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オープンデータAdvent Calendar 2015

Day 9

2015年政府標準利用規約の改定について思うこと

Last updated at Posted at 2015-12-09

2015年12月4日、内閣官房 IT室の開催する「第11回 電子行政オープンデータ実務者会議」にて、政府標準利用規約の改定について、委員からの承認が得られました。(参考: ITPro IT総合戦略本部が「政府標準利用規約」を改訂 食品成分表の無償化など)

これにより、改訂版となる、政府標準利用規約 第2.0版が、来年2016年1月より公開となり、既存の1版および1.1版からの切り替えが、関係各省庁に指示されることとなります。

ここでは、変更点について、およびその他にいくつか感じることについて、もぞもぞ文章を書いてみたいと思います。

スクリーンショット 2015-12-09 11.40.04.png

大前提として

いろいろと細かいところを書きますが、大前提として、僕はこの改定は、日本のオープンデータの進捗について大きな一歩だと考えています。

また、今回の改定に伴って各所調整をされた方々にはとても強い敬意を持っています。
素晴らしい成果です。

なので、「また @nyampire がケチつけてるよ」と取られることは僕の本意ではありません。
僕に協力ができることであれば、喜んで協力したいと考えています。

変更点について

1. 利用目的に基づいた制限の削除

いわゆる公序良俗条項として悪評の高かった「法令、条例又は公序良俗に反する利用」「国家・国民の安全に脅威を与える利用」の項目が削除されます。
(正確には、3項自体がまるっと削除されます)

これにより、対象となるコンテンツは、どのような目的あっても利用することが可能となります。
もちろん、公序良俗に沿わない利用に関しては、別項で述べられている「準拠法は日本法」の項目に従い、実施した利用の内容ごとに、日本の法律によって、著作権ではなく、刑法などの適切な法律による処罰が行われます。

準拠法の明言については、利用に際してのデータ越境の問題(例えば、日本のデータをイギリスで使った時にはどっちの法律が適用されるか?)が発生するものの、これはオープンデータに限った議論ではなく、国際的な調整も含めて粛々と進められることと考えます。

2. CC BY 4.0との互換性

記事では「CC BYとの互換性」となっていますが、正しくはCC BY4.0との互換性と明記されています。

Open Government Licenceにおいて互換性を謳うのは珍しいことではなく、台灣のライセンスにおいても記載が行われています。
日本の政府標準利用規約で参考にしたのは、英国のOpen Government Licenceみたいです。

この点について、細かい問題点としては以下の2点です。

  1. 4.0限定になっているので、日本で主に使われているCC BY2.1Jなどとの互換性がない
  2. 4.0以降のライセンスが出てきた場合、都度見直しが必要となる

1.については、今後自治体側が4.0に移行してくれるのを待つしかありません。僕も会議が終わった後に気が付きましたが、これはちょっと痛いなー、と思っていたりします。
また、Linkdataさんは自治体のデータ公開基盤として使われ始めていますが、そこでCCが付与される場合も、CC BY 3.0 unportedだったかと思います。

2.については、政府標準利用規約側の記述で「4.0以降」と書くこともできないことはないですが、契約を結ぶ際の観点から「未だ公開されていないライセンスとの互換性を謳うことはできないのではないか」という指摘点がでることが想定されるため、じゃぁどうしたらよいのかな、というのは悩ましいところです。

ちなみに僕だったら、Creative Commons限定ではなく「オープンなライセンス/Conformant Licensesとの互換性を有します」と書くかと思います。これならこのリストの内容が更新されても、参照ポインタを変えずに済みます。

よく考えたら、オープンなライセンス/Conformant Licensesには、CC BY以外にCC BY-SAなども含みますので、この方法は使えないですね。残念。

著作権の対象外について

「著作性のないものに対してもあるようにして扱う」という点が是正され、明記されるようになったことは非常に画期的なことです。

「数値データ」「簡単な表・グラフ」という書きぶりがわかりづらい、という意見もあるかと思いますが、これは著作権法の文面にあわせている可能性が高いと考えていて、これ以上のことはライセンスのなかでは書きづらいのではないかと思います。

1.0版の際に入手したデータについて

これは、過去のコンテンツを利用していた場合、そのコンテンツについては1.0版のライセンスがそのまま適用されることが明記されます。

まぁ、当然ですね。

他、委員からの指摘

委員から、「英語版も出すって書いてあるけど、これいつ出るの?」という指摘がありました。

現在IT室にて準備中とのことで、なるべく早く完成させるとのこと。

海外との調整を行うには英語版が基本となるので、これについては高い品質の翻訳をお願いしたいところです。(ちゃんと法務翻訳にかけてることを願っています)

オープンなライセンスの認定について

本来的なところでゆけば、オープンなライセンスと公知されるためには、Open Knowledgeが行っているライセンス認定プロセスを通すことが必要です。

英語版が出来上がったところで、Open Knowledgeに対してApproval Processに従った申請を行い、審査をうける必要があります。

この審査が通ると、Open Knowledgeにより、Conformant Licensesとして認定されます。
この作業の過程で、細かい文面の調整が必要になるので、わりと時間と労力がかかります。

本来的に言えば、来年度以降、このプロセスを回すと共に、2.1版の作成が必要になる可能性があるのですが、来年度のIT室の行程表にこの作業項目が無いように見えるので、政府で行うにはなかなかつらいのかもしれない、とも思っています。

オープンデータ化を検討するコンテンツについて

個別法令により利用ルールが定められているデータについては、調整を行っているとのこと。調整中のデータは以下。
どれも法律によってルールが定められているので、法律を変更する、あるいは施行規則を変更する必要があります。

  • 基本測量成果、公共測量成果
  • 気象、地震、津波、高潮、津波又は洪水の予報
  • 気象、地震動、火山現象、津波、高潮及び洪水の警報
  • 海上保安庁が刊行した海図など

どれも壁は厚く高いですが、なんとかしてゆきたいですね。(僕の本業も含めていろいろ)

資料の中で不安だったところ

「白書などで使用しているローデータ(図表の数値データ)」という文言があり、「いやそれ違いますし」と心のなかでツッコんでいました。

「白書などを構成するにあたって利用した元データのローデータ」が正しいかと思います。
ローデータと言いつつ、整形した後の数値データについて言及するのは違います。

政府標準利用規約以外の討議について

Open Data Censusや、Open Data Barometerなどのセンサスについて、日本からも指標を提案してゆく、あるいは全く観点の違うセンサスを日本で作る(防災減災、あるいは利活用指標)ことに、複数の委員からの賛同がありました。

僕は、これには反対です。
もともとのテストの点数が悪いから、別の採点指標を作ろう、というのは、テストの点しか見ていないことを意味します。

ただ、万が一そのような方針を進めるのであれば、それはそれでしょうがないのだろうとも思います。
その場合、Open Government Partnetshipなどへの参加や、オンライン・フォーラムでの発言を積極的に行い、「私」の声を「私たち」の声に変えてゆく必要があります。

そして、その活動は、政府だけではできません。特に、素早いレスポンスを公開のオンラインの場で行うのは、政府がとても苦手とするところかと感じます。
関係するステークホルダーの巻き込みが足りないと思っています。

あと、防災減災についての項目をセンサスに追加するよう提案するというのは、国連防災世界会議における仙台宣言のイニシアチブを実現するために必要な項目でもあり、日本が発信する意義は高いと考えます。
現状を把握した上で、既存のセンサスに盛り込めるようにしてゆけばよいのじゃないかと思いました。

もちろん、オープンデータの基本的な考え方として

ハザードマップとかを公開するのじゃなくて、自治体はそれを構成する元データ(LiDARとか施設位置とか)を公開して、ハザードマップ自体の作成は民間がやるんじゃねーの

という意見が @nyampire の左脳から出されており、どのような項目を提案するかは慎重な議論が必要かと思います。

「伝道師」について

ライセンスではなく、利活用のところの資料ですが、オープンデータの伝道師を任命する、ことを検討されているようです。ただこれ、政府がやることか?といわれると謎なので、Code for Japanのフェローシップとか、仕事旅行社さんのサービスみたいな仕組みを使ってゆけばよいのじゃないかしら、とは思いました。
他にも、仕事体験系のサービスや仕組みはいくつかあるかと思っています。

ってゆーか、高度IT利活用人材の派遣みたいな制度なのですが、年に何回かしか派遣されず、会議にしか出られないとか、とても惜しい制度になっている気がするなぁ、という気がしています。

このへんの対策については、Code for Japan Summit 2015で発表した資料にも書いていますので、こちらも是非。

政策決定へのビルトイン

こちらもライセンスの話ではなく、データ利活用の推進のところの記述になってしまいますが。。。
現状のオープンデータのやり方だと公開までにそれなりの時間がかかるわけで、それでは政策決定を行うにあたって、効果の薄いデータになってしまうのでは?という懸念があります。

別の部署のデータを使おうとする場合は、実はこうやって公開してくれているだけでも嬉しい、という意見もあるようですが、フレッシュではないデータは実際にはなかなか使いづらいという観点もあります。
なので、現状すぐのデータが公開されるようなシステム的な補助は、この体制を行う上で必須だと思うのですが、そうしたアプローチが見当たらないです。

委員からも「ページごとにライセンスの切り替えができるようにCMSを作るとか、システム的なアプローチしないとダメよ」というコメントがありましたし、上記の僕のプレゼンでも、「システム側で対応しないといけないのでは?」という提議をしているのですが、なかなかこのへんは、具体的な対象をみつけて実装しないと先に進まないのかもしれません。

そういう意味では、今年省庁内で実装されたと噂の某システムとかは期待するものがあります。
行政内部のシステムとワークフローを更改するような仕組みづくりになってゆくことを期待するものです。

最後に

プログラムと同様、ライセンスに関しても、「作って終わり」ではなく、フィードバックをもとにした改善が常に必要です。
アジャイル的、とでもいえばよいでしょうか。
今回の改定は、そのフィードバックがうまくいった活動のひとつかな、と感じます。

国は民間と違ってサイクルの間隔がだいぶん長いのですが、動いているなぁ、というのは感じます。
今後の動きにも注視してゆきたい所存です。

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