少し前ですが、2022年6月にデータエンジニアとして 株式会社ナウキャスト(Nowcast) に入社しました。
刺さる人には刺さるユニークな会社なので、仲間集めを兼ねて、入社の経緯と入社後3か月過ごした印象をまとめておきたいと思います。
少なくとも自分には刺さっているので、手前味噌感漏れ漏れですが、ご容赦くださいw
転職活動の参考にしていただけたら幸いです。
転職のきっかけ
前職は、受託でデータ分析をする会社にいました。データエンジニアを経験した後、終盤は案件横断のアレコレをする立場にいました。受託のよさはいろんなクライアントのデータを扱う機会がある点で、実際、
- 飲食料品メーカー
- ショッピング施設
- 占いサイト
- ファッション EC
- 旅行 EC
- ゴルフ EC
- 電力
など、多様なクライアントのデータ活用基盤を構築できました。他方で、受託案件ゆえに、
- 支援する立場なので任された範囲にしか手が届かない
- 特にクライアントの部署を跨ぐ必要のある施策の実行ができない
- 契約を獲得したり、期待値コントロールしたりなどに時間を割かないといけない
- すべてはクライアントの予算次第
- クライアントの社内政治に巻き込まれる
- いつ競合ベンダーに切り替えられてもおかしくない
- 道半ばで終わることもある
といった難しさがありました。また、支援業者ゆえに、
- 案件単位で社内がサイロ化しがち
- 成果(売上)重視で技術的なチャレンジがしづらい
- 様々な契約の縛りに目配りしつつ共通のシステム資産を蓄積・活用していくことが難しい
といったもどかしさもいろいろ経験しました。特に AI 案件は PoC で終わる案件も多く、受託の難点を強く感じていました。
終盤はデータエンジニアとしての業務からは離れていましたが、今後のキャリアを考えたときにデータエンジニアとしてもっと経験を積みたい、また、今度は受託型ではなくプロダクト型の企業に転職したいと思い、転職を決意しました。
なお、受託にもいろいろあって、ここではかなり単純化していますし、魅力的な案件も沢山あります。また、前職のことは今でも応援しています。単に自分のキャリアの理想を叶える環境として、前職の環境は少しズレてきたというだけです。
プロダクトと一緒に成長したい
転職の軸は下記3点ありました。
- プロダクト型か
- 成長中の会社か
- どのくらい自分を必要としてくれているか
2点目は、人数でいうと100人未満くらいを狙っていました。また、その業界やビジネスモデルに将来性があるかどうかも考慮しました。出来上がっている会社よりも、会社と一緒に成長できるかどうかを重視しました。
3点目は、スキルやカルチャーがフィットしているかも関わってくると思いますが、自分を必要としてくれる環境の方がやる気が出るので重視していました。よいやり方かはわかりませんが、いつくかの転職サイトに登録して、スカウトをいただけた会社に絞って選考に進むことにしました。ナウキャストもその中の1社でした。
入社の決め手は雰囲気
転職の軸を満たす会社はいくつかあったのですが、最終的には面接で話したりオフィス訪問をしたときに感じた雰囲気のよさ・話しやすさで決めました。カジュアル面談を含め、人事担当の方1名、現場のエンジニアの方4名、ナウキャストの CEO、ナウキャストが属する 株式会社 Finatext ホールディングス の CEO など、多くの方と選考の中で話すことができ、みなさん仕事に情熱がありつつ気のいい方達だったので、楽しく働けそうだなと思ったのが決め手でした。
入社前の懸念
経済オタクに囲まれて疎外されないか
そうなってもまあよかったですし、半分冗談ですが、社員の方々の紹介ページ を見たときに CEO を始め経済学部出身の方が多かったので、話についていけなかったらどうしようと少しだけ心配していました。(自分は文学部出身です。)
でももちろんそんなのは杞憂で、普通に旅行とか趣味の話をするし、エンジニアはエンジニアリングの話をするし、全く疎外感はありません。むしろ、社内のアナリストが Slack で物価上昇とかを話題にしていたりして、世の中の動きを感じながら働くことができてよい環境だと思っています。
ホールディングスとの関係は良好か
- 仕組み的にホールディングスの社員の方が待遇がいい
- ホールディングスがすべてを決める
こういうことがあると嫌だなと思っていたのですが、全くの杞憂でした。
1点目に関しては、所属関係なく職種毎に同じ「スキルサークル」(エンジニアならエンジニアサークル)に属し、その中で共通の基準で評価されます。
2点目に関しては、さすがに最終的な経営判断はホールディングスの経営層も含めた会議で検討されるけれども、ホールディングス全体に現場の裁量を重視する文化があり(いちいちエスカレーションして上で決めていたら回らない)、何かを決める際も全社員が意見を言えるオープンな場で対話的に話し合いがなされます。また、特に開発に関しては担当チームのエンジニアが判断して方針を決めています。
ホールディングスにはいろんな会社がありますが、事業単位くらいで便宜的に分かれているに過ぎず、勉強会や飲み会等、社員同士の交流も盛んですし、壁も上下も全く感じません。
入社後のギャップ
エンジニアの年齢層が若い
とにかく若い方が多いのに驚きました。経験年数を聞いて、1年2年でそんなに成長するものかと、過去の自分と比べて驚くことばかりでした。ポテンシャルの高さもありつつ、任されている裁量が大きい環境の中で必死にやってきた結果なのかなと思います。全体感でいうと、20代後半が一番多く、30代前半が次に多いくらいのイメージです。
システムはまだまだ未完成
今提供できているサービスに特化していて、扱うデータが増えたり利用者が増えたりといった今後のスケールのことを考えるとまだまだ発展の余地がある、といった印象です。ただ決してネガティブな印象ではなく、そこで力を発揮するチャンスがあると思っていますし、逆によかったです。自分以外にもそういうチャンスを感じて転職してきたメンバーもいます。
ホールディングスのインフラがすごい
金融業界を相手にしていることもあり、セキュリティに強い CTO の s_tajima さんがプラットフォームユニット(ホールディングスの部署横断チーム)を率いていて、セキュリティ面がしっかりしています。クラウドは基本的に AWS なのですが、権限はプラットフォームユニットが作った GitHub + Terrafrom + Atlatis の仕組みで自動化しており、それを活用できるので、自分達の事業に集中できています。
その他の面でも自動化・便利ツールの開発が進んでおり、前職で社内のアレコレを担当していた立場として、直接的な売上を生まない部署にここまで投資できる経営判断はもちろん、プラットフォームユニットのスタッフの努力と成果には感動すら覚えます。
ナウキャスト以外の事業も魅力的
ナウキャストの事業も魅力的ですが、ホールディングスの他の事業も魅力的で、少ない人数ながら、証券や保険といった伝統的な金融業界において革新的でありつつ地に足のついた事業を次々に生み出しています。また、それぞれの事業で技術スタックの特徴が異なっており、いろんな強みを持った方々が分け隔てなく交流しているので、1エンジニアとしても刺激をもらうことばかりです。
ところでナウキャストを何をしている会社なのか
ナウキャストは、クレジットカードの決済データ等をデータホルダーから入手し、それらを加工して国の機関や、機関投資家、事業会社等に提供するのが主な事業です。
データ分析業界にいると、消費者の購買データを分析してマーケティングの施策に活用することってよくあると思うのですが、使えるデータは大抵下記5つ程度かなと思います。
データ | 限界 |
---|---|
自社EC購買データ | 自社サービス内の購買行動しかわからない。 |
3rd Party のEC購買データ | 自社サービス以外の購買行動もわかるが、EC以外がわからない。 |
自社店舗のPOSデータ | 自社店舗内の購買行動しかわからないし、誰が買ったかはわからない。 |
小売業者から入手したPOSデータ | 他社商品・サービスの購買行動もわかるが、やはり誰が買ったかはわからない。 |
モニタ購買データ(※1) | 誰が買ったかはわかるが、母数と対象店舗に一定の制約がある。 |
(※1) 調査会社が一般消費者に対価を支払ってレシートをスキャンしてもらって集めたデータ
クレジットカードの決済データは、決済手段=カードという限定と、カード利用者の属性に偏りはあるものの、
- チャネル(ECか実店舗か)を問わない
- 企業(自社か他社か)を問わない
という特徴があり、表に挙げたデータの限界をカバーするポテンシャルがあります。さらに、包含する購買行動が広いため、マクロな消費動向を読み取ることもでき、事業会社だけではなく、国の機関や、機関投資家にもニーズがあります。
しかしながら、クレジットカード会社が自分達でデータを外販するとなると、
- モチベーションよりリスク回避が勝つ
- 一定のデータ加工やデータ提供の基盤を開発・運用する必要があるがリソースがない
といった課題があり、結果的にクレジットカードの決済データが市場に出回る機会はほぼありませんでした。
ナウキャストは、こうしたデータホルダーのペインを解消しつつ、市場のニーズに応えており、それゆえ Two-Sided Platform を標榜しています。クレジットカードの決済データを必要とするクライアントに品質の高い加工データや分析レポートを提供することでデータの民主化を実現しつつ、レベニューシェアでデータホルダーに利益を還元するという、稀有な事業を手掛けており、市場において独自のポジションを確立しています。また、クレジットカードを例に説明しましたが、位置情報や POS データも扱っており、複数種類のデータを組み合わせて価値を提供できている点もユニークな点です。
データエンジニアにとって何が面白いのか
現在進行形で広がるデータの選択肢
プロダクト型の企業にデータエンジニアとして転職をしようと考えたときに選択肢としてすぐ思い浮かぶのは、コンシューマーアプリや SaaS を提供している会社だと思います。規模(とそれを捌くクールなシステム)を求めるならコンシューマーアプリですし、事業ドメインへの関心を重視するならバーティカル SaaS なども選択肢に入ってくると思います。もちろん筆者もそういった会社に興味がありますし、十分チャレンジングで魅力的だと思いましたが、他方で、
- データがサービスに依存する
- 活用先が基本的に自社サービス
といった制約もあり、作る物の目的としては受託で経験してきたこととそれほど変わりはなく、想像の範囲を超えないと思いました。
ナウキャストはというと、プロダクト型の企業によくある、自社サービスのユーザ分析や社内のアナリスト向けの分析などのデータ基盤に携わる機会もありつつ、
- 戦略に応じてデータホルダーの開拓を進めており、データの選択肢が現在進行形で広がっている
- データの活用方法・出口も理論上、無限に広がっている
といった他にはない環境があります。裏を返せば、
- データホルダーとの関係性が続かなければデータを入手できない
- 他社から仕入れたデータを加工しているため、データの発生から活用までを一気通貫でマネジメントできない
といった限界もあり、もちろんよい面と悪い面の両方があります。
マッピングが面白い
データ加工についてですが、実はここが事業のコアであり、エンジニアにとって面白い部分でもあります。クレジットカードの決済データは、決済名(店舗名)がわかるだけで、表記揺れがあったりするため、そのまま使えるデータではありません。ナウキャストでは、自社開発のマスタデータを使い、ブランド、企業、上場会社であれば証券コード等を決済データに紐づけ、意味のある情報にしています。この作業をマッピングと呼んでいます。ここの付加価値が大きく、一朝一夕では真似できないため、競合が出てきても競争優位性を保てる自信があります。
要はカオスな状態のデータを価値に変えているわけですが、人によってはそのカオスに巻き込まれたくないと思う方もいるでしょう。筆者の場合、そのカオスを制御したい気持ちの方が勝つので、そこに面白さを感じています。マッピングだけだとアレかもしれませんが、ETL や DWH も構築しつつマスタデータ自体もゼロから作っている点がユニークだと思っています。
データを扱う人が主役
最終面接で CEO にデータを扱う人が主役と言われたことが印象に残っているのですが、実際、入社して3か月くらいで、すでに担当したマッピングが新しい契約に結び付いて売上に貢献できており、エンジニアとして稀有な経験ができました。
データビジネスの世界には多様なプレイヤーがいますが、大きな流れでいうと、通信キャリアや電子決済が一体化した巨大なデータホルダーが、赤字も厭わず消費者を囲い込んで苛烈な競争を繰り広げている状況だと思います。この流れが行きつくところまで来たら、自社データだけではこれ以上どうにもならない状況となり、大データシェアリング時代が来るのではと思っています。それはまさにデータを扱う人が主役の時代で、ナウキャストでの経験が活きる、と妄想しながら日々研鑽を積んでいます。
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カジュアル面談お待ちしてます
まだまだ少人数で頑張っていて年中採用中です。少人数な分、入ればその人の強みが際立つのでやりがいを感じられると思います。今ナウキャストがやっていないことでも、ご自身の強みを生かしてどんどん提案してもらえれば、「それいいじゃん」と応援してくれるノリの良さもあります。
興味を持っていただけたら、是非 Meety からカジュアル面談に応募していただければと思います。
以上