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日曜数学会20210124コメントQ&A

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日曜数学会コメントQ&A

  • 実行にどれぐらいかかる?

    • 混雑度合いによりますが、5qubitだと、数十分待つこともあります。空いていれば30秒のときもあります。
  • 普通の方法に比べてどのくらい早くなるのか気になる

    • 実時間だと全く早いとは思えていません。クラウド利用なのでレスポンスが非常に遅いこともありますが、そもそも演算が遅いのです。例えば本日時点の5qubit量子コンピューターのスペックは以下のとおりです。2量子ビットにまたがる操作で最も基本的なもの(CNOT)を演算するのにかかる時間が Gate time のところにある 471 (ns) ≒ 20MHz です。 対して、古典コンピューター、例えば古典FPGAだと100MHz~1GHz程度のCLKで100並列演算も普通(しかもエラーなし)ですので、かなりの差があります。

image.png

ちなみに上記のT1/T2というのが 緩和時間 というもので、この秒数が量子が(重ね合わせや励起を維持したまま)生きていられる寿命に相当します。

  • むしろ大規模の方が期待アリ?

    • これは諸説あると思いますが、Kumaとしては「(今のまま量子ビット数を増やすだけだと) No」 と思っています。 量子ビット数を増やす、ゲートを深くする等をすると、解ける問題の規模は上がりますが雑音も増えます。 雑な見積もりですと、規模が$N$倍になればアルゴリズム成功率$p$は$p^{N}$で落ちていきます。 成功率が90%あったとしても、$N=100$ではわずか0.003%となります。 また、規模が大きくなると、物理的に距離が離れた量子ビット間の2量子ビット演算の実現が難しくなります。 このような性質から、現状の雑音あり量子コンピューターで社会問題を解くことについては、私は絶望的だと感じています。 実際、IBMも量子誤り訂正の確かな実現が次のマイルストーンだろうとしています。
  • 計算量は少ないけど、スペックが低いから遅い? / 技術の革新が待たれるって感じ?

    • 計算量自体にも課題があります。量子加速が保証されているアルゴリズム(量子位相推定含む)は、登場するゲート演算が効率的に行える(例えば規模$N$の多項式程度の数の基本ゲートに分解できる)ことが前提となっている場合が多いです。これはいつも満たされるわけではないですし、多項式程度といってもかなりの数のゲートを含みますので、現状の実機性能ではどうにもならない場合が多いです。 量子位相推定も、基本ゲートに分解すると100近いゲートを必要としますが、現状の実機ではせいぜい30程度が(まともな計算結果の出る)限界というところです。理論的な部分は私も勉強中です。(Solvay-kitaevの定理をちゃんと理解しないといけないですね)
  • 将来性がない?

    • そうかもしれないし、そうではないかもしれません。誤り訂正(これも非常に課題が多いですが)が実現されれば、規模を増やしても計算が壊れないようになります。そうすると、大規模な問題が扱えますので、(当面は演算が遅いとしても、それを上回る)量子加速による高速性が実感できるかもしれません。近年、1量子ビットを誤り訂正で守る(Beacon-Shor符号)という実験の成功が報告されました。完全に誤りを消すことは出来ませんでしたが、誤り訂正によりエラー率が改善していることが確認されました。
  • ノイズ多くなるだけ……か / 大規模化も困難な道なんだ / 何か革新がないと厳しいのか

    • 量子誤り訂正やQRAMなど、まだまだ多くの技術革新が無いと使い物にはならないと思っています。しかし、今の量子コンピューター自体が技術革新で生み出されたものです。これからも技術革新は起こると思います。
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