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Data + AI Summit 2023 - Databricks 現地レポート(6/28 基調講演)#2

Last updated at Posted at 2023-07-04

はじめに

株式会社NTTデータ テクノロジーコンサルティング事業本部 の nttd-inoutk です。
Databricksのエバンジェリスト資格 Databricks Champion 認定者でもあります。

本記事では、Databricksの年次イベント「Data + AI Summit 2023」の基調講演1日目(6月28日)の内容のうち、Generation AIに特化した内容をお届けします。

本記事は#2になります。前回の記事はこちらから御覧ください。

概要

今回発表されたGenerative AIに関するトピックは大きく2つに分けられ、OSS LLMプロジェクトMPTを開発する MosaicML の買収、および自社のプラットフォーム上でのLLMモデル開発を助ける機能群の Lakehouse AI の発表です。

MosaicML

Data+AI Summit 2023 初日の6月26日に、DatabricksがMosaicMLを買収するとのリリースが出ました。

MosaicMLはダウンロード数が330万を超えた大規模言語モデルであるMPT-7B等の開発元として知られており、企業がいかにコスト効率の良い方法で、自社のデータを使って独自の最先端モデルを素早く構築できるのかを紹介してきました。

この理念はDatabricksがDollyをアナウンスした際に言及されていたものとかなり近しいため、親和性はかなり高く、「自社で構築した特化型AIモデル」が身近になり、すべての企業が活用をしているような世界観を実現するために大きく前進したと感じました。

基調講演ではMosaicML CEOの Naveen Rao 氏が、当初のスピーカー予定には含まれていなかったもののサプライズ登壇し、Gen AIの構築においては Control, Privacy, Cost の検討が必須であることや、MosaicMLのMPTモデルを利用すれば効果的なAIモデルがいかに手頃なコストで構築可能かについて言及しました。

項目 概要
Control 自社のIPをもって競合と差別化する
Privacy 自社のデータの完全なプライバシーを維持する
Cost より低コストで、自社のモデルを訓練・使用する

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Lakehouse AI

ChatGPTを始めとするGenerative AIの登場によって、AI活用は以前にも増して爆発的な注目を集めましたが、今後のAI活用戦略において重要なことは、「自社データをいかに活用するか」 を検討することです。

Generative AI は、今後SaaS型モデルの価格が下落すると予想されること、すでに高品質なOSSモデルが登場していることにより、どの企業もLLMの活用に手を出しやすい土壌が出来上がり、そのモデリング技術自体は急速に陳腐化していくと思われます。

そこで他社との差別化を図るために重要となるのは、自社しか知り得ないデータの活用 や、そのデータを活用した 自社でしか作成できない特定領域特化型のAIアプリ による競争優位性を獲得すること、となります。

今回のアップデート内容も、各企業が自社で独自のモデルを活用するためのフローを促進するための機能が中心となりました。
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上記画像のように、Generative AIの活用フローは大きく以下の3つに分類されます。

  • データの収集・加工
  • 既存のモデル活用、または自身によるモデル構築
  • モデルのサービング・監視

これらを、UnityCatalogの機能をベースに、データとAIアセット両方の総合的なガバナンスとリネージトラッキングを行った上で実現可能とした、Databricksにおけるデータ中心のAIプラットフォームの概念を指して Lakehouse AI と命名しているようです。

以降は、Lakehouse AIを構成する新機能の詳細について紹介します。

詳細は以下記事も合わせて御覧ください。

データの収集・加工

以下の2機能は、どちらもオンラインかつリアルタイムで実行するLLMアプリにおいて、自身が所有しているデータを利用できる状態に準備するための機能です。

Feature Serving

ソースとなるDeltaテーブルと自動で同期され、継続的に更新されるFeature Tableの機能です。
最新のデータを含めた特徴量をリアルタイムで提供し、モデルに推論させることができます。

Vector Search

いわゆる、ベクトルDB にあたる機能です。ドキュメントや非構造化データをベクトル空間に埋め込み、その意味と文脈を捉えることのできるベクトルに変換します。これを活用することで、テキスト情報をキーワード検索できるようになり、Generative AIがドキュメントを参考に回答を生成することが可能になります。

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会場では、これらの機能を利用した具体的なユースケースの紹介も実施されました。

上記2つの機能は概念が難解ですが、具体的なユースケース内でどのように活用されるかを捉えることで、機能理解が容易になるかと思います。

とある企業のカスタマーサービスにおいて、顧客Aから「最後の注文を返品したい」との要望がありました。
カスタマーサポートの担当者が、LLMアプリケーションに、「顧客Aから最後の注文をキャンセルしたいと要望が来ている」と入力すると、アプリケーションは、まず Feature Serving によって実現されたオンライン特徴量ストアにアクセスして、この特定の顧客の最近の取引や注文に関する情報を取得し、それと合わせて、Vector Search が実現する文書検索エンジンによって、返品処理に関する企業の内部文書を検索し、返品に関するルールを取得しました。
これらの情報はLLMモデルに送信され、LLMアプリケーションから 「注文が過去30 分以内に行われているため、キャンセル可能です。キャンセルしますか」 と回答され、サポート担当者はキャンセル処理を正常に実施しました。

既存のモデル活用、または自身によるモデル構築

以下の3機能を活用することで、ユーザーは予め用意されたモデルを活用したり、GUIでモデルの学習やモデル毎の回答の比較を行ったりと、Generative AIのモデル活用のためのハードルを下げることができます。

Curated AI Models

用途別に優れたモデルをDatabricks社が厳選した、オープンソースモデルのライブラリです。
本機能は特にデモも実施されていないため全容は不明ですが、以下Databricks公式ブログの記載を確認する限りは、用途別に厳選したAIモデルがDatabricks Marketplace上で提供され、ユーザーが自由にダウンロードできるようにするというものに見受けられます。

最適化されたモデルサービングに支えられたキュレートされたモデルで、高いパフォーマンスを実現します:
ユースケースに最適なオープンソースのジェネレーティブAIモデルの調査に時間を費やすよりも、Databricksのエキスパートが一般的なユースケース向けにキュレートしたモデルに頼ることができます。私たちのチームは、モデルの状況を常に監視し、品質や速度など多くの要素について新しいモデルをテストしています。私たちは、Databricks Marketplaceでベストオブブリードの基礎モデルを利用できるようにし、デフォルトのUnityカタログでタスク固有のLLMを利用できるようにしています。モデルがUnityカタログに掲載されると、データを直接使用したり、微調整したりすることができます。これらのモデルごとに、Lakehouse AIのコンポーネントをさらに最適化します。例えば、モデル提供の待ち時間を最大10倍短縮します。

引用:https://www.databricks.com/jp/blog/lakehouse-ai

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AutoML for LLM Training

DatabricksのAutoML機能を利用した、テキスト分類のための生成AIモデルの微調整や、データへの埋め込みモデルの微調整がサポートされます。これにより、Curated AI Modelsのモデルをベースに、社内のデータを利用して独自のモデルをチューニングするような作業は、GUIにおけるマウス操作で完結できるようになります。技術的なバックグラウンドが薄いユーザーでも手軽にモデルのチューニングができるようになり、また技術者たちの作業効率も向上するため、より組織のLLMモデル開発を促進できる機能になっています。

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Mlflow Evaluation

MLflow 2.4で発表された、Generative AIのモデル評価を簡易にし、LLMモデルを適切に運用するための営み・テクニックであるLLMOpsを実現するための機能の1つです。

複数作成されたLLMモデルのうち、どれがベストな選択肢であるかを見極めるために、モデルごとの質問と回答を並べて表示するなどの機能を用いて、簡単に比較することができます。

image.png
https://mlflow.org/docs/latest/_images/artifact-view-ui.png

モデルのサービング・監視

Mlflow AI Gateway

組織内で、OpenAIを始めとするLLMアプリケーションを活用する権限をメンバーに与えるにつれて、レートリミットや認証情報の管理、急増するコスト、外部へ送信されるデータの追跡といった問題に直面すると想定されます。
そこで、MLflow 2.5の新機能の1つである MLflow AI Gateway を利用することで、Databricksのワークスペースレベルで API ゲートウェイを作成し、組織がそれぞれのアプリケーションへの経路を作成、ユーザーのアクセス権限までを一元管理することを可能にし、そして、様々なレート制限、キャッシュ、コスト帰属などを設定してコストや使用量を管理することができます。

IMG_0769.jpg

Model Serving Optimized for LLMs

LLMモデルのサービングを実施するにあたり、LLMに最適化されたコンピューティングリソースが提供されます。リクエスト数に応じてオートスケールされるため、コストも必要最低限に最適化されます。

これまではサービングに使用できるサーバレス SQL Warehouseには、GPUを利用可能な選択肢が存在せず、CPUのみで事足りるワークロードでないと提供することができませんでした。しかし、今回GPUを扱える選択肢が出てきたことで、より複雑なワークロードにも耐えることができるようになり、実はかなり嬉しいアップデートポイントです。

Lakehouse Monitoring

モデルやデータをモニタリングすることで、感覚ではなく、メトリクスを用いてLLMのモデルを評価するための指標を提供します。モデルドリフトが発生した場合にはアラートを発出したり、それに限らず品質アラートを特徴量テーブルや推論テーブルなどを含めたリネージ全体で関連付けることで、原因の特定やデバッグ、再学習といった対応が容易になります。

おわりに

基調講演においては、Generative AIは利用するだけでは差別化要素にならず、自社が所有するデータを活用した独自のAIアプリケーションを作成し、特定の領域に特化したモデルを構築してビジネスに活用していく必要性が繰り返し説かれていました。そのうえで、ガバナンス、プライバシー、そしてコストとの兼ね合いを鑑みても、Databricksはそのどれも欠けることなく高いレベルで実現可能なソリューションであると思います。
是非、この強力なData+AIプラットフォームを活用して、組織や企業のデータ活用を促進していただければ幸いです!

関連リンク(随時追加予定)

仲間募集

NTTデータ テクノロジーコンサルティング事業本部 では、以下の職種を募集しています。

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NTTデータとDatabricksについて NTTデータは、お客様企業のデジタル変?・DXの成功に向けて、「databricks」のソリューションの提供に加え、情報活?戦略の?案から、AI技術の活?も含めたアナリティクス、分析基盤構築・運?、分析業務のアウトソースまで、ワンストップの?援を提供いたします。

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NTTデータとSnowflakeについて NTTデータでは、Snowflake Inc.とソリューションパートナー契約を締結し、クラウド・データプラットフォーム「Snowflake」の導入・構築、および活用支援を開始しています。 NTTデータではこれまでも、独自ノウハウに基づき、ビッグデータ・AIなど領域に係る市場競争力のあるさまざまなソリューションパートナーとともにエコシステムを形成し、お客さまのビジネス変革を導いてきました。 Snowflakeは、これら先端テクノロジーとのエコシステムの形成に強みがあり、NTTデータはこれらを組み合わせることでお客さまに最適なインテグレーションをご提供いたします。

https://enterprise-aiiot.nttdata.com/service/snowflake

NTTデータとInformaticaについて データ連携や処理方式を専門領域として10年以上取り組んできたプロ集団であるNTTデータは、データマネジメント領域でグローバルでの高い評価を得ているInformatica社とパートナーシップを結び、サービス強化を推進しています。

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これまでPartner of the Year, Japanを4年連続で受賞しており、2021年にはアジア太平洋地域で最もビジネスに貢献したパートナーとして表彰されました。
また、2020年度からは、Tableauを活用したデータ活用促進のコンサルティングや導入サービスの他、AI活用やデータマネジメント整備など、お客さまの企業全体のデータ活用民主化を成功させるためのノウハウ・方法論を体系化した「デジタルサクセス」プログラムを提供開始しています。

https://enterprise-aiiot.nttdata.com/service/tableau

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導入時のプロフェッショナル支援など独自メニューを整備し、特定の業種によらない多くのお客さまに、Alteryxを活用したサービスの強化・拡充を提供します。

https://enterprise-aiiot.nttdata.com/service/alteryx

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