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クラウド時代の常識「共有責任モデル」とは?オンプレとの違いから理解しよう

Last updated at Posted at 2025-07-26

はじめに

共有責任モデル(Shared Responsibility Model)」という言葉を聞いたことがあっても、それが何を意味し、クラウドコンピューティングにどんな影響を与えるのか、正しく理解している人は意外と少ないかもしれません。

本記事では、オンプレミスとの比較を交えながら、クラウドにおける責任分担の違いをわかりやすく解説します。

オンプレミスでは「すべて自社の責任」

まずは、従来のオンプレミス環境から見ていきましょう。

オンプレミス(自社データセンター) の場合、企業は以下の全てを自ら管理・保守する必要があります。

  • 物理スペースの維持(建物やラックなど)
  • 電源、空調、物理的セキュリティ
  • ネットワーク機器や物理サーバー
  • オペレーティングシステムやアプリケーションのパッチ適用
  • ユーザーアカウントやアクセス制御
  • データそのもの

つまり、「すべては自社の責任」です。

クラウドでは「責任を分け合う」

クラウドに移行すると、これらの責任がクラウドプロバイダーと利用者(コンシューマー)との間で分担されます。これが「共有責任モデル」です。

項目 誰が責任を負うか
物理的なデータセンターやネットワーク クラウドプロバイダー
クラウドに保存されたデータ コンシューマー(利用者)
ユーザーのID・アクセス制御 コンシューマー(利用者)
OS・ミドルウェアの管理 利用するサービスモデルに依存する

たとえば、クラウドSQLを利用する場合、データベースそのものの管理はプロバイダーの責任ですが、そこに保存するデータやアクセス制御は利用者側の責任です。

一方、自分でVM(仮想マシン)を立ち上げて、その中にSQLをインストールする場合は、OSやSQLのアップデートも含めて利用者側の責任になります。

サービスモデル別の責任範囲

クラウドサービスは、大きく次の3つに分類されます。それぞれで「どこまでプロバイダーが責任を持つか」が異なります。

1. IaaS(Infrastructure as a Service)

  • 物理インフラまではプロバイダー、それ以降は利用者の責任
  • OSの更新やアプリケーションの保守も自分で行う必要あり
ベンダー 製品例 内容 責任分担(例)
Azure Azure Virtual Machines 仮想マシンを自由に構成 OSのパッチ適用、アプリの管理は利用者
AWS Amazon EC2 自由に構成可能な仮想マシン セキュリティグループやIAMの設定は利用者責任
GCP Compute Engine スケーラブルなVMを提供 OSやアプリの管理、アップデートは利用者

2. PaaS(Platform as a Service)

  • OSやランタイムはプロバイダーが管理
  • アプリケーションとデータだけ利用者が管理すればOK
ベンダー 製品例 内容 責任分担(例)
Azure Azure App Service / Azure SQL Database WebアプリやDBのPaaS サービスの稼働維持やパッチはAzureが実施
AWS AWS Elastic Beanstalk / RDS アプリやDBを簡単にデプロイ アプリケーションコードとデータは利用者管理
GCP App Engine / Cloud SQL 自動スケーリング付きのPaaS ミドルウェアの管理はGoogle側、データは利用者責任

3. SaaS(Software as a Service)

  • ほとんどの責任がプロバイダー
  • 利用者は「ID管理」と「データ保護」に集中すれば良い
ベンダー 製品例 内容 責任分担(例)
Azure Microsoft 365 / Dynamics 365 オフィス系SaaS/CRM等 データのアクセス権・内容は利用者が管理
AWS Amazon WorkMail / Amazon Chime メール・コラボレーションSaaS データやユーザー管理の責任は利用者
GCP Google Workspace(旧G Suite) Gmail, Docs, Drive など コンテンツや共有権限はユーザー責任

責任モデルのまとめ

Iaas Paas Saas
データ 利用者 利用者 利用者
アクセス管理 利用者 利用者 利用者
アプリケーション 利用者 利用者 プロバイダー
OS・ミドルウェア 利用者 プロバイダー プロバイダー
仮想化レイヤー プロバイダー プロバイダー プロバイダー
物理ネットワーク プロバイダー プロバイダー プロバイダー

おわりに

クラウドは便利な反面、責任の所在が曖昧だと「誰も管理していなかった」状態になりかねません。特に多くのセキュリティインシデントは「設定ミス」「アクセス権限の甘さ」によるものです。

「クラウドにしたから安全」ではなく、「クラウドだからこそ責任を明確にする」 という意識を持ちましょう。

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