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八木作戦 — 一射

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八木作戦 — 一射

電波を集めて圏外を殲滅せよ


🌒️ 序

自宅の圏外が酷い。

行政境界付近あるある、なのか。昔から携帯の通信がスポット的に弱い地区なのだが、最近特に酷い。部屋の中でも立つ位置によって、自分の市側の電波を拾ったり、隣の市側の電波を拾ったりと、切り替えが発生する。スマホはすぐ圏外になるし、ホームルーターも頻繁に通信エラーをおこし、ネット環境が劣悪になった。以前は音楽をよくかけていたのだが、ぶちぶち切れる音が煩い上、PCの帯域を食ってしまって肝心の作業ができなくなるので、最近はいっさい聞かなくなった。このまま放置はダメだろう。

主に使うのは隣の市側にある基地局のようなので、そちらの状況を調査した。

🌕️ 破

周波数帯

docomo

近隣の基地局からは band 3, 19, 21, 42 の電波が届いているとわかった。もともと 42 を中心に通信できていたはずなのだが、 5G の早期普及目的でこいつが一部 5G 転用されたあたりから急速に通信が不安定になった。

ちょうどギリで 5G圏外になるせいか、 5G と 4G の切り替えが頻繁に発生している。不安定で頻繁に圏外になる。この電波を増幅できれば、 5G の安定通信ができるかもしれない。

au

近隣の基地局からは band 18, 28 の電波が届いているとわかった。このうち、 28 の方が強く安定受信可能なようだが、ホームルーターの受信機が 18 にしか対応していないので、弱い電波を掴んでいる。こちらの電波を増幅することで、安定した通信を目指す。

電波を集める

八木作戦だ。

docomo 向けには、 band 42 の 3,440-3,520MHz をターゲットにした八木アンテナを用意する。

au 向けには、 band 18 のダウンリンクが 860-875MHz 、アップリンクが 815-830MHz なので、 870 あたりをターゲットにし、下限の 815 でもそこそこの特性を持つ八木アンテナを用意すればいい。

ここに記載の波長で十分だが、とりあえず計算はしてみる。

電波の周波数 $f$ と波長 $λ$ は、光速 $c$ と次の関係にある。

c = fλ

携帯の band を GHz 単位にすれば、 $10^9$ なので、
光速 $3 \times 10^{10} cm/s$ は、 $30cm/ns$ として計算すればよい。
単純な話、 $30 \div f(周波数GHz)$ で、 $λ(波長cm)$ が出る。

30/3.44 = 8.72
30/3.52 = 8.52
30/0.87 = 34.5
30/0.815 = 36.8

設計に使う $\frac{λ}{4}$ は、

  • docomo 向けが、 2.15cm ← 8.6cm = 3.49GHz
  • au 向けが、 8.75cm ← 35cm = 0.857GHz

MMANA

これを設計に使う。

使い方の説明はこちら。

参考にしたページ。

木材と3mmφアルミ棒で設計してみる。給電素子の部分をスマホとかに置き換えるので、そこにはホルダー的なものをが必要だろう。操作しやすい角度に置くのはちょっと工夫が必要かも。実験的な初号機としては、なるべく安く済ませた方が良い。パイプだと、切断するのに専用のカッターを用意しないといけないが、アルミ棒なら手持ちの道具で切れそうだ。

設計

10エレメントで、全自由度で作らせたら、けっこう最適化に時間がかかった。
2,001 sec = 30分以上かかったか。

docomo

全長20cm 最大幅10cm。
アルミ棒は 45cm長あれば足りる。

band42_3490
*
3490.0
*** ワイヤ ***
10
0.0,	0.02305,	0.0,	0.0,	-0.02305,	0.0,	0.0015,	-1
-0.0202,	0.0205,	0.0,	-0.0202,	-0.0205,	0.0,	0.0015,	-1
0.02,	0.02135,	0.0,	0.02,	-0.02135,	0.0,	0.0015,	-1
0.0376,	0.05285,	0.0,	0.0376,	-0.05285,	0.0,	0.0015,	-1
0.0626,	0.0186,	0.0,	0.0626,	-0.0186,	0.0,	0.0015,	-1
0.0792,	0.01655,	0.0,	0.0792,	-0.01655,	0.0,	0.0015,	-1
0.1032,	0.01805,	0.0,	0.1032,	-0.01805,	0.0,	0.0015,	-1
0.1408,	0.0301,	0.0,	0.1408,	-0.0301,	0.0,	0.0015,	-1
0.1564,	0.0161,	0.0,	0.1564,	-0.0161,	0.0,	0.0015,	-1
0.1784,	0.0189,	0.0,	0.1784,	-0.0189,	0.0,	0.0015,	-1
*** 給電点 ***
1,	1
w1c,	0.0,	1.0
*** 集中定数 ***
0,	0
*** 自動分割 ***
800,	80,	2.0,	1
*** 計算環境 ***
2,	3.0,	3,	0.1,	0,	0,	0

au

全長76cm 最大幅20cm。
アルミ棒は 90cm長が2本か。
でかっ。これをスマホのサイズで拾っているのか。。。

band18_857
*
857.0
*** ワイヤ ***
10
0.0,	0.0757,	0.0,	0.0,	-0.0757,	0.0,	0.0015,	-1
-0.084,	0.0802,	0.0,	-0.084,	-0.0802,	0.0,	0.0015,	-1
0.105,	0.0754,	0.0,	0.105,	-0.0754,	0.0,	0.0015,	-1
0.187,	0.09925,	0.0,	0.187,	-0.09925,	0.0,	0.0015,	-1
0.305,	0.07615,	0.0,	0.305,	-0.07615,	0.0,	0.0015,	-1
0.334,	0.0943,	0.0,	0.334,	-0.0943,	0.0,	0.0015,	-1
0.417,	0.0721,	0.0,	0.417,	-0.0721,	0.0,	0.0015,	-1
0.512,	0.0916,	0.0,	0.512,	-0.0916,	0.0,	0.0015,	-1
0.598,	0.0727,	0.0,	0.598,	-0.0727,	0.0,	0.0015,	-1
0.681,	0.08215,	0.0,	0.681,	-0.08215,	0.0,	0.0015,	-1
*** 給電点 ***
1,	1
w1c,	0.0,	1.0
*** 集中定数 ***
0,	1
*** 自動分割 ***
800,	80,	2.0,	1
*** 計算環境 ***
2,	3.0,	3,	50.0,	120,	60,	0

band18_857.png

材料

ホームセンターで調達する。サイズが手頃な docomo 用を先に試す。

- 輪ゴム ¥118 (折径80mm×3mm, 約85本)
- 白木材 ¥108 (600×12×18mm)
- アルミ ¥128 (995×3mm)
  • 合計 ¥354 (含む消費税等 ¥32)

家にあった輪ゴムでも良かったのだが、少し太めのがあったので調達した。

shopping.png

加工

ポイントは次のとおり。

  • サイズを間違えない
  • アルミ棒は切断箇所ごとに切り代を 1mm 入れておく
  • 切る前に油性ペンでマークして、どれがどれだか区別がつくようにする
  • 角で怪我をしないよう、ヤスリがけする
  • 給電素子パーツは、スマホに置き換わるのでスキップし、位置だけを示す
  • 木材は両端に 20mm 程度の余白を追加する
  • 穴を垂直にあける

簡易図面を用意しておくか。

docomo_band42.png

mermaid の xychart でこれぐらい描ければ便利なのだが無理っぽいので、素直に Google sheet に計算結果を貼り付けて作ったチャートを画像出力した。混合チャートだと横軸が等間隔しかできず若干リアルでないのだが、まあいいだろう。

横軸も実際の長さにして、できあがりに近い絵にするとこうだ。

docomo_band42_realized.png

垂直に穴あけするためのガイドを作ってみた。端材に軽く凹みを入れるという簡易なものだ。

guide.png

アルミ棒はニッパーで軽く切断できるが、切断面が凶器かってぐらい鋭いので、要注意だ。

cutting.png

alminium.png

失望した。がたがたやん。

wood.png

それでもなんとか完成。

anntena.png

反省会

加工は想像より難しかった。

  • 穴あけ位置が、ドリルを手持ちする方向の癖により、立ち位置によって上下にずれた
  • ガイドで鉛直を決めても、それがキープできず特に最初のが斜めの穴になった
  • 3mm棒に3mm刃では不十分で、穴を拡大する必要があった

次にやるときは、

  • キリの穴を2mmぐらいの刃で少し拡張しておくのがいいかも
  • ガイドの習熟の予備練習を入れた方がいいかも
  • ガイドを置くための端材を用意して、ガイドを棒と平行に置いた方が安定していいかも
  • 素直に 3.1mm 刃を買ったほうがいいかも
  • 前後に固定のための捨て代を確保して、常に同じ方向から作業できるようにするといいかも

実戦

確認は、部屋の中で一番良い場所で行った。窓際ギリギリまで寄り、基地局が目視できるポイントだ。小机の定位置にスマホを載せ、八木アンテナ有りと無しで、5G電波の受信レベル(いわゆる📶の立っている数)が変化するかどうかを確認した。同じことを、1m ほど室外に出た場所、バルコニー上でも確認した。

  • 室内: 八木アンテナ無し: 0-1
  • 室内: 八木アンテナ有り: 0-1
  • 室外: 八木アンテナ無し: 1
  • 室外: 八木アンテナ有り: 1-2

結果は微妙だ。

室内は、ほぼ差が出なかった。もともとほぼ圏外で電波が届いてないならどうしようもないのかもしれない。気持ち的に、1の時間が増えているかもという期待があるのだが、時系列データを長く取らないと議論できないので、今回は何も言えない。

室外では差が出た。微妙だが、八木アンテナ無しでは到達できなかった 2 が、八木アンテナ有りだとたまに出る。少しは増幅できているということになる。また、この時、アンテナの方角を変えるとすぐに電波強度が落ちることから、指向性がちゃんと出ていることもわかった。(同時に基地局が確信できた)

それよりも、室内と室外の差が明白に大きい。実は基地局が、部屋の窓面に対して30度という浅い角度の方向にある。 $\sin{30\degree}$ を計算するまでもなく、正三角形の半分だから、本来のガラスの厚みと比べて 2倍厚のガラスに匹敵する電波減衰効果がある。さらに、浅い角度だと反射が増えるので、反射による減衰効果も加わる。それで室内外ではっきりと強度差が出たのだろう。

残念ながら、 docomo band 42 の増強作戦は、現段階ではいまいちな結果となった。

  • もともと電波が弱すぎるのでさすがにきつい
  • アンテナが小さすぎて、本来の給電位置にスマホ内蔵のアンテナを正しく設置するのが、構造的に無理なので、やや後方に置くことになり、アンテナ性能を引き出せていない
  • 基地局までの距離が $約 400m$ なので、この距離で 5G受信するだけでも、実は凄いことかもしれない

shoot1.png

🌖️ 急

次は au band 18 で試す。こちらがむしろ本命だ。 band 18 が成功すれば、 docomo も band 19 をターゲットにしてみる手がある。

参考資料

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