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Bluetoothを用いた踏切内・外の判定システム

Last updated at Posted at 2022-12-08

この記事はLITALICO Engineers Advent Calendar 2022 カレンダー2の9日目の記事です

概要

この記事では、個人の活動として検証している、Bluetoothを用いた踏切内・外の判定システムの話をしたいと思っています。本記事で触れているシステムは、全く現地での実証実験ができておりません。擬似的な状況で確認しただけになります。また、時間の関係で、試行回数も各20回ずつと少なめになっております。こういう方法もあるのではないかという提案が目的になります。

なぜ、検討するのか

新聞を見ていたところ、目の不自由な方が踏切で電車にはねられる事故があったのをきっかけに、踏切内に点字ブロックを設置するという記事がありました。踏切の場合、音が鳴ることで、踏切近くにいることは認識できるが、踏切の外側にいるのか、内側にいるのか、誤認してしまうことがあるとのことでした。

上記自体は良い取り組みだと思いますが、記事でも取り上げられている通り、踏切内のブロックのデザインは、既存のものがないため、新しく作成する必要があり、それを周知して認識してもらう必要があります。それは、設置する側も大変ですが、利用する側も大変ではないかと思いました。

また、気になったので、調べたのですが、踏切内の侵入を検知する仕組みは、さまざま検討されているようで、現在、実用化されている方式ですと、

  • 光電式障害物検知装置
  • 三次元レーザレーダ式踏切障害物検知装置

があり、これらも日々様々な改良が加えられているようです。
また、実証実験を行なっているものだと、

  • AIカメラによる踏切障害物検知

なども行なっていて、とても良い取り組みだと思います。他方で、上記はいずれも、検知して、電車運行管理者に通知する仕組みであって、踏切内にいる人に対して、通知することはできない点が気になっております。視覚障害をお持ちの方や、高齢の方も、直接、本人だけ状況を確認できる仕組みがあれば、自身の状況を確認し、落ち着いて対応ができるようになるのではと。

そこで、踏切内にいる人に対して、通知する仕組みを考えたいと思います。

GPSで検知できないか

現在のGPSでは、10m程度の誤差が生じることがあるため、今回の踏切内・外の検知では難しいと考えました。みちびきだと、上記の誤差が1m程度になるため、かなり可能性が広がりますが、対応したスマホが限定されるため、今回は屋内測位でよく用いられるBluetoothを使って測位する方法を考えます

Bluetoothを用いて、屋外測位を行う

検討案1: BLEビーコンによる距離測位の検討

Bluetoothを用いた測位で、真っ先に思い浮かんだのは、受信した電波の強さによって、距離を測定するという方法です。受信した側で、RSSIという受信した電波の強さを確認することができるのですが、RSSIは距離と相関関係にある(遠いと電波が弱く、近いと電波が強い)と考えられるので、RSSIを元に、距離を把握し、下の図のように、各踏切の遮断機にBLEビーコンを設置することで、踏切内にいるか、踏切外にいるか、判定できるのではないかと考えました。それぞれの踏切からの距離元に、円を描き、全ての円が重なる地点に人がいることになります。(左下は、踏切内に人がいる場合、右下は、踏切外に人がいる場合)

名称未設定ファイル.drawio.png

単純化のために、検証では、踏切の遮断機が長方形の頂点にあるとして検証しました。
また、距離計算は、結構計算量が多く、瞬時に計算するのが難しいため、
事前に、下図のように、メッシュで区切り、各メッシュ毎の距離の値の取りうる範囲を計算しております。

名称未設定ファイル.drawio (2).png

検証結果1

4箇所にBLEビーコンを設置して、検証したところ、4箇所を頂点にした長方形の内側にいるのか、外側にいるのかの検知精度は、75%と、実用に耐えられませんでした。特に、長方形の辺付近での検出精度が悪く、辺付近で、内側にいるのか、外側にいるのかは、60%の検知精度となりました。

これは、反射波の存在が関係していると考えられます。下図のように、地面などで反射した電波と、直接伝わった電波が距離によっては、強めあったり、弱めあったりするため、直接伝わった電波だけの強さを計測することが難しいためと考えられます。

名称未設定ファイル.drawio (3).png

検討案2: BLEビーコンによる角度測位の検討

前述の通り、BLEビーコンのRSSIを利用して『精度の高い位置測位』を実現することは難しいことがわかりました。
他の方法を検討していたところ、Bluetooth 5.1からは、RSSIを利用しないで位置測位を行う方法として、電波の位相を利用する仕組みが新たに組み込まれたことがわかりました。

レーダーで利用されていた技術らしいのですが、Bluetoothの電波を複数のアンテナで観測して、それぞれのアンテナで受信した位相差を確認すると電波がどの方向から飛んできたかがわかります。(下図参照)

位相差と角度.drawio (2).png

上記の図にも書きました通り、Bluetoothは、2.4GHzの周波数で、波長が約12.5cmだから、2つのBLEビーコンを12.5cm離して、その2つの位相差を求めれば、角度が求められ、装置作成の敷居が低いです。(短波長だと、波長分で、デバイスを並べるのが難しく、位相差が角度によって、波長以上になるため、連続的な測定ではない場合に、角度を求めるのが難しくなります、逆に長波長すぎると、デバイスやアンテナ自体も大きくする必要があり、デバイスの設置が大変です。)

この12.5cm離して、位相差を測定するBLEビーコンを4つ作成し、各遮断機からの角度で、踏切の内側、外側を判定します。また、今回は安価なデバイスでの検証になったので、12.5cmずつ離して設置した2つのBLEビーコンで、初期位相が異なる可能性があるため、0度の地点で何回か測定し、初期位相のずれを補正して、実際の角度の組み合わせを求めています。

角度から位置特定.drawio.png

検証結果2

検証したところ、4箇所を頂点にした長方形の内側にいるのか、外側にいるのかの検知精度は、95%とかなり向上しました。辺付近にいる場合の検知精度も、同じく95%とこちらも向上したのですが、この方法で、角度が測る際、180度、反対側は、位相差が同じになるため、注意が必要です。(4つの角度から、どちら側か判別は可能)

角度から位置特定.drawio (2).png

角度については、かなり、正確に測れますね。
ただし、距離と同じく反射波と直進波互いに強めあったり弱めあうことで、合成波の波形が複雑な形状になるため、位相差を誤検知することがあるかもしれません、ただし、距離の場合の電波の強さと異なり、この場合は、合成波によって周期がずれることはありませんので、ご検出の割合は少ないと考えられます。今回は試行回数が20回と少なかったため、実際には、もっと、多くの試行で、実用に耐えられるか、検討が必要です。

また、車のボディなど、反射しやすい物体の検知では、正しく受信できないことがあるため、BLEビーコンを使った方式自体が向いていません。そのため、従来の障害物検知装置と併用する形が良いという結論になりそうです。

最後に

記事読んでいただき、ありがとうございます。
上記の既存の検知装置との併存が必要な点から、既存の検知装置を拡張し、ブロードキャストに通知することも考えたのですが、踏切の用途(主に車両が用いるのか、歩行者が用いるのか)によって、組み合わせるのが良いのではないでしょうか。BLEビーコンはかなり安いので、そういった点も加味した提案となります。また、通知を受ける方が何らかのデバイス(スマホだと、機種によっては、Bluetooth5.1対応していないので注意)を持っている必要があり、事前準備が必要な点では、線路内点字ブロックと同じく、周知が大変な部分もあります、この辺りは、他の良い方法もあると良いと思います。前述の通り、まだまだ、改善ポイントはあると思いますが、あくまで、一つの提案ということで、今回の検証は、ここまでとさせてください。

LITALICOでは、現在、上記のような分野は、直接、取り組めていない部分もあるのですが、
ゆくゆくは、LITALICOとして、実現したい未来のため、取り組むタイミングが来るんじゃないかなと勝手に思っています。また、現在も、いろいろな事業を通じて、安定してサービス提供しながら、障がいのない社会の実現に向けて取り組んでいます。

少しでも、興味を持っていただいた方いらっしゃいましたら、ぜひ、採用情報からお問い合わせください。私は、こういう分野が大好きなので、一緒に話ができる方が更に増えれば、とても嬉しいです。

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