画像屋は夢想すると題して、画像認識や機械学習に関連する書籍を紹介しています。

今までに私の連載でも繰り返し述べてきたように、私たち人間の視覚体験は、人間の脳が創りだしているものです。
色の混色・三原色・補色、色立体などの色彩感覚は、「3色型色覚」に固有の色彩感覚です。
物体そのものに色があるわけではありません。
三原色とか、補色とかの色に関わる属性は、物体そのものや、普遍的な物理現象として存在するものではありません。
すべては、ヒトの色覚に起因する現象です。
哺乳類の多くは「2色型色覚」です。原猿類の場合も「2色型色覚」です。
人の場合にも「2色型色覚」の人がいます。
短波長の紫と長波長の赤が、色相の上は近接した色として認識されているのは、「3色型色覚」に基づくものです。緑の光と赤の光とを混ぜて生じた「黄色い光」と単色光の「黄色い光」とをヒトの視覚特性では区別することができません。
「3色型色覚」は、遺伝的な変異によって生じたものです。ヒトの場合、「3色型色覚」が多数派だから、少数派の「2色型色覚」の人は、理不尽な制約を課せられることがありました。
しかし、繰り返し言いますが、哺乳類の多くは「2色型色覚」です。
「恐竜の時代に誕生した我々の祖先の哺乳類は小さく、恐竜を恐れ、夜活動をしていた。夜は紫外線を見ることは必要ではなかったため、紫外線を見る能力を失ってしまった。こうして長い歴史の中で私たちヒトは、現在の可視光領域に適した視覚を持つようになったと考えられる。」(同書より)
昆虫や鳥では紫外線が見える。
この本には、紫外線カメラで撮影した写真が多数含まれています。
そのことがどういう意味なのかを、この本は詳しく語ってくれる。
被子植物と昆虫、被子植物と鳥は、共進化をして、花を咲かせる植物、実をつける植物が繁栄する世界を作り上げてきた。
虫媒花は、自らの花に優先的に訪れて花粉を同じ種類の別な花に届けさせることで、繁栄することができる。
そのためには、花が葉っぱとは違った色にすることで見つけてもらいやすくなっている。
複眼を持つ昆虫の中でも個眼の数が多いトンボでも、個眼の数は2万前後だそうである。その数の画素数で行動している。ましてや個眼の数が少ない昆虫の場合には、上手に目的の種類の花を見つけてその蜜を吸い、花粉を媒介するには、何かしらの見つけやすさが要る。花弁の大きさは、昆虫にとってはじゅうたん程度の大きさかもしれない。その際に、どちらの側に蜜があるのかを簡単に見分けられることは、意味が大きい。
表紙の帯にある花の紫外線画像は、その答になっている。
この本の中で述べていることから、その先に少し妄想を進めてみよう。
紫外線を含む「4色型色覚」では、どの色とどの色が似ているとか、そういったものが、「3色型色覚」とはまったく違ったものになることは容易に想像される。
「3色型色覚」の場合には、色立体があるが、おそらくは「4色型色覚」には、4次元の色超立体になっているのだろうと想像する。
さらに妄想ならば、昆虫や鳥にとっての色覚はどのようであるのかを想像するには、紫外線、青、緑、赤の色特性を持つイメージセンサで、物体の認識をさせていったときに、どのような色覚を作り上げていくのかを、深層学習や強化学習などで実験していくのはどうだろうか。
白色という概念も、4種の光を均等に感じた時だけの感覚となるのでしょうか。
紫外線を含む「4色型色覚」で観察し、機械学習してみたらどうだろう
この本は述べるカラスは紫外線で他のカラスの個体を見て個体識別していると。
個体識別を4色のカラー画像で見た時に、何がどの程度判別に寄与しているのかを明らかにできるだろう。
参考記事
サルの色覚が教えてくれること
河村正二(東京大学)
http://www.nikkei-science.com/page/magazine/0610/monkey.html
なぜ人間と高等サル類のみで色覚は進化したのか
http://www.kyoto-u.ac.jp/static/ja/news_data/h/h1/news6/2011/110901_1.htm
追記
昆虫と植物(花)、鳥と植物(果物)の共進化
これらの共進化の中で
- 昆虫が花を見つけやすいこと、花の蜜のありかを見つけやすいことは、植物にとって受粉を成功させるうえで重要。
- 鳥が熟した果実と熟していない果実とを区別できることは、種を運んでもらいたい植物の側にとっても重要
そのような共進化が、昆虫の視覚、鳥の視覚と関係している。