久し振りに記事を書いたと思ったらこんなネタですよ。
本来ならば、コミケをはじめ頒布イベントが軒並み困難になっている今ですと、
オンラインでもイベントに参加して、印刷所で刷ったもの頒布する方がいいとは思うのですが、
ダウンロード頒布だと「あ、これもついでに頒布しよう」という気が起こりやすいかなと。
まあ機動性が高まると思うんですよね。
なので、本来のQiita読者が求めるネタではないと思いますが、
小説本とか研究本とか、
文字メインの本を頒布する際、EPUBいいよ!と、ライト勢を教唆するための覚書です。
まあ私の備忘録でもあるので、どうぞよしなに。
EPUBでの頒布だと、何がいいんだろう?
電子書籍として頒布するのを考えた時、たぶんこれを考えることあると思うんですよね。
ていうか、技術方面にそんな興味がないライト書き手の場合だと、「EPUBてなんやねん」と思ってるかもです。
EPUBそもそも論
EPUBは電子書籍の普及を目指して国際電子出版フォーラム(International Digital Publishing Forum、IDPF)が策定した、電子書籍の標準規格です。
ISO/IEC TS 30135として、国際規格まではいきませんが、
それに近い技術仕様書として、現在バージョン3が公開されています。
中身は(主に)XHTMLとCSSで構成されており、仕様書を読み込んでいれば自力でファイルを作成することも可能。
日本電子書籍出版協会も製作ガイド等を公開しておりますので、
好き嫌いは別として、作成される場合はお読みになっている方が良いかと。
http://ebpaj.jp/counsel/guide
バージョン2までは日本語組版の基本的な構造がサポートされていませんでしたので
(圏点が使えないとか、そもそも縦書き表示できないとか)
縦書き文化圏や、右から左に読ませるアラビア語文化圏では使い物にならないブツでしたが、
CSS3やHTML5の仕様が加わったバージョン3で基本的なものはおおよそサポートされました。
ダウンロードしたけど、どのソフトで読めばいいの?
kindle、iBook、kobo、日本で一般的に使われている電子書籍リーダであればほぼ読めます。
但し、chromeやfirefoxのアドインなどのリーダや、その他外国製で日本語化されていないものだと、
電書協のガイドラインに沿って作っていないので、
縦書き表示などはできないと思った方がいいです(色々試しましたが、今のところアドインは縦書き全滅っぽい)。
個人的には、PCでは「超縦書」を使わせてもらってます。(名前はアレだが横書きのも読める)
https://www.bpsinc.jp/cho-tate-win/
ちょっとダウンロードまで面倒ですが、無料だからね、仕方ないよね。
iPhoneではiBookだったりkindleだったりi文庫Sだったり…
i文庫Sだと青空文庫のダウンロード便利なので。
まあお好きな使い勝手のリーダがあれば、それで読まれるのが一番です。
EPUBにするメリットって何なの?
EPUBの一番のメリットは「フォントの大きさが変えられる」だと思う。
メリットは一面でデメリットにもなるので、特徴を羅列していくとおよそこんなもんだろうか。
- マルチベンダー対応(上記の通り)
- 読み手がフォントサイズやフォントそのものを自分が読みやすいように変更できる
- 読み手がマーカーを引ける
- ページ非固定のリフロー型と、画像多用コンテンツに適した固定型のフォーマット両方に対応
- JavascriptやSVGに対応しているので、インタラクティブなEPUBも発行できる
- おおよそライト層がたどり着くような電子書籍リーダを紹介しておけば読めるし、スマホならなんか1つはリーダが入っている
- 改変再配布がしにくい(できないとは言ってない)
上記の1.なんかはそのまま、裏返せばDTPにおいて視覚効果をフォントにも期待していた(たとえばホラーな展開で古印体フォントを利用するなど)のが、読み手の方で解除できてしまうので、従来のDTP的なのを期待するのだったらおとなしくDTPの流れを汲むPDFで頒布した方が良い。
ただまあ、正直、文字主体の小説や研究本なら、そんなところで勝負するか?という気がしなくもない。青い鳥文庫じゃあるまいし…(何気ないハリポタ版下dis)
7.はダウンロード頒布する人の気になるところって、ここじゃないかしらとは思うので。改変しての再配布がしにくいのは、まあファイル改変はしにくいです。ただ、できないとは言ってない。
内容のコピペなんかは、大抵はリーダの仕様によってしにくくなっています。
リバースエンジニアリングまでして内容を改変しようとする情熱のある奴は、ちょっと防ぎようがないけど。
楽なEPUBの発行をするとなると
一太郎で同人誌書いてる人は、一太郎でEPUB吐けるよ。以上。
…一太郎ユーザであったのは大学の研究室までという私に何を求めるんですか!(卒論は.doc指定だった)
あとAdobe InDesignもCS3以降で吐けるようになってるはずだけど、InDesignで小説本執筆するメリットがまずわからない。マンガ同人誌の人がEPUBにしたいなら試してもいいのでは。
クラウドベースでEPUBを発行してみる
でんでんコンバーター https://conv.denshochan.com/
Qiitaと同じくMarkdown記法を使って書いたテキストファイルをEPUBに変換してくれる。
Qiita慣れとかされてるのであれば、いいと思うよ。
まあ個人サイト作ってた古の腐女子なら、Markdownなんかすぐ慣れるだろうし。
サーバ更新されたら、だいぶパワフルにでかい本も変換してもらえるようになったっぽい。
個人EPUB作成者の強い味方。
BCCS https://bccks.jp/
会員登録すると電子書籍ライタが使えるようになり、電子書籍ほ発行もできるし紙の本も出せるっぽい。
ワイは使ってないので、紙の本を出すとなるとなんかお金かかるんじゃないかと思うけど、今のところ興味の範囲外なので、詳しく紹介できない。
ムゲンブックス https://mugenbooks.com/
ここも会員登録すると、EPUBと紙の本が作れる。しかも無料とか書いてある。
まあ美味い話にはなんか落とし穴あると思ってるんで、紙の本もじゃあついでに…って人はちゃんと規約を隅々まで読もうね。たぶん同人の人なら、あんまり美味い話ではないと思うよ。これ。あくまでツールとして使ったらいいんじゃないかな。
## 自前でEPUB作成環境を構築する
個人的には、「いちいちブラウザから他のサーバ借りて変換するのもなあ」と思っております。
理由は、既にある原稿をEPUB化したい。できるだけ、手間なく。
まあTeXで原稿作っている以上、なんらかの変換は必要なんですがね。ええ。
TeX原稿をEPUBに変換する
LuaLaTeX環境とかで、直接EPUBに吐けるコンバータとかあるみたいですが、
現状は縦書きEPUBに対応しているコンバータはありません。
たぶん、青空文庫形式に直したあと、「AozoraEPUB3」Javaアプレットで変換するのが早そう。
https://w.atwiki.jp/hmdev/
まあ開発が2016年で止まってるのが不安を感じるんですがね…
「AozoraEPUB3」を使ってみる
Javaランタイムの7か8が必要なので、入ってない人はOracleからダウンロードしてきます。
今なら8の最新版かな。
インストーラをダウンロードしたら、そのままインストールします。
次に、上記の「AozoraEPUB3」のZIPファイルをダウンロードして、お好きな所に解凍します。
解凍したフォルダの中にある「AozoraEpub3.jar」がアプレット本体ですが、
これを開く前にもうひとつ、ダウンロードしてきます。
Amazon.comから「Kindle Previewer」をダウンロードしてくるのです。
https://www.amazon.com/gp/feature.html?ie=UTF8&docId=1000765261
これが無いと、kindle対応のEPUBを作成する際、「kindlegenが無いんだけど!?」と怒られます。
本来であればこのkindlegenというプログラムをダウンロードしてくるのが筋ですが、何分古いので配布終了しています。
そこで、後継のPreviewerをダウンロードしてインストールします。
ただ、AozoraEpub3で参照しているパスはkindlegen.exeで、
しかもパスの参照先は自分のいるフォルダ(なんでやねん)なので、
さっきダウンロードしてインストールしたPreviewerをAozoraEpub3のフォルダにコピーし(ショートカットだと無効です)
プログラムをkindlegen.exeにリネームしてやります。
Previewerはどこにインストールされてるかというと、
フォルダを変更してなければ自分のアカウントフォルダの
AppData>Local>Amazon>Kindle Previewer 3の中にあります。
「Kindle Previewer 3.exe」という名前なので、コピーしてAozoraEpub3のフォルダ直下にペーストしてリネーム。
これでAozoraEpub3.jarを起動すると、ちっちゃい設定画面が出てきますので、
青空文庫形式にしたファイルをドラッグ&ドロップするとEPUB吐いてくれます。
どうして青空文庫形式で配布しないんですか?
え、やだよ今どきShiftJIS指定の、それも改変し放題のテキストファイルで頒布なんて。