本稿では睡眠を改善する様々なキーワードを紹介し、それらを上手く活用した 質の高い睡眠と目覚めを実現するための一日の過ごし方 をご紹介します。
本稿は様々な学説に基づく知見を個人的にまとめたものであるため、あくまで参考としてご覧いただき、不眠などの症状が重い方は医師へご相談ください。
睡眠を改善するキーワード
レム睡眠とノンレム睡眠
- レム睡眠 : 眠りが浅く、眼球が動いている睡眠
- ノンレム睡眠 : 眠りが深く、眼球が動いていない睡眠
入眠後、私たちはまずノンレム睡眠の状態となり、続いてレム睡眠の状態となります。一度の睡眠で約90分間ずつ、ノンレム睡眠とレム睡眠を繰り返しており、 このサイクルを4回、つまり 約6時間の睡眠を取ることが必要です。
睡眠慣性
起床後に眠気やだるさが強く残り、睡眠から覚醒への切り替えができない一過性の状態を「睡眠慣性」と呼びます。睡眠慣性が強いと睡眠の質が低いと思いがちですが、睡眠慣性は睡眠時間や一晩を通しての睡眠深度に関与せず、覚醒直前の睡眠深度のみ関与します。つまり、 眠りの浅い時に起床することでスッキリ目覚めることができます。 ただし、スッキリ目覚めることができたからと言って睡眠の質が高いとは限らないので注意しましょう。
深部体温
「深部体温」とは体の内部の温度のことです。 眠気は深部体温が下がり始めたタイミングで得られることができます。 快適な睡眠を得るためには就寝前に深部体温を少し上げておくことが重要です。就寝前に入浴して深部体温を温めましょう。逆に体を温めすぎるとクールダウンに時間が必要となるため、適度な温度で入浴するようにしましょう。
カフェイン
カフェインが効くまでにかかる時間
カフェインの覚醒効果は摂取から約30分後です。 コーヒーを1杯飲んでから15分程度の仮眠をとることで脳をリフレッシュすることができます。
カフェインの持続時間
カフェインは体内から排出されるまでにかなりの時間を必要とし、摂取後してからカフェインの血中濃度が半分になるまでに約4〜6時間かかります。 午後2時以降はコーヒーの摂取を控えるようにしましょう。
カフェインとコルチゾール
「コルチゾール」は目覚めを促進する成長ホルモンです。コルチゾールは起床から1時間後に分泌量のピークを迎えるため、起床直後にコーヒーを飲んでしまうと、カフェインがコルチゾールの分泌を抑制して覚醒効果が失われてしまいます。 コーヒーは起床から1時間後に飲むようにしましょう。
入浴剤
入浴剤は成分によって「医薬部外品」と「化粧品」に分類されます。 化粧品の入浴剤は肌の調子を整えるものであるため、 質の高い睡眠を得たい場合は医薬部外品の入浴剤を選ぶようにしましょう。
交感神経と副交感神経
- 交感神経 : 朝から日中にかけて活発となり、活動的な状態になる自律神経
- 副交感神経 : 夕方から夜にかけて活発にはたらき、リラックスしている状態になる自律神経
パブロフの犬
「エサをやるときにベルを鳴らす」という行動を続けると、犬はベルの音を聞くだけで「エサの時間だ」と思ってよだれを垂たらすようになります。これは「パブロフの犬」と呼ばれる現象であり、「梅干しを見ると、唾液が出てくる」ように、この現象は私達人間も同様に起こります。この現象を活用し、ふとんの上を「眠るだけ」の環境としましょう。 脳に「ふとんの上=眠るだけの場所」と脳に思い込ませることによって入眠しやすくなります。
一日の過ごし方(毎日6:30起床の場合)
続いては、上述した「睡眠を改善するキーワード」を上手に活用した一日の過ごし方の一例をご紹介します。
6:00-6:30「Sleep Cycle alarm clock」で目を覚ます
「画像は『Sleep Cycle alarm clock』より」
スッキリした状態で脳を目覚めさせるには眠りの浅い時間帯に起床することが重要です。「Sleep Cycle alarm clock」はマイクによる睡眠分析によって睡眠サイクルを検知し、眠りの浅い時間帯にアラームを鳴らしてくれるスマートフォンアプリです(iPhone/Android対応)。このアプリは後述する「Hue」と連携して眠りの浅い時間帯に照明をフェードインすることもできます(本稿執筆時点ではプレミアム会員のみの機能)。
6:20 「Hue」で寝室の照明を徐々に明るくする
(画像は『Hue White and color ambiance Go ポータブル ライト 7146060J6 | Philips』より)
交感神経は明るい光によって活発化します。「Hue」は、スマートフォンなどの様々なデバイスと連携することができる「スマート照明」です。「Hue」のフェードイン機能を利用して起床10分前にセットしておきましょう。
6:30 冷たい水で顔を洗う&歯を磨く
起床後はすぐに冷たい水で顔を洗い、歯を磨くことで交感神経が活発になります。
6:35 オレンジジュースを飲む
オレンジジュースなどの柑橘類のジュースは胃腸を刺激して交感神経を活発化させる作用があります。
6:40 テレビを付けながら身支度をする
耳からの刺激も交感神経を活発化させます。テレビを付けながら身支度を整えましょう。
7:00 外出して最寄駅まで音楽やラジオをかける
外出して最寄りの駅に着くまでの間は音楽プレイヤーで自分のお気に入りのアッパーチューンを聞くことがオススメです。頭も冴え、一日のやる気も漲ってきます。
8:00 カフェで朝食とコーヒーを摂る
朝食をしっかり摂ることで胃腸を刺激し、脳が覚醒します。またコーヒーは起床から1時間以上経過したこのタイミングで飲むと目覚めにも効果的です。
12:00-12:45 外食/外にお弁当を買いに行く
太陽光は体内リズムを整える効果があるため、昼食はできるだけ外に出て太陽の光を浴びるようにしましょう。
12:45-13:00 目を閉じてストレッチ&マッサージ
15分間、目を閉じて身体をストレッチ&マッサージをしましょう。「筋膜リリース」と呼ばれるストレッチ方法が大変効果的です。
14:00以降 コーヒーを控える
14時以降にカフェインを摂取するとその日の睡眠の質を下げます。15時以降はコーヒーを控えるようにし、もし午後の眠気を吹き飛ばしたい時は「ストレッチ&マッサージ」のタイミングでコーヒーを飲むと効果的です。夜遅くにコーヒーを飲みたくなった場合は、デフカフェかカフェインレスコーヒーを選びましょう。
18:00-21:00 帰宅の電車で眠らない
帰りの電車で眠ってしまうと、寝付きも悪くなり、深い睡眠も減って睡眠の質が低下します。眠気が襲ってくるときは電車やバスの座席に座らないように心がけましょう。
22:00 医薬部外品の入浴剤で入浴する
深部体温を下げやすくするため、就寝1時間前のタイミングで入浴するようにしましょう。また医薬部外品の入浴剤を使うことも効果的です。
22:30 ストレッチ&マッサージで眠気を誘う
お風呂から上がった後は入眠しやすいようにストレッチやマッサージで体をリラックスさせましょう。
22:55 サプリメントを飲む
炭水化物と脂質に偏った食事は睡眠の質を低下させる原因となります。普段の食生活を改善することから良質なタンパク質やビタミン、ミネラルを取り入れることが望ましいですが、不足しがちな場合はこの就寝前のタイミングでサプリメントを摂取しましょう。
23:00 眠気を感じてから布団に入って目を閉じる
眠気のないうちは布団の中に入ってスマートフォンを触ったり、読書をしていると、脳はベッドを「活動する場所」として認識してしまいます。眠気を感じてから布団に入り、ベッドでは目を閉じることで脳はベッドを「睡眠する場所」として認識し、「パブロフの犬」の効果を上手に活用することができます。
23:30 就寝
さいごに
これまで紹介したプラクティスによって、きっと質の高い睡眠と目覚めを実現できるはずです。皆様のライフサイクルを見直すヒントとなれば幸いです。
参考としたウェブサイト
- ハフポスト日本版『寝起きがだるい? プロ直伝「快眠5つのコツ」を試してみて』
- NIKKEI STYLE『朝つらい、だるい…を解消 スッキリ起きる14の方法』
- NIKKEI STYLE『カフェインが気になる コーヒーは1日何杯までOK?』
- RESIDENT Online『なぜ"帰宅電車での居眠り"は体に悪いのか | プレジデントオンライン』
- 日本医師会『睡眠の科学』
- Forbes JAPAN『善悪あるコーヒーの健康「効果」、理解しておきたい本当のところ 』
- ダイヤモンド・オンライン『コーヒーとビールを正しく飲めば仕事の効率が高まる理由』
- ライフハッカー日本版『コーヒーの「飲み時」を科学する:目覚めの一杯には効果なし?』
- 花王ヘルスケアナビ『入浴剤の効果と選び方―すぐに役立つ健康入浴法(7)』
- 日経Gooday『睡眠:良質な睡眠のための自律神経の整え方 4つのポイント』
- 新R25『昼に眠くなる“睡眠負債”を解消!入浴や食事で「深部体温を下げる」快眠の鉄則を伝授』