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人工知能 これまで/今/これから 2017/03版

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※本記事は2017年3月ぐらい時点の情報をもとに筆者の理解をまとめたものです。
そのため、情報は古い場合があります。
ご了承ください。

最近巷ではどこもかしこもAIで何たら、人工知能って何たらと申しており、半ばバズワードと化している感があります。
これからの可能性を大きく秘めた人工知能のこれまで、今、これからを自分なりの理解でまとめました。

■これまで


▼はじまり

1940年代:人工ニューロン(※)発表

(※)人工ニューロン
生体ニューロンと同じ性質のものをコンピューターを使って人工的に表したもの。
我々の脳はニューロンという神経細胞が無数に組み合わさって構成されている。
ニューロンは他のニューロンからの電気的刺激がある一定値を超えると、自分も興奮して電気的刺激を他のニューロンに伝える性質を持っている。
人工ニューロンを組み合わせたニューロンによるネットワークをニューラルネットワークと呼ぶ。

▼第一次ブーム(1950~1960年代) 推論・探索

  • 人工知能(AI)の誕生

  • 機械学習の原型が登場

  • 推論・探索
     →人間と同様の知能を表現することを試みる
      →実用化までは至らず(簡単なゲームを解けるレベル)

▼第二次ブーム(1980年代) 知識表現

  • エキスパートシステム
     専門家の知識をルールとして教え込み、問題を解決する試み(ルールベースのAI)
     →AIを動かすのに必要なルールの構築が難しい
     →ビジネスへの応用例はでてきたが、適用範囲は限られた

  • ニューラルネットワークの応用研究が進む

▼第三次ブーム(2000年代後半~今) 機械学習

  • 機械学習が実用レベルに達した
    ▽要因
      1.大量の学習データを容易に取得できるようになった
        →実用的なコストでビッグデータシステム構築が実現可能になったため
      2.学習環境のリソース調達が容易になった
        →パブリッククラウドの登場

  • ディープランニング(深層学習)の登場(2006年)
     大企業から研究の成果が次々と出てくるように
     Apple「Siri」、Microsoft「Bing」など...
     Google:1500を超えるプロジェクトで活用

▼2つのアプローチによる人工知能の進化

▽大人の人工知能

記号処理(※)を組み合わせて人間が話す言葉の意味を理解し、推論することができる理性の集合体としての知能を再現するというアプローチ。
インターネットの誕生で大きな進化を遂げる。
インターネットという巨大な知識の大海を構造化し、ランキングし、整理し、検索可能にした。
知能の元になるデータを集めるのが要となる。

(※)記号処理
情報を記号(シンボル)として解釈し、シンボル間の関係性などに着目した人工知能の開発アプローチの一つ。
機械翻訳、自然言語処理などで一定の成果を上げる。

▽子供の人工知能

生物の細胞構造を再現した架空の生命体(ex.人工ニューロン)をコンピューターの中に作り出し、理性ではなく本能的な学習を繰り返して生物の持つ知性を再現しようというアプローチ。
現在、急速に注目されているディープランニング(深層学習)は子供の人工知能に分類される。

研究者の数:大人の人工知能 > 子供の人工知能

■今


▼ディープラーニング(深層学習)革命

海外ではすでに深層学習をビジネスに展開しつつある(Google、Microsoft、Facebook、Amazon)
一方国内では取り入れつつあるレベルである。
・トヨタ(自動運転)
・ファナック(産業用ロボット)

・Googleの 囲碁AI AlphaGoが世界トッププロ囲碁棋士に勝つ(2016年)
・画像の自動生成

「アイドルの顔画像ジェネレーター」をGoogleの機械学習システム「TensorFlow」を応用して開発した人が現る - GIGAZINE

ディープラーニングを駆使してAIがトリックオアトリートなホラー画像を自動生成する「Nightmare Machine」 - GIGAZINE

・過去の画像から未来の映像を推測する(Deep PredNet)

自動運転での活用(危険予知)が期待される
大脳新皮質のメカニズムに近い→汎用人工知能(AGI)への活用

・写真から説明文を作る

画像キャプションの自動生成

逆に説明文から画像を生成させる技術も出てきているらしい...

・音声の自動生成

ディープラーニングで人間と同じトーン・スピード・抑揚を再現して自然な音声を出力する「WaveNet」をDeepMindが開発 - GIGAZINE

・ディープランニングを使った屋外監視カメラ

Netatmo、屋外型スマート防犯カメラ「Presence」を日本でも発表 | レポート | Macお宝鑑定団 blog(羅針盤)

▼子供の人工知能の進化

従来はあくまで人間が作ったルールの下で動く、いわゆる大人の人工知能が進化のメインであったが、深層学習の進化により、ルールを学習によって自ら学ぶ、いわゆる子どもの人工知能が進化のメインに移り変わりつつある。

▼深層学習により実現できること

1.認識

一番研究が進んでいる分野で、音声認識と画像認識に分かれる。
音声認識が最も進んでおり、既に実用化され商用利用が進んでいる。

Apple「Siri」、Amazon「Amazon Echo」、Yahoo「YJVOICE」など

画像認識は実用化が進みつつあり、ある単純条件下のタスク(ex.静止画像の画像分類)では、人間より高い認識率を実現している。

Google「Cloud Vision API」

Google Cloud Platform Japan 公式ブログ: Cloud Vision API による不適切コンテンツのフィルタリング

2.運動

ロボット工学に深層学習を取り入れる研究。
物を掴む(ピッキング)などの作業を試行錯誤しながら学び上達させていくことで自動化することが期待されている。(重機の操作など農業分野での適用)

Googleはロボットに物の掴み方を教えている | TechCrunch Japan

自動車の自動運転技術の研究にも取り入れられている
あらゆる走行シーンに対応しなければいけない
ルール通りだけではダメ→自動運転を実験していて、速度制限をきちんと守っていたらハイウェイに合流できなかった

3.言語

現時点では従来型のルールベースの人工知能を上回る成果は出せていないが、2016年後半にGoogle翻訳が深層学習を取り入れて目覚ましい成果を出したことが発表されており、進化の速度は上がっている。

Google Japan Blog: Google 翻訳が進化しました。

▼深層学習の進化のカギを握るのはハードウェア

ハードウェアの差 = 学習時間の差(数倍~数百倍)が出るため、深層学習に適したハードウェアを選ぶことは競合に先んじることになる。
Googleは優秀なハード技術者をヘッドハンティングして、自前でのハードウェアを開発してきたことを公表。

米Googleが深層学習専用プロセッサ「TPU」公表、「性能はGPUの10倍」と主張:日経コンピュータDigital

Googleが機械学習を爆速化する専用の「TPU」を数年前から極秘裏に作っていたことが明らかに - GIGAZINE

ハードウェアだけじゃなくネットワーク機器も自前で開発してたよう...

いかにしてGoogleは他の企業では成し得ないような驚くべきデータセンターネットワークを作り上げたか | インフラ・ミドルウェア | POSTD

GoogleのTPUの競合となるのが、NVIDIA(エヌビディア)。
主にゲームなどに使われるGPUのトップメーカーとして知られているが、このGPUが深層学習に適したハードウェアということから注目されている。

自律走行車開発プラットフォーム | NVIDIA DRIVE PX | NVIDIA

あくまで開発用で、量産車に載せられるのはまだ先。(消費電力250Wらしい...)
とは言ってもそんな遠い未来ではなく10年いや5年ぐらい先ですかね...

Intelも黙ってない
NVIDIAの独壇場に待ったをかけられるか? Intelが「Xeon Phi」の新製品「Knights Landing」をリリース | Think IT(シンクイット)

▼深層学習フレームワーク

各社がこぞってオープンソースで公開し始めた。

・TensorFlow(テンソルフロー) @ Google
・Totch(トーチ) @ Facebook
・CNTK @ Microsoft
・DSSTNE(デスティニー) @ Amazon
・Chainer(チェイナー) @ Preferred Networks

なぜ最先端の研究成果を無償で公開するのか?

・人工知能コミュニティにおける自社の存在感を向上したい
・人工知能開発者を自社のクラウドサービスへ誘導したい
・最終的には人工知能技術でイニシアチブを握りたい

深層学習に強い人工知能研究者が圧倒的に不足しており、研究者の囲い込みがカギとなっている。

■これから


▼人工知能は意識を持つのか?

▽受動意識説

 ・自由意志は全て幻想であり、意識は全て起きてしまったことに対して”後付け”で辻褄をあわせるだけの存在である
 ・慶応義塾大学の前野教授が提唱
 ・”意識”とは”圧縮記憶装置”のようなものなのでは?
 ・脳に入ってきた情報を選択的に長期的に記憶できるよう記号化するのが意識の役割では?
 ・一つの線の周りに枝葉がある風に圧縮されている?

この説に沿えば、”意識”は実装できちゃうかも

▽人間の感情は全て電気信号である

 ・外から電流を脳の特定の部位に流すと気持ちが変わる
  ex.腹側被蓋野に刺激を与えると目の前の人を好きになる
 ・感情(=脳波、ホルモン)が実装できると人工知能はより人間に近づける
  →まだ難しそう

▼ディープランニングの先にあるもの

▽汎用人工知能(AGI/Artificial General Intelligence)

 ・人工知能が人間とほぼ同じレベルで思考と会話ができる状態
 ・専門家でない人が想像する人工知能
 ・イメージはドラえもん
 ・今の人工知能はここまで達していない
  →実現できているのは認知・認識と言った脳の機能のごく一部のみ
 ・日立の人工知能技術「H」は汎用人工知能を謳っているが、それに対しては否定的な見方が多い 

▽全脳アーキテクチャ

 ・脳の全ての機能を実装しようという試み
 ・ドワンゴ人工知能研究所が研究開発の主体
 ・超人工生命(LIS/ Life in Silico)
  →AIを育てる学習環境シミュレーター

▽シンギュラリティ

 ・技術的特異点とも言われる

この用語を提唱したレイ・カーツワイルによれば

「100兆の極端に遅い結合(シナプス)しかない人間の脳の限界を、人間と機械が統合された文明によって超越する」瞬間の事

 ・最初のAIを発明することが人類最後の発明とも言われる?
 ・人工知能の思考能力が人間を追い抜く時期のこと
 ・2014年時点では2045年と言われたが、2016年時点では2025年とも

▽人工知能の世界支配は起こり得る?

 ・AIは一つではない
 ・スーパーAIみたいな唯一神にはならない(コピーできるから)
 ・育った環境(学習環境)で個性いろいろ(人間と同じ)
 ・AIを育てるスキルは今のところ価値のあるスキル
  →その内AIがAIを育てるようになり不要になるかも

▽人工超知能(ASI/Artificial Super Intelligence)

 ・人間よりも遥かに高度な知能を持った人工知能
 ・汎用人工知能(AGI)が作られたその先に生まれると予想されている
 ・人工知能が作る人工知能
 ・最初に人工超知能を開発した国がその先の世界の覇権を握る

■参考資料


よくわかる人工知能 最先端の人だけが知っているディープラーニングのひみつ

・日経SYSTEMS 2016/9月号 特集3:ITエンジニアに変革迫る 最新「人工知能」の核心

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