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DeepRacer Championship(re:Invent2024)を振り返る

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はじめに

株式会社NTTデータ テクノロジーコンサルティング事業本部の@nttd-kashiwabarayです。
re:Invent2024の中で、DeepRacer Championshipが開催されました。私は2022年、2023年とファイナリストとしてDeepRacer Championshipに出場させていただきましたが、今年はファイナリストにはなれませんでした。ただ、ワイルドレースに参加し、ファイナルレースを見届けてきましたので、その内容についてお伝えできたらと思います。
なお、毎年re:Inventで開催されてきた、DeepRacer Championship大会も今年で最後となります。これで最後というのは非常に寂しいですが、DeepRacer自体はオープンソース化されて続いていくようなので、引き続き続けていけたらと考えています。

DeepRacerとは

DeepRacerは、Amazon Web Services(AWS)が提供する強化学習を活用した完全自律型の1/18スケールレースカーで、楽しく機械学習を学ぶことができます
DeepRacerには、車体の前方にカメラが搭載されており、このカメラが取得した画像をもとに、自動車の位置、トラックの境界線、周囲の障害物などを認識します。そして、画像処理を通じてこれらの情報を解析し、自律的な走行を実現します。実機を使用したレースでは、速度のみをコントロールできます。

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DeepRacerを実際に走行させる前に、シミュレーション環境での学習が必要です。このシミュレーション環境は、Amazon SageMakerAWS RoboMakerKinesis Video StreamsS3といったAWSのサービスによって構成されています。利用者はこれらの技術的な詳細を意識することなく、AWSマネジメントコンソールを介して簡単に学習を行うことができます。

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学習の流れについては以下のブログで記載しておりますので、もし興味があればご覧ください。

DeepRacer Championshipとは

DeepRacer ChampionshipはAWSが主催する世界的な自律型レーシングリーグです。毎年re:Inventの中で開催され、Expoエリアでレースが行われます。世界からトップレーサーが集結し、世界一を競います。
上位6人のレーサーには以下の賞金が贈られます。また、1位から3位の方には賞金に加えてトロフィーおよびDeepRacerのジャンパーが贈られます。

順位 賞金
1 $25,000
2 $11,000
3 $6,000
4 $4,000
5 $2,500
6 $1,500

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今年レースで大きく変わった点は以下のルールという点もあったのですが、大きな改善があったのはレース中のモデルの入替時間です。これまでは20-30秒程度かかっていたのですが、今回は数秒で入替が可能になりました。私も実際に試しましたが、かなり速くなっています。客観的に見ているとモデルチェンジを実施したのかどうかが分からないくらいになっていました。これによりレースの戦略が大きく変わります。2分間というレースの中で20-30秒のロスは致命的になりますが、今回は何度も変更することが可能でした。実際にレースの中では頻繁にモデルチェンジが実施されていました。ただ、最後のレースのタイミングでのこのアップデートはDeepRacerチームの最後のレースをより良いものにしようとする思いが伝わってきました。
DeepRacerの実機レースでは、同じモデルだったとしても、実機との相性もあり、全く同じ走りにならない点が難しさでもあり、面白さでもあります。いくつかモデルを準備しておき、必要に応じてモデルを変更して走らせる必要があることもあります。

【ルールの大きな変更点】
・Round1とRound2でレースの方向(時計回り or 反時計回り)が変更
・Round3(ファイナルレース)のレースの方向(時計回り or 反時計回り)がコイントスにより決定
・Round3(ファイナルレース)が例年の1周勝負から2分間のレース(2周連続のアベレージラップ)に変更

これまでと特に大きく変更となるのがレースの方向が変更となる点です。時計回り、反時計回りそれぞれのモデルを準備する必要があります。

【今年のトラック】
今年のトラックは「Forever Raceway」となります。こちらのコースは2022年のAWS Summitのコースと同様となります。ただし、今回は時計回りになることと、トラックの幅が30%狭くなっている点が大きな特徴となり、難易度が上がっています。レース会場の画像も載せますが、実際に見ても通常のレースに比べてかなり幅が狭く感じ、コーナーはスピード感をもって突入するとコースアウトする可能性が高くなっています。

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引用元:https://i2.wp.com/blog.deepracing.io/wp-content/uploads/2024/11/image.png?resize=768%2C349&ssl=1

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なお、昨年のDeepRacer championshipの模様は以下のブログで記載しておりますので、興味がありましたらぜひご覧いただければと思います。

DeepRace Championshipファイナリスト

今年のDeepRacer Championshipのファイナリストは以下の選出となり、合計32名となります。例年よりもファイナリストの数が少なくなっています。一方でワイルドカードレースは例年の2名の枠から6名の枠に拡大しています。

・2023年のDeepRacer Championshipのチャンピオン

・2023年のDeepRacer re:Invent オープン トップ入賞者

・2024年バーチャルサーキットのレースの優勝者24名(年間を通じて行われた 4 ヒートのそれぞれで 6 つの地域で上位入賞)
⇒毎月レースがバーチャルレース開催され、1位から順番にポイントが加算されます。2か月毎(3-4月、5-6月、7-8月、9-10月)、地域毎(Asia Pacfic、Europe、Greater China、Middle East & Africa、North America、South America)の優勝者がファイナリストとなります。

・2024 re:Invent のワイルドカードレースの上位6名

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ワイルドカードレース

ワイルドカードレースはre:Inventの参加者であれば誰でも参加できるレースとなります。ルールは以下となりますが、2分間の走行の中で1周のベストラップを競う形となります。上位6名が翌日から始まるラウンド1に進出できます。

【ルール】
レーススケジュール :  2024年12月2日午後4:00-午後7:00(太平洋標準時)
トラック      : Forever Raceway
方向        : 時計回り
ランキング方式   : シングル最速ラップ
形式        : タイムトライアル
レーススタイル   : 連続ラップ
1 回の試行時間   : 2分

結果は以下の通りとなります。こちらは2分間のうちの1周のベストラップとなるので、Round1以降とはルールが異なるのですが、かなりハイレベルのレースとなりました。実際にワイルドカードレースから、優勝者を含むベスト8が3人でておりますし、Round1においてもワイルドカードレースからの参加者は2位、3位、5位、10位、14位、21位と上位に食い込んでいます
ワイルドカードレースは、練習走行もなく、1レースの中でタイムを出す必要があるかなり難しいレースの中で、上位に入った各レーサーの勝負強さには驚くばかりです。

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Round1

Round1は2日制で行われました。1日目はAsia Pacfic、Greater China、Middle East & Africaおよびワイルドカードレースの1位、3位、5位のレーサーの合計16名が、2日目はEurope、North America、South Americaおよびワイルドカードレースの2位、4位、6位の合計16名が参加します。午前中に練習走行を実施し、午後からレースというスケジュールになっています。ルールは以下の通りとなります。

【ルール】
レース スケジュール : 1日目 - 2024年12 月3日午後12:00-午後 5:00 (太平洋標準時)
             2日目 - 2024年12 月4日午後12:00-午後 5:00 (太平洋標準時)
トラック      : Forever Raceway
方向        : 時計回り
ランキング方式   : ベスト平均ラップタイム
形式        : 連続 3 ラップのベスト平均ラップ
レース スタイル     : 連続ラップ
試行回数      : 2
1 回の試行時間    : 2分

このルールの難しいところは連続3周のベスト平均タイムという点です。連続3周のうち1周でもコースアウトしてしまうと、タイムロスになってしまうため、3周連続でコースアウトせずに走行することが重要です。一方でその中で攻めた走りをしないと好タイムは得られないので、コースアウトしないことを重視しながらも、いかに攻めた走りが出来るかが上位に食い込む鍵となります。

レース結果は以下の通りとなります。AIDeepRacerさんが3周の平均タイムで8.1秒という驚異的なタイムでトップになりました。一方で昨年の優勝者であるFiatLuxさんは11位、昨年3位だったDBroさんは28位と毎レースでコンスタントに結果を出す難しさを感じました。
その中でも2022年5位、2023年4位のrosscomp1さんは今年も安定した走行を披露し、今年もベスト8のRound2以降の進出を決めました。バーチャルレースでも2022年から年間2位、1位、2位とトップを走り続け、リアルレースでも毎年安定して上位に入るのはすごすぎます

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Round2

ワイルドカードレース、Round1は「時計回り」で行われてきましたが、Round2は「反時計回り」に変わります
DeepRacerの場合、「時計回り」と「反時計回り」で走りは大きく変わってしまうので、「時計回り」、「反時計回り」の双方でモデルを準備する必要があり、どちらの方向においても高いレベルでの走りが出来ないと上位には入れないルールとなっています。

【ルール】
レース スケジュール : 12月5日午前10時-午後1時(太平洋標準時)
トラック       : Forever Raceway
方向         : 反時計回り
ランキング方式    : 連続 3 周のベスト平均ラップ
形式         : タイムトライアル
レース スタイル   : 8人によるダブル エリミネーション ブラケット
試行回数       : 2 
            ※1回の走行後にタイムが遅かったレーサが2回目を実施します
1 回の試行時間     : 2分

ここからは1vs1でのレースとなり、2回負けたら敗退となるルールとなります。8秒台での高レベルなレースや、JPモルガン社同士でのレースなど、見所満載のレースが続きました。
1人目の勝ち上がりはAIDeepRacerさんで、終始安定したレースで危なげなく勝ち上がりとなりました。2人目の勝ち上がりはワイルドカードレースの1位、2位の対決となったMatch8で勝ち上がりとなったSimonHillさんです。Simonhillさんはほとんどコースアウトしないレース運びで好タイムを出しました。最後の勝ち上がりとなったのはPolishThunderさんです。Match1で8.6秒の好タイムを出しながら敗退したものの、すべてのレースで8秒台を出す走りを見せ、Round3の最後の3枠目をゲットしました。

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Round3(FINAL)

2022年、2023年のファイナルレースにおいては、1周勝負というかなり厳しい条件でした。2024年はルールが改定され、1周勝負ではなく、2分間の中での連続3周のベスト平均ラップでの対決となりました。

【ルール】
レース スケジュール : 12月5日午後3時-午後4時(太平洋標準時)
トラック       : Forever Raceway
方向         : ラウンド3の開始前にコイントスで決定
ランキング方式    : 連続3周のベスト平均ラップ
形式         : タイムトライアル
レース スタイル   : 最終3名による対決
試行回数       : 1
1 回の試行時間     : 2分

ファイナルレースで一番面白いのはレースの直前でレースの方向(時計回り、反時計回り)をコイントスで決めるところ。
コイントスにより、Round2と同様の反時計回りに決定しました。その後、各レーサーには決勝で使用するマシンで1、2周程度の練習走行を実施したのちにレースを迎える形となりました。
練習走行で気になったのは、これまで安定走行を続けていたAIDeepRacerさんがこれまでのレースと異なり、いくつかの箇所でコースアウトするところ。さんとさんはこれまでのレース通りの練習走行となりました。

レースの順番はPolishThunderさん、SimonHillさん、AIDeepRacerさんの順番。まずはPolishThunderさんが実力を発揮し、8.436の好タイムを出しました。次にSimonHillさんがこれまでと同様の安定した走行でPolishThunderさんの記録を抜く8.353の好タイムを出しました。最後のレーサーは、予選の走行からも一番の優勝候補であったAIDeepRacerさんです。ただ、直前の練習走行の懸念がそのまま出てしまう形で、結果としては11.246という不本意な結果となりました。予選からずっと安定した走行を見せていただけに、最後のレースは少し残念な結果になってしまいました。

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レース後は表彰式が行われ、1-3位のレーサーであるSimonHillさん、PolishThunderさん、AIDeepRacerさんとともに、今年のバーチャルレースの年間チャンピオンであるZoDさんが表彰されました。また最後はファイナリストおよびピットクルーの皆様で写真撮影を実施しました。

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ファイナリストやピットクルーの方にはDeepRacerが配布され、私もDeepRacerをいただきました。ここには載せられませんが、レース後は私も世界のトップレーサーの方々と写真を撮っていただきました。

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まとめ

私は2022年からDeepRacerを始めて、他のレーサーの皆様とは異なり、歴史が浅い部分はありますが、この3年間はとても素晴らしいものでした。DeepRacerを通じて、AI/MLのスキルアップにつながったかなと思います。
2022年には日本大会とアジア大会で優勝して、Championshipのファイナリストになり、他では得られない経験をさせていただきました。また、Championshipを通じて、世界トップレーサーとコミュニケーションを取らせていただいたり、SNSで繋がったり、私にとってかけがえのない財産となりました。
今後はDeepRacerはオープンソース化されていくようですが、引き続きDeepRacerには取り組んでいきたいと思います。

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