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共通一次世代が事業をつぶしていく

Last updated at Posted at 2019-05-11

1980年代に成功していた電機業界がことごとく残念な状況にある。
その原因の一つに共通一次世代のありかたがあるのではないかと疑い始めている。

共通一次(大学共通第1次学力試験) は、1979年1月に始まり1989年まで続いた試験だ。
1979年の受験生は、1961年頃に生まれている。

共通一次世代の特徴

  • 高度経済成長で世の中が変わっていく様子を見ている。

    • しかしそれを実現している人たちの努力をみて理解するには幼すぎる世代である。
    • そのため、世の中は勝手によくなっていくものだと思い込んでいるフシがある。
  • 高度経済成長を成し遂げた世代の特徴

    • 社会が破局した状況を経験している。
    • 抑圧された時代を経験しているので、抑圧からの解放の中で自分の考えをしっかり持つことの大切さを感じている。
    • そのため、上の人がいうことをそのまま鵜呑みにして行動することの危険を知っている。

共通一次世代は、そのような世代とは、違った意識をもった世代である。

  • 共通一次について

    • 共通一次という仕組みの中で、大学ごとの価値観での試験ではなく、「こういうのが正解であるのに従え」という公式の見解に対して自分を合わせることを、大学受験という出発点を経験している。
    • 共通一次のテストには、マーク試験であって、満点より上が存在しない。
    • 実際の問題には、何をどう解くのか、エレガントの解き方や、より進んだ問題の解決というのが存在する。
    • 大学によっては、その大学の個性がそういった問題の出題や採点に反映してきた。
    • そのようなものが薄れていくきっかけになっている。
  • その上の世代と違って学園紛争を経験していない。

    • 学園紛争がよかったのか・悪かったのか私は知らない。
    • 学園紛争の中では、大人の価値観と自分の価値観とをぶつけあうことがあったであろうが、共通一次世代は「しらけた世代」であった。
    • 大多数の人々にとって自分の幼少期にベトナム戦争があったことよりも、パンダが上野公園にやってきたことの方が記憶に鮮明だろう。
  • 1980年代・1990年代のパソコンの進展はPC9801の5MHZの時代からIntelCPUの3GHzまでのクロック速度の向上・メモリ空間の拡大の恩恵を入社後の時代の中で経験している。

    • そのため、ソフトウェア自体が何ら進展しなくても動作速度の向上にあずかれるというフリーランチの時代を経験している。
    • 事業は伸びやすい時期に事業が量的に拡大する時期に会社に入社するというタイミングでい合わせている。
    • そのため、自分たちが実際以上に有能であるかのように思い込んでいる。

こういった状況の中で、運良く成長企業に入社したものは、自分を優秀なものように思い込んだまま、会社の中で年月を過ごしていく。

  • バブル崩壊以降の低迷の理由を見誤っている。

    • 半導体の衰退は、半導体設計の主流技術を自分たちが作り出せていないこと(あるいは主流にできていないこと)だと理解していない。
      • 半導体の設計用言語、VHDL、Verilog HDL, System Cなど。
    • 本質的な部分での改善をしようとあがこうとしない。
      • 掃除機の改良だけ考えて、ロボット掃除機を思いつこうとしなかった。
  • 事業の停滞の理由を不運くらいにしか思っていない。

    • そのため、事業の進め方にある本質的な問題に気づいていない。
      -「日本の優れた技術」と安易に語る経済誌・経済ニュースを鵜呑みにしていて、自分の今の立ち位置を理解していない。
  • 日本社会の文系偏重の特性のために、物事を判断する際の理科的な素養がない。

    • 競合の海外の組織では、技術的な内容を判断できる人が判断をしていることを理解していない。
    • 日本の組織は、技術的に秀でている人を理解せず、つぶしてしまう。
  • 物事を解決した実力のある人ではなく、上に気に入られた人を出世させてしまう悪習

    • 日本の電機業界の大手企業の多くには、このような話に事欠かない。
  • 本質を深めることなしに、バブル以降の失敗を薄っぺらの理解で教訓としている。

    • メモリ半導体の失敗は、ただ単に投資するべきタイミングに投資できなかったことだと思っている。
  • 大企業の体質の中で、物事の判断に対して年功序列的な体質を経験している。

    • そのために、ようやく自分たちが影響力を持てるタイミングになったときに、権限を放したがらない。
    • そのような体質は、ベンチャー企業に入ったときでも容易になくなるものではない。
  • 共通一次世代も50歳代になって、「自分のいる間なんとかなってくれればいい」という発想で、その権限を使ってしまう。

    • その結果、1980年代に栄光を極めた企業が、毎年のように事業の売却・事業の撤退と衰退を続けている。
  • 自分の頭で考えぬく習慣がないものだから、「正解とされている手法」を引用して、それを大切な局面でも用いてしまう。

この駄文を書いた理由はこうだ。あなたが開発を行なっている組織の体質に、このようなものがあるのだとしたら、それはやっかいだ。
物事の本質を見極めようとしないので、未来を見据えた判断ができない。
未来を見据えた判断をする責任の重さを知らない。
そういった相手が、あなたが開発を進めようとするときの「組織内の厄介な人たち」なのだと思う。
そういった厄介な部分の影響力低下させて、今の時代に必要な開発スタイルにしていかないと、あなたの開発は成功しないのではないかと思っているのです。


付記:

どう対策をとるべきか?


1943年 生まれ 嶋正利 Intel 4004の開発者
1943年 生まれ 舛岡富士雄 フラッシュメモリの発明
1948年 生まれ 吉野彰
1950 年生まれ 久夛良木健 PlayStationの生みの親。

1951年 生まれ 坂村健 TRON を提唱
1953 年 生まれ 田中耕一 ソフトレーザーによる質量分析技術の開発者

1954年 生まれ 中村修二 高輝度青色発光ダイオード

1959年 生まれ 梶田隆章 ニュートリノ振動の発見

1960 年 生まれ 天野浩 高輝度青色発光ダイオード

共通一次世代は何をなして遂げているだろうか。

1962年 生まれ 山中伸弥 iPS細胞の研究

1962 年生まれ 伊藤智義 天文学の多体問題専用計算機、初期のGRAPEのハードウェアの開発

1965 年生まれ まつもとゆきひろ プログラミング言語「Ruby」の開発者。


なぜ日本の無線技術は世界に遅れをとったのか?

よく言われていることだが、日本の携帯電話メーカーは、国内の携帯電話サービスの会社との関係の中で横並びの体質で新機種の投入をしていった。
そのなかで、国内の向けの開発は、官公庁への納入と似たような体質になっていったと言われる。
御用聞きが幅をきかせる状況になっていたそうだ、
そう、共通一次の国語の問題で「この問題の出題者は、これを正解と言わせたいのだな。」というのを読み取る訓練に似ていないか?
そこには、「正解」があって、それに自分たちが合わせていくという発想ではないのか?
そこには、自分たちが未来を創りだそうとする発想が存在しない。
ひとり、ひとりの技術者の中には、世界を相手に力強く勝負をしている(あるいはしていた)技術者も多かったのだろう。
しかし、全体としては事業をつぶしてしまう結果となった。

世間一般には、携帯電話メーカーの衰退は、ドコモなどの携帯電話サービス会社と携帯電話メーカーとの特殊な関係が理由だと思われている。

しかし、ものごとを突き詰めることのない発想、自分たちの外のどこかに「正解」があって、それを読み取ることで「100点」を達成できるという発想自体が、衰退の一因になっているという認識をしている人は少ない。

事業の立て直しにしても、「人員を削減して固定費を減らす」というどこか外からもってきた方法を「正解」と信じて行動している。
そのことで、事業を潰すことを早めている。


付記:
 共通一次世代という表現で、国公立大学を受験するための試験で、この世代を代表する表現として用いることに違和感を感じる人もいるだろう。また、事業をつぶしていくのにはさまざまな要因があり、ここまで単純化した議論をすることにも違和感があるだろう。

  • 1980年代に栄華を極めた電機メーカーの多くには、国公立大学を受験したことがある人が就職しているだろう。
  • 新規の技術の開発に関わった人たちや、会社の事業戦略に関わった人たちは、その世代の平均的な人であるというよりは、共通一次試験などを受けた人が多いと思う。
  • だから、そのような人々の考え方に影響する要因の一つとして共通一次試験をあげている。

 

追記:

あるべき理想を夢想するしかなかった世代と、理想を夢想することを忘れた世代

戦争を経験した世代・戦後の貧しい時代を経験した世代は、あるべき理想を夢想するしかなかった部分があったのだろうと推測する。
明日は今日よりもいいことがあるように夢見ることは、明日について考え行動することをすべての人に強いたのではないだろうか。

共通一次世代については、極端な貧困の時代の記憶もなく、与えられた状況の中での最善に満足することで生きてきたのではないだろうか。
与えられた状況の中での最善(ああ、なんて共通一次のマークシートの試験に似てないか)に満足していれば、あるべき理想など夢想する必要など毛頭ないのだ。

理想を夢想することがないから、そのビジネスはどうあらねばならぬのかを考えることがない。
今ある製品にほんのちょっとの改善を加えれば十分だと、勝手に可能性を打ち切ってしまう。
理想を夢想する人は、人の集団の中では変人と言っていいだろう。常識的な人達の中では、迷惑な人物としてうつることもありうるだろう。

電機各社は、リストラを繰り返す中で、そのような人物を排除してしまったのではなかろうか。
そのような中で、人の多様性が低下して、組織としてのもろいものになってしまったのではなかろうか。

生物種が消えるときは、その個体数ではなく、その生物種の遺伝的な多様性が失われることで消えると聞いている。遺伝的な多様性が失われた種は、たとえば、ジャガイモ飢饉 は、「ジャガイモは通常、前年の塊茎を植えるという無性生殖による栽培法を用いる。これを利用して、当時のヨーロッパでは収量の多い品種に偏った栽培が行われてゆき、遺伝的多様性がほとんど無かった。そのため、菌の感染に耐え得るジャガイモが無く、ヨーロッパでは菌の感染がそれまでにないほど広がった。」と書かれている。

既に、人の多様性がなく、あるべき理想も持たない世代は、「自分がなんとかなればいい」という程度の意識で、組織の未来を決めてしまう判断をしてしまう。すくなくとも私にはそう見えてしまう。

追記

類似の指摘を見つけた。

「たまたま運良く1970〜1980年代に入社したおかげで日本の高度経済成長の軌道に便乗し、現在、エレクトロニクス企業の経営層に登りつめた人たちが、やはり、『日本の技術は世界一』と公言して憚らないことにも、筆者は苛立ちをおぼえる。特にこれらの年代の人たちは強烈な成功体験を持つため、『技術では負けていない』という根拠のない過信を持っており、企業変革の妨げになっている。」
湯之上隆「日本型モノづくりの敗北」文春文庫 2013年

従順な人を後継者としようとする愚かさ

  • 従順な人その1:その職責に引き上げてくれた人に対して忠実に行動し続けるタイプ
    • 自分の頭で考え抜いて行動することがないので、未来への展望を創り出すことができない。
  • "従順な人"その2:権力を手にするまでは従順。権力を手にした途端に本性を発揮するタイプ
    • 権力を手にした時点で個人的な報復などのためにその権力を使ってしまう。
    • 未来への展望を創り出す使命が自分にはあるという可能性などこれっぽちも考えはしない。
  • 結論:
  • 後継者に従順さを求めてはならない。
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