラー要件やデータ特性の考慮
- 既存資料との整合性
以上が本日のアジェンダです。どうぞ最後までお付き合いください。
レポートテーマとは何か?
レポートテーマは、Power BI の表示タブにある機能で、レポートのビジュアルスタイルを統一するための設定ファイルです。この設定ファイルは JSON 形式で記述されており、色のパレットやフォントスタイル、ビジュアルのプロパティなどが含まれています。
レポートテーマの利点と留意点
レポートテーマの利点と留意点
レポートテーマを使用することで得られる利点と留意点について、以下にまとめました。
利点
- 一貫性の確保: 複数のレポート間で統一されたビジュアルスタイルを維持できるため、視覚的な一貫性が保たれます
- 時間の節約: 各レポートで個別にスタイルを設定する手間を省けます
留意点
- レポートテーマの選択を誤ると、データの色が適切でなくなり、視覚的に誤解を招く恐れがあります
- 重要なデータが目立たなくなったり、逆に強調されるべきでないデータが目立ってしまうことがあります
テーマ選択の際には、これらのポイントを考慮して、適切なテーマを選ぶことで、データの視覚的な伝達力を最大限に引き出すことができます。
レポートテーマの構成要素
次に、レポートテーマの構成要素について詳しく見ていきましょう。テーマのカスタマイズ画面の項目を基に、具体的な構成要素を簡単に説明します。
名前と色
- テーマの主要な色のセット(色1~色8)
- センチメント カラー、分岐の色
- 各レベル毎の要素、背景要素の色
テキスト
- 全般、タイトル、カードとKPI、タブ ヘッダーの単位
- フォントファミリ、フォントサイズ、フォントの色
ビジュアル
- 背景、罫線、ヘッダー、ツールヒントの単位
- 背景色、カラー、枠線の色やスタイル、透過性
ページ
- 壁紙とページの背景のカラー、透過性
フィルターウィンドウ
- フィルターウィンドウ、使用可能なフィルターカード、適用されたフィルターカードの単位
- 背景色、透過性、フォント スタイル、チェックボックスと適用の色
レポートテーマの紹介
次に、レポートテーマの種類について詳しく見ていきましょう。
通常のテーマ
Power BIには、あらかじめ設定された組み込みのテーマがいくつか用意されています。これらのテーマは、一般的な用途に適しており、すぐに使用できるよう設計されています。例えば、以下のようなテーマがあります。
アクセシビリティの高いテーマ
これらのテーマは、色覚異常のあるユーザーや視覚に制約のあるユーザーにも配慮されたデザインが特徴です。
カスタムのレポート テーマ
カスタムテーマは、自分のニーズに合わせてテーマを作成・編集できる機能です。他の人が作成したカスタムテーマをダウンロードして使う方法もあります。
白背景用/黒背景用のテーマ
また、上記の種類とは別に、テーマには白背景用と黒背景用の2つが存在します。
- 白背景用のテーマ:明るい背景に適した色の組み合わせが設定されており、視認性が高く、一般的な用途に適しています
- 黒背景用のテーマ: 暗い背景に適した色の組み合わせが設定されており、特にダークモード系を好むユーザーに適しています
レポートテーマの分類
次に、組み込みのレポートテーマの分類について見ていきましょう。レポートテーマは大きく3つに分類できると考えています(これはあくまで私、大畑の個人的な分類です)。
マルチ比較
これらのテーマは、データを細分化して比較する際に適しています。
下記の画像はレポートの一例です。
出典:Microsoft Fabric Community - Themes Gallery
グラデーション
これらのテーマは、データの連続性や変化を視覚的に表現するのに適しています。色のグラデーションを使用して、データの増減や傾向を示すことができます。
グラデーションテーマを使う機会は少ないかと思いますが、使いこなすのが難しいテーマかもしれません。下記の画像はレポートの一例です。
出典:Microsoft Fabric Community - Themes Gallery
ブランディング
これらのテーマは、企業やブランドのアイデンティティやコンセプトを反映するために使用されます。特定の色やスタイルを使用して、ブランドの一貫性を保つことができます。
下記の画像はレポートの一例です。
出典:Microsoft Fabric Community - Themes Gallery
通常テーマの分類
では、組み込みの通常テーマをこの3つの分類で分けてみましょう。
マルチ比較テーマ
まずは、マルチ比較テーマです。以下の10テーマがこの分類に含まれます。
グラデーションテーマ
次に、グラデーションテーマです。以下の5つのテーマがこの分類に含まれます。適切に使用すれば、データの流れやトレンドを視覚的に捉えるのに非常に効果的です。
ブランディング テーマ
最後に、ブランディング テーマです。この分類には3つのテーマが含まれます。
なお、「色の識別が困難なユーザー対応」というテーマは、アクセシビリティの高いテーマに近いため、これらの3つの分類には当てはまりません。
マルチ比較テーマのティア表
これはマルチ比較に分類される通常テーマを対象に、私、大畑独自の評価項目によるティア表です。
評価項目
以下の3つのポイントに基づいて評価を行っています。
なお、後述のティア表でテーマ名に「(黒背景)」と記載があるものは、黒い背景と組み合わせた状態での評価です。
-
目立つ色や目立たない色の評価
重要なデータが目立たない場合や、逆に強調されるべきでないデータが目立つ場合があります。 -
似た色の多さ
テーマ内に似た色が多いと、データの区別が難しくなります。異なるデータポイントが明確に区別できるように、色のバリエーションが適切であるかを評価します。 -
メインカラーの目への負担
メインカラーとして使用する色1が目に負担をかけるかどうかを評価します。目に優しい色が選ばれているか、長時間見ても疲れないかを考慮します。
評価の段階
評価はTier1からTier3の3段階で行います。
- Tier1: 色のバランスが良く、視認性に優れているテーマ
- Tier2: いくつかの問題点があるテーマ
- Tier3: 色のバランスや視認性に問題があるテーマ
これらの評価項目を基に、各テーマの評価を行い、ティア表を作成しました。
Tier3 レポート テーマ
公園テーマ(黒背景)
- 赤色が目立ちます
- 色2の紺色が目立たないです
教室テーマ(黒背景)
- 赤色が目立ちます
- 色2の紺色が目立たないです
トワイライトテーマ(黒背景)
- 赤色が目立ちます
- 色4の灰色が目立たないです
イノベーションテーマ
- オレンジが目立ちます
- 隣同士で似た色が2組あります
これらのテーマは、色のバランスや視認性に問題があり、使用する際には注意が必要です。
Tier2 レポート テーマ
次に、Tier2に分類されるテーマの解説です。これらのテーマは、いくつかの問題点があり、使用する際には注意が必要です。
高層ビルテーマ
- 色5と色8の緑系が似ているため、データの区別が難しくなります
- 色7の灰色が目立たないため、重要なデータが見落とされる可能性があります
- 使用する際は、緑系の色を調整するか、灰色を補強する工夫が必要です
クラシックテーマ
- 色2と色5の黒系が目立たないです
- 黒背景用に作られているようですが、黒背景だとさらに目立たなくなります
- 使用する際は、黒系の色を補強するか、他の目立つ色を使用することを検討してください
エレクトリックテーマ(黒背景)
- 黒背景では色7の紺色が目立たないため、データの区別が難しくなります
- 使用する際は、紺色の彩度を高くすることをお勧めします
既定テーマ
- 色1の青が目にチカチカするため、目に優しくなく、色1には適していません
- オレンジ色とピンク色が目立ちます
- このテーマは、Tier3に分類しても良いと思います。使用する際は、青色を調整することを検討してください
これらの評価コメントを基に、Tier2に分類されるテーマを使用する際には、色のバランスや視認性に注意を払い、適切な調整を行うことが大切です。
Tier1 レポート テーマ
エグゼクティブテーマ
- 特に目立つ色や目立たない色がなく、全体的にバランスが良いのが特徴です
- 色のバリエーションが適切で、どのようなデータセットにも適用しやすいテーマです
夕日テーマ(黒背景)
- 黒背景用に作られており、色2の紺色が少し目立たないものの、黒背景用のテーマの中では最も優れています
これらのテーマは、色のバランスが良く、視認性に優れているため、非常に使いやすいです。どのようなデータセットにも適用しやすく、特にエグゼクティブテーマはおすすめです。
マルチ比較テーマのティア表一覧
お勧めのテーマは、Tier1に分類される2つのテーマです。これらのテーマは、色のバランスが良く、視覚的に見やすいのが特徴です。どのようなシチュエーションでも安心して使用できるため、非常に汎用性が高いテーマです。
エグゼクティブ テーマは、デフォルトにしてほしいくらい優れています。
カスタム レポート テーマの紹介
次に、カスタム レポート テーマの紹介についてです。
Power BI には、カスタム レポート テーマをダウンロードできる便利なサイトがあります。それが テーマ ギャラリー です。このギャラリーは、Power BI forums サイト内にあり、さまざまなカスタムテーマが一覧になっています。
出典:Microsoft Fabric Community - Themes Gallery
テーマ ギャラリーの特徴
ユーザーが作成したテーマが多数公開されています。自分のレポートに合ったテーマを見つけることができます。このギャラリーを活用することで、より多様なテーマを試すことができ、自分のニーズに合ったカスタムテーマを見つけることができます。ぜひ一度訪れてみてください。
カスタム レポート テーマの利用方法
カスタム レポート テーマの利用方法について説明します。ここでは、テーマギャラリーからテーマをダウンロードし、カスタムテーマを適用するまでの手順を紹介します。
手順
- テーマギャラリーにアクセス
- Power BIの「表示」タブに移動し、「テーマのギャラリー」にアクセスします
- テーマギャラリーでは、さまざまなカスタムテーマが一覧になっており、ユーザーが作成したテーマを自由に探すことができます
- テーマのダウンロード
- ほしいテーマのページを開きます
- 各テーマには詳細な説明やプレビューが表示されているので、関連付けられている[xx.json]ファイルをダウンロードします。このファイルには、テーマの設定情報が含まれています
- テーマの適用
- 再び「表示」タブに移動し、「テーマを参照」を選択します
- ダウンロードしたJSONファイルを選択し、Power BIにインポートします
- これで、新しいカスタムテーマがレポートに適用されます
これらの手順を踏むことで、簡単にカスタムテーマを利用することができます。ぜひ試してみてください。
テーマ選択のベストプラクティス
次に、テーマ選択のベストプラクティスについてです。ここでは、レポートテーマを選択する際に考慮すべきポイントと具体的な例を紹介します。
1.カラー要件の有無を確認
特定の色を使用する必要がある場合、その要件に応じたテーマを調整することが重要です
-
データ属性へのカラーマッピング
例えば「YouTubeのデータは赤、Xのデータは黒にしてほしい」といった要件がある場合、それに応じて色を設定します -
既存資料へのカラーマッピング
例えば「レポートとセットになっているパワーポイント資料のカラーパレットに合わせて」といった要件がある場合、既存の資料と一貫性のあるカラーパレットにする必要があります
2.データ特性やアウトプットする指標を踏まえてテーマを選択
- データを細分化して比較する場合は、ティア1のテーマを選びます
- 「1つの軸で比較する」や「閾値を超えたか否か」を示す場合は、グラデーション系テーマを選択することで、データの変化や傾向を視覚的に捉えやすくなります
これらのベストプラクティスを基にテーマを選択することで、レポートの見た目をさらに洗練させることができます。適切なテーマを選ぶことでデータの視認性が向上し、ユーザーにとって理解しやすいレポートを作成することができます。
まとめ
レポートテーマの選択を誤ると、データの色が適切でなくなり、視覚的に誤解を招く恐れがあります。ですので、テーマ選びにはこだわりましょう。
おすすめのテーマ
私のイチ押しのレポート テーマは、ティア1と評価した「エグゼクティブ」です。このテーマは、色のバランスが良く、視覚的に見やすいのが特徴です。
テーマ選択のベストプラクティス
- カラー要件の有無: 特定の色を使用する必要がある場合、その要件に応じたテーマを調整することが重要です
- データ特性: データを細分化して比較する場合は、ティア1のテーマを選びます。一方、「1つの軸で比較する」や「閾値を超えたか否か」を示す場合は、グラデーション系テーマを選択することで、データの変化や傾向を視覚的に捉えやすくなります。
Power BI や Fabric に関するお役立て情報をこれからも皆さんにシェアしていきますので、今後ともどうぞよろしくお願いいたします。ご意見やご質問があれば、ぜひコメントをお寄せください。