"OpenDataによる経済成長" ということで世界銀行からレポートが出たので、気になったところを取り上げてみるメモ。
まず、目次の一覧はこちら。
- サマリー
- 序文
- 想定される市場規模
- OpenData市場の特徴とこれからの課題
- 経済成長に最も影響のあるデータとは
- OpenData利用企業
- ビジネスタイプ
- 今後のポリシー改善策
- まとめ
それぞれの章でだいたいどんなことが書かれているかは以下のとおり。
サマリー
最初に One of the key policy drivers has been to use Open Data to drive economic growth and business innovation.
とあってちょっとテンションがあがる。
序文
当たり障りのないことが書かれてるので、無理して読む必要性は無し。
面白かったのは、公開した文書を、同じ行政組織の別部署が使って、自分のデータと掛け合わせて考えてみましょう、というところ。海外でも部署の壁ってあるんだなー、みたいな。
想定される市場規模
いろんな団体が数字を出してるのの紹介だけど、基本的に盛り盛り数字なので、よほどそういう分析をしている方面のヒトじゃない限りは素っ飛ばすのがよいと思う。
OpenData経済市場の特徴およびこれからの課題
データを組み合わせるなど、本来の目的外に利用できることから、オープンデータは波及範囲が広い。
なので、直接的な利益だけではなく、間接的な利益も見ましょうね、という文脈、、、なのだけど、いきなり次のパラグラフで「計測するのは難しんだけどな!」
とか書いていて、「じゃぁお前、"想定される市場規模"の項目に書かれてる数字大丈夫なのかよ」と思わせるなど、なかなか闇が深いパラグラフ。
ちょっとおもしろかったフレーズとして、
advertiser-pays rather than end-user-pays.
利用無料で、広告宣伝部分で有料にするモデルの指摘があるのは、まぁ、エンドユーザからみたら、元は無料で配ってるデータだからっていう観点もあったりするのかな、という僕の所感。
これからのチャレンジとして挙げられているのは以下の通り。ごもっともである。
- OpenData施策は効果が出るまでに時間がかかる
- 間接的な利益を計測するのがとても難しい
- そもそも公共機関が利益を計測することが難しい(利益は民間側で計上されてしまうことも一因)
経済成長に最も影響のあるデータとは
なにをおいてもジオデータ
が挙げられている。
多くのデータと掛け合わせられる、最も核になるデータ種別である。
その他重要として挙げられているのは以下のとおり。
- 気象データ
- 道路・交通機関データ
- 企業登記情報(最新情報)
- 地籍情報
あと重要と思われるものはGovLabのOpen Data 500を参照してね、とのこと。
例えば "Department of Commerce" とか "Department of Health and Human Services", "Security and Exchange Commission"あたりが使われてるね、というお話。
OpenData利用企業
身も蓋もない書き方をすると、Open Data 500を見ろ、以上。という内容。
代表的な企業としては以下の4つが挙げられている。
- Zillow
- Zoopla
- Waze
- Climate Corp
WazeってOpenData利用事業者だっけ?というあたり、根本的な疑問がある。
ビジネスタイプ
OpenDataを利用してビジネスをする企業のタイプ。
ここ、わりと重要なのでみんな読むと良いと思う。
「OpenData活用でビジネス」というとDeveloperがイメージされることが多いと思うのだけど、実はそうじゃなくて、EnricherとEnablerも重要だよ、ということ。
そのあたりの分野の種類や振興活動は、日本だとまだまだ少ないし、認識されてないのではないかしら。
- Supplier: 自分の組織の情報をOpenDataとして公開している企業。Association of Train Operating Companiesの鉄道関連情報など。
- Aggregators: データを収集し、とりまとめて公開している企業。登記情報やジオデータなどの販売でよくみられる。
- Developers: データを使ってアプリを作っている企業。
- Enrichers: データに対して自社データを付与して公開・販売している企業。例えばアプリで収集したデータなどを付与したり。Crimate Corpのビジネスモデル。
- Enablers: データを整形し、APIを作成して公開している企業。Socrataなど。
あと、Microsoft Azure Datamarketのように、既存ICTベンダも参入しているという紹介あり。その場合、単に技術商品を売るだけではなく、データをより使いやすい形で(enrichして)公開しているところが重点。
とあるんだけど、Google Public Data repositoryとか、AWS Public Datasetとかのほうが例としてよかったのでは。。。という気がしないでもないあたり、これもちょっと闇。
今後のポリシー改善策
データ公開者となる場合、以下の4つの観点を満たしてゆくとよいのではないか、という提言。
- Supplier : データの提供者としての立場。継続的に、安定してデータを供給する役割。
- Leader : 他の組織に対してポリシーを広め、リーダーシップを発揮する立場。
- Catalyst : データ利用者、開発者をつなげる役割をもつ立場。
- User : 自身の別部署が公開しているデータや、近隣自治体などのデータを利用する立場。
僕の所感でゆけば、日本の行政ではすべてをカバーするの難しいけれど、その場合は民間とタッグになるなどして、機能はカバーする必要あるよね、というかんじがする。なんでもかんでも行政自身がやるのは現実的ではないなぁ、と思う。
とまれ以下、それぞれの役割で行うべき具体的な内容。
ほんとうはそれぞれの項目に説明が付いているので、ピンと来る内容は自分で読むとヨロシ。
Supplierでもあり、Userでもある、っていう視点は、あまり広まってないのではないかなぁ。
Supplierとして大切なこと
- Release data which businesses and others request and need
- Prioritize the release of “core reference data”
- Ensure that data can be found
- Ensure continuity of supply of data
- Release fine-grained and disaggregated data
Leaderとして大切なこと
- Extend the release of data beyond government ministries
- Actively participate and promote the use of open data
Catalystとして大切なこと
- Ensure that Open Data portals are more collaborative and demanddriven.
- Ensure that government data is properly explained, and that issues can be raised with the relevant expert officials
- Reach out not just to developers but to innovators and entrepreneurs in specific sectors
- Actively support and incubate innovation using Open Data and create institutional structures to do that on a sustainable basis
- Leverage existing government support programmes to ensure that they also contribute to Open Data objectives where possible
Userとして大切なこと
- Develop Open Data skills within the government institutions, regions and municipalities
- Ensure that the Government is using data services and products from the private sector.
まとめ
単にデータを出すだけじゃなくて、データチェインを作ってゆくこととか、その過程を通じて、技術や人脈を積み上げてゆくことが大切ですよー、ということが触れられている。
個人の所感でゆけば、内製化、という意味でもこれはとても大切。ただ、人脈のことを癒着と読むヒトもいるだろうから、そこらへんは匙加減なんだろうな、と思う。